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現在のページ 三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > マンスリーコラム【2004年6月】

マンスリーコラム
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ことばの獲得・処理・学習からみた語彙指導(3) 語彙の定着を図るためのヒント

 覚えたはずの単語なのに、なかなか思い出せないということがあります。せっかく授業で導入した単語も与えっぱなしでは使えるようになりません。語彙の記憶を定着させるにはどのような工夫をすればよいのでしょうか。

(1) しっかり口頭で言えるようにする

 まずしっかり口頭で言えるようにしておくことが大切です。文字ばかりでなく音の記憶も役立ちます。単語を単独ではなく、教科書で学習した文の中で言えるようにしておくと、題材内容とあわせて記憶が促進されるでしょう。その際、ただ文字を見ながら音読するのではなく、後ろのフレーズから前に積み上げていく形で練習してみましょう。Backward-buildingという昔からある方法ですが、意外に知られていません。さあ、cold waterというフレーズから前に積み上げながら言ってみましょう。思い出しにくい最後のフレーズを一番多く言ったことになります。

In fact
,
the ocean
has many different types of water
,
for example
,
warm water and
cold water
.

 もうひとつは、もうご存じの、しっかり見て覚えたと思ったら顔をあげて(文字を見ないで)言ってみるRead & Look-upという方法でも練習してみましょう。

(2) 同じ単語に出会う回数を多くする

 繰り返しの回数、つまり同じ単語に出会う機会を多くすることも重要です。しかし、単に発音を6回、7回とくり返すだけではあまり効果はありません。くり返すたびに、たとえば前回のコラム(第2回のコラム)で述べたように、なにか新しい情報を付加すると効果的です。

(3) 浅い処理と深い処理

 たとえば、次のようなタスクを考えてみましょう。

 「もう1度読み返して、ocean, whale(s)という語が何回登場したか数えてみよう。」
これは誰もが簡単にできそうです。処理のレベルとしては、「浅い」処理の活動と言えます。今度は、もう少し「考える」ことが必要な活動です。

 「モンゴル(Mongolia)の特徴を表す単語を本文の中から抜き出してみよう。」
これは、意味を考えながら読み返す必要があり、より「深い」処理を促す活動と言えます。このように、より深い処理を必要とするタスクも設定すること、そして、浅い処理と深い処理を促すタスクや活動をいろいろ組み合わせてみることが大切です。また、多読(extensive reading)なども、同じ単語を出会う機会を増やし、深い処理を促す機会となります。

 その他、学習者自身の立場に置き換えたり、自分の体験に関連づけることも記憶の定着には効果的であることが分かっています。It is important for us to think about global warming.という一見自分とはかけ離れたような文でも、for meに置き換えて文を作ってみるとよいでしょう。

 さて、3回にわたる連載も今回が最後となりました。この連載は、門田・池村・中西・野呂・島本・横川(2003)『英語のメンタルレキシコン―語彙の獲得・処理・学習』(松柏社)を参考にしました。やや専門家向きですが、関心のある方はぜひあわせてお読み下さい。

神戸大学 横川博一

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