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三つの訳を比べて読もう『故郷』

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中学校国語

森田 美季 (練馬区立貫井中学校)

2024年02月28日

1. この授業について

 魯迅『故郷』では、主人公の「私」が幼馴染の「閏土」と再会する場面が物語のターニングポイントとなっている。竹内好訳の教科書本文と、それ以外の翻訳者(増田渉、井上紅梅)によるこの場面の本文を提示し、三つを比べて読む活動を展開する。これにより、生徒たちに、「物語文を読むうえで、文章に書かれている言動に着目することがいかに重要か」ということを実感させることを目指した。

 

2. 評価

【知識・技能】

翻訳本の面白さに気づくとともに、自分の考えを広げることに役立つことに気づく。(⑶オ)

 

【思考・判断・表現】

三つの訳を比べて読むことを通して、文章の展開や表現について根拠を明確にして考えている。(Cウ)

 

【主体的に学習に取り組む態度】

根拠を明確にして、登場人物の心情について自分の考えをまとめようとしている。

 

3. 授業の流れ(全7時間/本時は第6時)

①本文の範読を聞き、内容理解用プリント(以下の写真)を使用し、私の心情の変化を読み取る。(第1・2時)

 

 

②本文の内容を「現在」と「過去」に分ける。(第3・4時)

 ❶「過去」の部分を読み、私と閏土の人物像、関係性をまとめる。

 ❷「現在」の部分を読み、私と閏土の人物像、関係性をまとめる。

 ❸まとめた❶❷を比べ、二人の人物像、関係性はどのように変わったのか、なぜそうなってしまったのかを、本文を根拠にして考える。

 

 

③閏土に「だんな様!……」と言われる再会の場面について、❶「私はどのような思いだったと考えるか。」、❷「どうしてそう考えたのか。」を4人班で話し合う。(第5時)

 

 

④閏土との再会の場面について、三つの翻訳を読み比べ、「私」の心情を表す描写として的確なものについて考える。(第6時・本時)

・三つの翻訳(竹内訳、増田訳、井上訳)を読み比べ、「私」の心情がより伝わってくるものを一つ選ぶ。前時までの二人の関係性や本文をもとに、根拠も記入する。

・4人班で意見を共有した後、全体で意見を交流する。

 

 

⑤物語最後に出てくる「道」に着目し、「『私』はどんな道ができあがることを期待しているのか。」を考える。(第7時)

 

 

5.ICT活用のヒント

 Googleフォームを活用し、どの翻訳が「私」の心情を表すのに的確だと考えたかのアンケートをとり、その傾向を知ることもできた。あるいは、Googleジャムボードに、それぞれの翻訳の違いを付箋で貼らせ、その違いについて分析させることもできた。今回は、口頭での意見交流を中心に行ったため、これらの活動は行っていないが、次回は活用してみたい。

 

【参考文献】

・「故郷」魯迅 増田渉訳 平成三十年六月二十五日改版(昭和三十六年四月五日初版) 角川文庫

・「故郷」魯迅 井上紅梅訳 底本「魯迅全集」昭和七年十一月十八日発行 改造社

 

 

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プロフィール

森田 美季    もりた・みき (練馬区立貫井中学校国語科主任教諭)

生徒一人ひとりの「批判的な読み」の形成に主眼をおいた授業実践に取り組んでいる。

また、「この教材でどのような学びが得られるのか」ということを日々模索し、授業研究を行っている。

 

〈練馬区立貫井中学校〉
https://www.nerima-tky.ed.jp/nukui-j/

旧豊島園遊園地の近く、閑静な住宅街にあり部活動が盛ん。特に柔道部と吹奏楽部は有名。
卒業生にMr.Childrenの桜井和寿さんなど。

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