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「作品の魅力を伝えよう」
―文学作品から見るサシバと宮古島の人々―
~物語を「読み」の観点を意識しながら読み深め、作品の魅力を伝える~

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中学校国語

粟國 哲郎 (琉球大学教育学部附属中学校)

2023年12月18日

単元で育成したい資質・能力

・理解したり、表現したりするために必要な語句の量を増し、語感を磨き語彙を豊かにすることができる。〔知識及び技能〕(1)イ

・文章を批判的に読みながら、文章に表れているものの見方や考え方について考えることができる〔思考力、判断力、表現力等〕C読むこと(1)イ

・文章を読んで考えを広げたり深めたりして、人間、社会、自然などについて自分の意見をもつこと。〔思考力、判断力、表現力等〕C読むこと(1)エ

・学習の見通しをもって、粘り強く読み深め、これまでの学習を生かしながら課題を解決しようとしている。「学びに向かう力,人間性等」

 

本実践の目的

 本学年は、「文学作品における『自分なりの読み』に自信がない」ということが継続的な課題である。

 

 これまでに「形」で小説と古文の比較読みをし、構成の違いや描写の工夫について確認したり、「百科事典少女」で人物相関図の作成や作品の魅力を語ったりと文学作品における読み方について学習してきた。初発の感想に出てきた疑問のいくつかを取り上げ、それをもとに授業における問いを作成し、自分たちの疑問を追求することで作品と向き合ってきた。パフォーマンス課題に向けて、授業では取り上げられなかった疑問について考えながら読むことで、文学作品の読みの観点を意識した読み方にも挑戦してきた。しかし、いまだに自分の読みには自信がなく、初発の感想交流や人物相関図作成においても、しっかりと自分の読みを表現し、伝えることに差が見られる。また、作品に出てくる言葉について意味をきちんと把握できていないという状況もあったため、本文に出てくる言葉をしっかりと確認する必要性も感じられる。

 

 本教材の舞台は、宮古島を思わせる南の島。昔、訪れる人が少ない島人にとって、寒露の時期に飛来するサシバは、暮らしの糧になると同時にあこがれともなる客人であったと考えられる。そんなサシバと島人との交流が、少年タルタとサシバのピルバとの出会いから共に空に旅立つまでのプロセス、そしてそれを見守るムサじいの姿に象徴的に描き出されている。ファンタジー世界の出現の際の風のオノマトペやサシバを迎える際に島人が歌い舞う民謡など表現も工夫され、民話的要素とファンタジー的要素が混じり合った不思議な作品となっている。読み手は多くの問い(不思議)を抱くであろう。本教材は、物語の状況や背景、人物相関図の変化や物語の転換点、象徴となるものなど生徒の初発の感想をもとに自分で読みの観点を選択し、全体での共通の読みと個人での読みを合わせながら作品を読み深めるには適している教材である。本単元を通して、自分なりの物語の読み方を獲得し、考えを広げたり深めたりして作品の魅力を自分の言葉で表現できる力の獲得を目的としている。

 

 そこで、パフォーマンス課題では、宮古島総合博物館で実際に行われていた企画展「あなたの知らないサシバの世界」の担当者へ連絡をとり、情報と資料の提供していただき、以下を設定した。

【パフォーマンス課題】

 今回、琉大附属中3年生が「サシバ舞う空」を学習するということで、宮古島博物館から次年度行われる第40回企画展「あなたのしらないサシバの世界Ⅱ」のパンフレットの1ページとして、「文学作品から見るサシバと宮古島の人々」というテーマで、1ページ(上部・下部)に絵本「サシバ舞う空」の魅力を伝えてほしいという依頼がきています。上部には作品の魅力を文章で表現し、下部には自分で選んだ観点(テーマ)で作品の魅力を伝えるために自由に文章、イラスト、図表などを活用しましょう。来年の宮古島博物館の企画展の成功は、君たちにかかっています。

実践内容

 単元指導計画は、以下の通りである。

学習活動
1 通読し、初発の感想、疑問(問い)を書き、モデルとなった宮古島旧平良市のサシバの古謡とサシバの鳴き声の音源を聴く。
2 グループで言葉、宮古島、サシバなどすぐに解決できそうな疑問(問い)についてグループでChromebookにまとめる。
3 各学級で挙がった感想、疑問(問い)を共有する。文学作品を読む観点を確認した上で、本文を再読し感想まとめ、人物相関図をまとめる。

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生徒から出た疑問(問い)をカテゴリー分けし、小見出しをつけて、生徒からの疑問(問い)をもとにした内容読解、人物像に迫り、再び人物相関図まとめる。
7 パフォーマンス課題の取り組み。作品の魅力とパンフレットをまとめる。
8 パフォーマンス課題交流、自己評価。

