三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > マンスリーコラム【2002年11月】 | ||||||||||||||||
前回は呼びかけ表現について日英比較の観点からみてみましたが、今回は「あいづち」の問題を取り上げたいと思います。私たち日本人にとってあいづちは非常に身近なものです。会話をしているときには、「えー」「へー」「ふーん」「そーですね」「なるほど」などといった表現を頻繁に使います。また、あいづちをうちながら、頭を上下させる「うなずき」の動作も行います。ときには電話の会話であっても、あいづちをうったりうなずいたりします。日本語の会話では、このようにたえず相手の言っていることに関心を寄せているという合図(キュー)を送らないと失礼だと思われる傾向があります。あいづちは、人間関係やコミュニケーションの潤滑油の働きをしているのです。 日本にやってくる英語を話す外国人は日本人同士の会話をみて、あいづちやうなずきの多さに驚くようです。では、英語にはあいづちはないのでしょうか。「あいづち」のことを英語でなんというのでしょうか。あいづちにピタリと当てはまる英語はありませんが、専門的には back-channel cuesやback-channel signalsなどということがあります。これは話し手に対する聞き手の応答や合図ということです。その意味では、英語にもあいづちはある、というべきでしょう。代表的な例としては‘Uh huh’ ‘Yeah’ ‘Sure’ ‘Right’ ‘I see’ ‘Really?’などがあげられます。問題は、私たち英語の学習者が英語のコミュニケーションの中でこのようなあいづちに相当する表現をいかに使いこなせることができるか、ということです。おもしろいことに(そして悲しいことに)、日本人はあいづちの使い方に慣れているはずなのに、英語になると適当な応答の表現が使えずに会話がギクシャクしてしまうことがよくあります。 日本人が英語で何気なくあいづちをうったつもりでいるときに大きなコミュニケーションの問題を引き起こしてしまうこともあります。こんなエピソードがあります。日本のビジネスマンが米国で商談をしているときに、会話をスムースに運ぶためのつもりで ‘Yeah’ や ‘Uh huh’を頻繁に使いました。相手はそれを「承諾」の合図だと思ってしまった、というのです。このケースでは後で裁判沙汰になったということです。 ここで、英語のあいづちが難しい(しかし重要だ)という例を1つあげておきましょう。‘Yes’はどのように発音しても ‘I agree.’(承諾しました)という意味になるわけではありません。以下の図(1)〜Dのように発音することによって、それぞれ意味が異なるのです。ポイントは音の高低とイントネーションです。それぞれの曲線で示されたように発音してみましょう。意味を意識して気持ちを込めて発音することが大切です。 ‘Yes’の発音の仕方と意味 (1) I agree.(そうですね/賛成です) 玉川大学 高橋貞雄 ■バックナンバー |
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