三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > マンスリーコラム【2003年7月】 | ||||||||||||||||
皆さんは、大中恩作曲の女声合唱組曲『愛の風船』をお聞きになったことがおありでしょうか。中村千栄子さんの作詞ですが、その中に「ことばってすてきなもの」という曲が入っています。 この歌の特に後半では、言葉は本当に素敵なもので、特に赤ん坊が初めて話す言葉とされる「マンマ」は実に感動的なものであること。そして、言葉は人と人とを結んでくれる素敵な存在で、世の中にはいろいろな言葉があって、言葉のお陰で生きていくことが明るく楽しいものになることが、軽やかに伸びやかに歌われています。筆者の大好きな合唱曲の一つです。 確かに、言葉の一番大切な機能は、誰かと誰かと結んでくれることでしょう。そして、日本人に生まれた日本の子ども達が、先ず身に付けるのは日本語(母語・母国語と言われるもの)です。これとは文字通り、「揺りかごから墓場まで」一生涯のお付き合いとなります。人間として一番初めに覚える言葉は「マンマ」かも知れませんが、先ずはしっかりと日本語を習得することが大切になるわけです。片言を話し始めた子ども達は、絵本などを通して、だんだん文字にも慣れ、小学校では、平仮名や片仮名そして漢字をきちんと読み書きできるようになっていきます。 たとえば小学校の「学習指導要領:国語」では、「国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる。」という目標のもと、聞き話し読み書く言語活動が示され、音声・文字・文法事項の学習の他、漢字は6年間で1006文字学習することとしています。 ところで、今小学校での英語活動が、「総合的な学習の時間」の国際理解分野に対応して実施されるようになっています。そこで、各教科に登場する片仮名語(いわゆる外来語)を調べてみますと、古い調査(1978年)ですが、高学年の教科書で約950語、そのうち720語が英語起源となっています。この傾向は、現在では、もっと高くなっているに違いありません。 試みに、5年生の国語の現行教科書の一つを覗いて見ますと、「インタビュー、テーマ、グループ、ランニングシューズ、テレビゲーム、プロ、ノート、メモ、パンフレット、リサイクル、キャベツ、コマーシャル、ナンバープレート」などが登場していますし、極端なものとしては、「リユース、マテリアルリサイクル、サーマルリサイクル」などが出ています。また、「和語・漢語・外来語」として、まとめて勉強する場面もあるようです。 筆者の考えでは、このように大量に登場している外来語の効果的な指導こそが大切で、特に英語起源の言葉では、原音に近い発音を一緒に練習したり、その言葉の背景にある人々の生活や文化について触れることで、十分な英語学習への入門となるものと思います。筆者自身、英語開眼の理由を遡ると、小学校6年生のときのユネスコの勉強に辿り着きます。担任の先生の真似をして、級友達と「ユナィテッド・ネィションズ・エデュケィショナル・サィアンティフィック・カルチュラル・オーガニゼィション」と大きな声で練習し、すらすら言えるようになったときの喜びを思い出します。小学生に対する外来語(片仮名語)の影響には大きなものがあり得るのです。 従って、小学校では、上のような外来語を活用しながら、『ニュークラウン』の見返しのように、世界各地の「こんにちは」「ありがとう」などの基本語彙を中心に、出来るだけ多くの言葉と文化に親しませるのが得策のような気がします。もちろん、 (1)様々な外国人への恐怖感や偏見をもたない などという利点があることは十分理解できますが、指導者の養成やカリキュラムの中味など、中学校との連携が不確実な中での小学校での英語活動には、慎重に対処する必要もありそうです。 次回は、実際に行われている小学校英語活動の例を紹介しながら、中学校との連携、中学校での外国語教育の在り方などを考えてみたいと思います。 北海道教育大学旭川校 森永 正治 ■バックナンバー |
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