三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > マンスリーコラム【2003年10月】 | ||||||||||||||||
日本人は英語を外国語として学んでいます。当たり前のことのようにも聞こえますが、インド、フィリピンなどでは公用語として、アメリカ、イギリス、カナダなどでは移住者や学生などが英語を第2言語として学んでいます。彼らにとって英語は母語の次に覚える言語で、教室の中だけではなく、実生活の中でも使います。教室で学んだことがらを学校の帰りに早速試してみることもできるのです。この点が日本人学習者の環境と大きく違うところです。 日本人にとっては外国語に触れるのは主に教室だけという不利な点があり、学んでいる外国語を教室で積極的に使うようにしないと、ほかでは使う機会があまりないということです。英語は生活言語ではないので、近所に英語を話す外国人の友達が住んでいる、といった特殊な環境にいない限り、英語は使わずに生活しています。言語は使わなくては上手になりませんから、使う機会を授業中に多く作ることが必要です。 外国語を効果的に上達させる方法には、言語学習ストラテジーを用いる、内容だけではなく言語形式にも意識するなどいくつかあり、中でも、外国語学習環境にいる人たちが気をつけなくてはいけないこともいくつかあります。例えば、聞いたり読んだりして理解できる「受容語彙」を増やすだけではなく、話したり書いたりするときに使うことができる「発表語彙」を積極的に増やすこと、英語のパラグラフや文章全体の構造に関する知識を得ること、文化や文法形式の違いから生じる言葉と社会の関連を意識して学んで相手の意図をくみ取る、などです。 語彙は多読で伸ばすことができると言われていますが、教室外で英語を使うことが少ない日本人学習者の場合には、新しい語彙を習ったら、すぐにそれを使わせ、ある程度の頻度をもって思い出させることが語彙を定着させるのに効果があるといわれています。例えば、読み物を読んだときにはクラス全体でretelling a story をしてみると、楽しく語彙を思い出させることができます。手順は、
このあと、読み物を改めて読み聞かせたり、最初からもう一度読み返したりすると、クラス全員で作った要約文の巧みさに感動するとともに、英語が不得意な生徒であっても単語を挙げたことによる参加意識と成就感を感じさせることができます。このように、学んだ単語を繰り返し使うように仕向けることを授業でも意識して行っていくと、受容語彙はしだいに発表語彙へと変化するといわれています。 こうして発表語彙が豊富になれば、自己表現もより的確にできるようになりますし、豊富な語彙を使ってメッセージを英語らしい発想で組み立て、メッセージを伝える相手によって言葉の形式を使い分けるような言語の社会性も学べば、英語が使える中学生が多く誕生することになるでしょう。 駿河台大学 佐野富士子 ■バックナンバー |
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