三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > マンスリーコラム【2004年9月】 | ||||||||||||||||
母語の習得は自然に起こると考えられがちです。しかし、たとえ文法のコアな部分はそうであったとしても、私たちが日常使用している言語のかなりの部分は、意識的に学習したものであることを、イギリスのランカスターでの滞在を通して実感するようになりました。英語の母語話者の教育であれ、日本の英語教育であれ、自覚的な学習によって子どもたちは語彙数を飛躍的に拡大し、高度な内容を精緻な文章構造を介して理解し、表現できるようになるのではないでしょうか。 日本では「読み、書き、そろばん」ということが古くから言われてきました。イギリスでも全く同様に、“reading(読み)、writing(書き)、arithmetic(算術)”を初等教育の要とし、家庭教育や学校教育で意識的に学ばせてきました。小学校ではリテラシー教育(読み書き教育)のための教材が教室や廊下の壁に数多く掲示されています。いくつか例をご紹介しましょう。 レセプション(1年生のさらに下の学年で、5歳児が対象)のクラスでは、
と大書した紙が入り口にはってありました。奥には、その時期のリテラシー教育の目標が以下のように黒板に書かれてありました。
とありました。3匹の子豚の物語を題材にして読み書きを練習しているのです。奥の壁には、Numeracy(算数・数学の基礎力)というタイトルの下に、
と書かれ、きれいな切り紙で作られたフルーツがはられ、最後にキリンが、
と言っている大きな模造紙がはってありました。フルーツを題材に語彙や数の表し方を学習しているのです。 3年生の教室では、何枚もの模造紙に日常的な動作がいくつも描かれ、絵のそばには-ing形が書いてあり、-ing形の作り方のパターンが解説されていました。日本の中学生と同様に、イギリスの小学生も-ing形の作り方を意識的に学ぶというわけです。同じ部屋には、加減乗除に関係する多くの表現が、4枚の色紙に書いてはってありました。ご紹介しましょう。
このように、日本の中学校でも使えそうなものばかりが所狭しとはってあるので、英語教師の私などはワクワクしたほどです。イギリスの母語教育と日本の英語教育は、英語のリテラシーを向上させるという点でかなり共通したものがあるものだと、今回の滞在を通して実感しました。 立教大学 鳥飼慎一郎 ■バックナンバー |
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