 

 第1時は、生徒がグループ読みで本文を通読し、初発の感想及び疑問(問い)を書いた。本来ならば、初めて読む教材は、最初の出会いを大切にしたいところだが、あえてグループ読みをさせることで方言とそのリズムにも触れさせたいと考え、グループ読みを行った。本教材は、宮古島を舞台にした絵本(民話)がもととなっているため、生徒にとってわからない言葉や歴史的背景、方言などが多く、知識的な疑問や感想が多く見られた。その中には、はじめから物語の本質に迫るような疑問(問い)もいくつか出ていた。感想と疑問(問い)を共有した後、グループ読みで生徒がどのようなイントネーションがわからず苦戦していたサシバの鳴き声と琉球大学の学生の祖父の協力もと録音させていただいたサシバの古謡の音源を聞かせた。

 

 

 第2時では、生徒の初発の感想から言葉(方言)や歴史的背景及びサシバに対する情報が必要だと想定し、第1時の疑問(問い)をもとに調べて解決できるものをまとめる時間を設定した。Chromebookのクラスルームにて、共有スライドを作成し、グループごとにまとめていつでも学級全体で情報を共有できるようした。宮古島総合博物館からのパンフレットも参考にまとめることができていた。

 

 

 第3時では、前時でまとめた情報により言葉や背景についてある程度理解できているため、「文学作品を読む観点」を確認した上で、朗読CDによる通読を行い、再び感想と疑問(問い)を書き、人物相関図をまとめた。記述されている登場人物だけでなく、「島の人々」や「タルタは何者?」など工夫して記述しているもの、違った視点や捉え方の違う人物相関図をいくつかまとめ、8名分を両面1枚シートとして全体に配ることで書き方の工夫や読みの広がりにもつながっているようであった。

 

 第4時は、各学級の初発の感想にあった疑問点(問い)を一覧にまとめ、「学年での疑問、考えたいこと」として1枚ペーパーにまとめ、共有した。その一覧を見ながら、「サシバについて」「込められた意味」「タルタとはなにものか」「タルタとピルバの関係」「ムサじいとタルタの関係」「表現の意味」などのカテゴリー分け、小見出し付けをすることで問いの焦点化ができた。また、メモ欄には「気になる疑問点」といことで自分なりに解決したい疑問(問い)を書き出す姿もあった。

 

 第5~6時は、前時で疑問(問い)に小見出し付けをしたため、それをもとに内容理解のための問いを挙げて読み取りを行った。第4時の生徒のワークシートにもあるように教師が取り上げて考えさせたい本質的な問いを生徒自身はカテゴリー分けをするなかで自ら挙げ、問いごとに、ペアやグループで共有し、自分で読み取ったこと、考えたことを整理させた。「タルタの正体は?」について、「タカ説」「人間説」「タカと人間のハーフ説」などさまざまな考えが出てきた。それらは、教材の叙述をもとに生徒が読み取ったものであり、グループや全体交流をするなかで納得のいくまで話し合ったり、どこの叙述からそういえるのかと説明したりする様子が各グループで見られた。

 

 また、生徒の読みがどのくらい深まったのかを確認するために改めて2回目の人物相関図の作成を行った。内容理解の時間には毎時間、全体交流を行っていたため、1回目の人物相関図より2回目の人物相関図の方がより詳しい関係性の記述や読みの変化を捉えることができた。

 第7時は、これまでの学習内容を活用しながら「サシバ舞う空」の魅力についてまとめ、自分なりの工夫を生かしてパンフレットの資料作成を行った。

 

 

 登場人物のタルタの正体をどう捉えるかによって物語の解釈が変わってくるというおもしろさについて記述している生徒や物語の語り手の視点について、作品の構成や表現について、教材にもある挿絵について記述する生徒も見られた。パンフレットの下部は、あらすじやキーワード、絵本の挿絵を参考にそれぞれ工夫された作品となっていた。

 

 第8~9時では、完成したパフォーマンス課題を交流し、自己評価、全体での振り返りを行い、単元のまとめとした。

 

実践の考察

① 生徒の学習の評価

 生徒Sは、1回目の人物相関図では「タルタは何者?」という記述を中心に記述し、疑問(問い)をまとめた人物相関図となっていた。また、個人の読みとしてワークシートに「はじめ」と「おわり」という欄を設け「はじめ」で「サシバを見てみたい。サシバを自分の手でつかまえたい。」というタルタの願い、「おわり」に「ノルマ達成」とタルタの目的をまとめた工夫した記述をしていた。「関係はあるのか?」や「もしかしたら祖父と孫」など疑問を記述することで自身の捉えを整理する様子が伺える。

