三省堂 英語ホーム > 英語教育コラム > マンスリーコラム【2003年5月】 | ||||||||||||||||
前回のこのコラムで、英語の良い読み手に育てたいと思ったら、ひとつひとつの単語の認識速度を速くすることが重要であること、また、そのためのひとつのプロセスとして、つづりと音の連関に目を向けさせ、単語の音声化をスムーズにさせることが肝要であることを述べました。今回は、そのような文脈で、「音読」の意義をもう一度考えてみたいと思います。 音読の目的は理解に関わるものだけでなく、その目的によって以下の3つに分類されます。 (1) つづりと音声を結びつける。 私は、これら3つのタイプの音読はどれもそれぞれに意義があり、どれも実践すべきだと思っています。 まず、(1)が前回のコラムでも紹介したつづりと音の連関を強化するための音読です。このタイプの音読は、文字と音の連関を意識して行うもので、内容理解の前に行うこともできます。こうした音読を行うときには、あまり速いスピードでの範読は避け、英語のリズムを損なわないぎりぎりのゆっくりとしたスピードで行う方が、文字と音のつながりの確認もしやすいですし、生徒の負担も少なくてすみます。また、本文の理解の助けになるように、意味の切れ目で切りながら、こま切れで読むのも良いと思います。たとえば、New Crown3のLesson 6, I Have a Dream では関係代名詞を含んだ次のような文がでてきます。 He was a great leader / who worked for the rights /
of African-Americans. 上記スラッシュのところで切って音読し、本文理解の際にも、なるべく文章の前のほうから訳していき、直読直解を促すようにします。関係代名詞の制限用法だからといって、気にすることはないと思います。 本文の内容理解が終わって、最後に音読するときには、内容の理解がもっと深まるように最初の音読よりもリズムやイントネーションに気を配り、幾分スピードを増した、より自然に近い読み方をすれば良いと思います。これが上記(2)の書かれている内容を理解するための音読だといえます。このときも声に出して読んだ順に、つまり文章の前の部分から意味を確認していくように指導します。またいうまでもなく、教材が詩や物語のような朗読に適した教材であったり、会話文であったりしたときは、(3)の「適切かつ効果的に音声表現する」音読まで指導することが理想です。声の大きさやイントネーション、間の取り方など、感情表現を伴う演劇的な要素を含んできます。このタイプの音読は、読みというよりは、英語を話す技術に大いに関わってくると思います。 いずれにせよ、音読といえば、(2)や(3)のタイプばかりが取り沙汰されてきましたが、(1)のタイプの有効性にも目を向けてみたいものです。例には中学校3年生のものを挙げましたが、こうした素読に近い音読は、中学生でも低学年ほど有効ですし、また必要とされているものだと思うのです。 福岡教育大学 森 千鶴 ■バックナンバー |
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