 

 内容理解の時間には、全体の疑問(問い)をはじめとし、「タルタは、翼をはばたいてみせました」という叙述から「じゃあ、鳥なのか?それとも、うでを翼に見たてているのか?」という本文の叙述をもとにした読み取りをしていた。「一方で」という記述をしながら、自分の読みの対となる考えも整理していた。このような自己内対話をワークシートに記述することが思考の足跡を残す上では重要であると考える。

 

 まとめたワークシートは、毎時間グループや全体交流を通して共有したため、2回目の人物相関図では、タルタの正体についていくつかの説があったうちの一つを記述していた。また、1回目ではわからなかったサシバとムサジイの関係についても「関係はあるのか?」から「ムサじいの後輩」「タルタとつなげてくれたことに感謝している」「正体はタカ」など読みの深まりを捉えることができた。

 

 内容理解の時間のワークシートには、タルタとピルバの関係の変化についても多く記述されているが枠の関係上すべてを記述しきれなかったのかと思われる。毎時間ごとに再読し自分なりの読みを深めていこうとする様子が伺えた。

 

 生徒Jは、第3時の1回目の人物相関図ではタルタについて「死んでる」という読みをしていた。

 

 しかし、再読したり、グループ交流したりするうちに捉えが変わってきたようである。きっかけは、「タルタの正体は?」という問いをグループや学級全体で共有したことであった。「~説」と様々な説を夢中で話すグループのメンバーに感化されて共有後、ワークシートをまとめる時間を設けると生徒Jはチャイムが鳴っても夢中で書き続けていた。日頃、あまり気持ちの乗らないときにはウトウトしたり落書きをしたりする生徒Jだが、他の人の考えを聞いて何かひらめいた様子であった。

 

 第4時のタルタの正体について考えたワークシートには、「他者からはただのサシバにしか見えない」「タルタは2人いる。タルタは物語的には1人」「最後は自分がサシバといことを知る」という記述が見られた。生徒Jによると、「ムサじいはサシバであるタルタを人のように接していくうちにタルタという少年に人に見えている。しかし、他人からただのサシバにしか見えない。そのため、他の子どもたちが野原でサシバの飛ばし合いしていても離れた所にピルバといた。ピルバと過ごす時間が増えていくうちに、自分がサシバであることを知り、仲間たちと飛んでいった。」というような内容の説明をしてくれた。生徒Jは、交流をきっかけに自分なりに何度も何度も本文を読み返し、叙述をもとに読み深めていたようである。

 

②単元(授業)デザインの振り返り

 本実践は、自分なりの物語の読み方を獲得し、考えを広げたり深めたりして作品の魅力を自分の言葉で表現できる力の獲得を目的として行った。生徒Sのように初発の感想や1回目の人物相関図での疑問の解決に向けて、自分なりに何度も繰り返し教科書を読む生徒の姿が多く見られた。生徒によっては「再読の大切さに気づいた」という記述があったり、本文に傍線を引いたり、囲んだりと自分なりに書き込みを入れる生徒も見られた。比較的、教科書への書き込みが多い生徒の方が、丁寧な読みができていた。小学校に比べて、教科書への書き込みが少ない中学校は、生徒が教科書へ戻る回数が少ないのも叙述にもとづいて読めない原因となっているのではと考えさせられた。また、地域教材を活用する際に、その地域独得の言語や歴史的背景を押さえる必要があり、調べて共有する時間の確保は生徒の内容理解への手助けとなった。2回の人物相関図の記述では、生徒の読みの深まりを知ることができ、有効的であったが、生徒が同じようなことを記述する時間や手間を考慮すると、人物相関図においては、常に日付を記録しつつ、毎時間ごとに書き加えるという方法が最適であろう。内容理解の際、グループと全体共有を毎時間ごとにおこなうことにより、登場人物同士の関係を他者の読みとの比較をすることで自らの読みを広げ、深め、確かなものにすることとなったと考えられる。

 

 今回は、生徒の初発の感想、疑問(問い)から授業をつくることを前提とした単元構成をしたため、想定していた時数を大幅に過ぎた授業展開となってしまった。また、生徒によっては内容理解におけるグループ学習でも内容について理解できない生徒もおり、もう少し丁寧な教材への出会わせ方や言語や歴史的背景においての解釈をしっかりとするべきであったかという反省が残る。

 

実践の成果

(1) 課題の工夫と学びを調整していく単元デザイン

 実践を通して、生徒が課題のゴールに向けて、学びに向かおうとする姿を確かに捉えることができた。読みを深めるために教科書を抱えながら考える姿や休み時間になってもタルタの正体について話をする姿、教科書への線引きや囲いなど書き込みによって学びの補助を自ら工夫する姿も見られ、課題解決に向けて粘り強く取り組み、自己調整する姿が見られた。

 

 本県が目指す「問い」が生まれる授業及び「学力向上推進5か年プラン・プロジェクトⅡ」においても「自立した学習者の育成」を重点事項とし、生徒の「問い」を大切にした授業づくりが推奨されている。今年度の実践は、生徒の「問い」をスタートとし、単元計画を考え、授業実践を行った。時数の超過はあったが、生徒の「問い」が国語科の授業を行う上で、最も重要なものであると改めて実感したよい機会となった。

 

(2) OPPシートの工夫

 これまで様々なOPPシートの改良を施してきた。これまでに実践してきたOPPシートと今回使用したものを紹介する。

 まず、研究1~2年次にかけてOPPシートの第1時の枠と最終時の枠に同じ問い(単元を通した問い)を設けることにより、生徒の思考の深まりの変容を見とることを目的として設定した。また、1時間ごとの枠には「今日の授業で何がわかりましたか?大切なことを書いてください。」とすることで生徒がこの時間で理解した内容をみとることができた。他にも「本単元で身につけたい資質・能力」を左部に印字することにより、生徒は単元において身につけるべき能力について理解することができ、その資質能力の獲得に向けて学ぶ姿勢が見られた。

 

 研究3年次には、単元のはじめとおわりについて、下の空欄を設け記述させ、各時間には本時の目標に応じた振り返りを記述できるようにした。そのおかげで、目標に応じた自らの理解度やわからなかった所の記述は確認できたが、OPPシートとワークシートの記述内容に差異が見られることが多くなった。つまり、OPPシートへの記述内容がテンプレート化してしまっている状態になっていた。そこで、毎年教科開きでも確認しているが、改めてOPPシートは成績には関係がないことと自らの学びの足跡を確認しながらいまの自分を把握することが目的だと再確認を行った。そして、3学年の実践から振り返り項目を設けてみることにした。振り返り項目により、教師が指定した時間に見取りたい生徒の学びの様子をみとることはできた。

 

 しかし、それ以外にも生徒の学びのなかにある「学びに向かう力」は、OPPシートだけではきちんと見とれていないのではないかと思われる。やはり、日々のワークシートや生徒の様子からみとる必要があると再認識することができた。また、作られた枠組みや設定された授業展開(学びの順序)は、果たして生徒が主体的に学んでいるのかという疑問も生じてきた。

 

 現在のOPPシートの良さを活用しつつも、今後のOPPシートのあり方についても検討が必要である。

 

次年度への展望

 今回の実践では、本県の取り組みとして推奨されている生徒の「問い」を大切にした授業づくりをもとに単元デザインを考えた。小学校と違って、授業時数の制限や融通の利かない時間割の状況ながら生徒の学びの流れを阻害しないように工夫しながら授業を行ってきたつもりである。これからの国語の授業において、生徒と共に作り上げる授業が必須となってくるであろう。そのためにも教師の授業への支援(ファシリテーション)の仕方も研究していく必要があると感じさせれらた。日々の授業改善とOPPシートの工夫により生徒の自走する学びを確保することができるのではないかと考えている。

 

〈 引用文献・参考文献 〉

(1) 文部科学省「中学校学習指導要領 解説 国語編」平成29年7月

(2) 沖縄県教育委員会「学力向上推進 5か年プラン・プロジェクトⅡ~学びの質を高める授業改善・学校改善~」令和2年3月

(3)西岡加名恵『アクティブ・ラーニングをどう充実させるか 資質・能力を育てるパフォーマンス評価』明治図書(2016)

(4)堀哲夫『一枚ポートフォリオ評価OPPA』東洋館出版社(2013)

(5) 櫻井茂男『学びの「エンゲージメント」-主体的に学習に取り組む態度の評価と育て方-』図書文化社(2020)

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プロフィール

粟國 哲郎    あぐに・てつろう (琉球大学教育学部附属中学校)

平成31年度より現任校に勤務。本年度(令和5年度)は、2学年担任。
「学びに向かう力をはぐくむ」という全体テーマのもと、教科では「『言葉による見方・考え方』を働かせて学びを深める生徒の育成」を研究している。
日々の授業で、生徒一人一人の学びのみとりを大切にした指導を行っている。

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