三省堂のWebコラム

奥住桂のTips for Teaching English 2.0

本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。

No.22 採点者代理制度

奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員

2026年09月30日

書くスピードの差が大きい

駆け出しの頃、一番悩んでいたのが書くことの指導でした。とにかく習熟度の差が出てしまうと感じていました。長めの文章を書くときだけでなく、文法定着のためのプリントなどをやらせていても、単純に書くスピードの差もあって、ものすごく時間差が出てしまう。早く終わった子はヒマを持てあましてしまうし、全然わからない子はいくら時間を与えても終わらない。

 

そしてやっかいなのは答え合わせ。これが一番大事なんだろうけど、限られた授業時間の中であまりゆっくりもやっていられない。生徒の出番を増やそうと黒板に書かせたりすると、余計に時間がかかってしまう。

 

そんな悩みを解決する方法はないだろうかと思案し、導入したのが「採点者代理制度」です。「小さな先生」みたいな名前で、いろんな先生が実践されているかなとは思いますが、今回は私なりのやり方をご紹介します。

活動の方法

①まずは教師が採点

基本的に私の授業では、プリントをやる場合はグループを作り、教え合いを認めていましたが、「早く終わった子はまわりに教えてあげてね」と言っても、やらない子はやらないものです。

 

そこで、プリントが全部終わった生徒は、まず教師に採点してもらいに来ることにします。教師は、合っているところには○を、間違ったところには下線などを引いてヒントを与えます(あるいは、何も印をつけない、というときもあります)。

 

書く作業でいつも思っていたのは、「やり直す時間」の不足。なぜ間違ったのかを考えてもう一度やり直すのはすごく勉強になるのだけど、一斉に答え合わせをしてしまうと、答えを写して終わりになってしまう。そんな意味でも、この制度は個人指導を可能にするいい方法だと思います。

 

②採点者代理も一緒に採点

さて、何度もやり直して全問正解になった生徒は、「採点者代理」に任命されます。教師からもらった「任命証」を首から提げて、「机間支援」にまわります。プリントが終わった生徒は、教師か「採点者代理」のどちらかに採点してもらいに行きます。これで教師の採点の負担を軽減することができます。

活動をする上でのポイント

「任命証」にはNo.1〜No.10まで番号が入っており、一番早く採点者代理になった生徒はNo.1をゲットできます。裏面には名前を書く欄があって、他のクラスのNo.1の生徒の名前も書いてあるので、闘争心に(勝手に)火がつきます。採点した友だちの数なんかもメモさせておくのもよいでしょう。

 

「採点者代理」の質を維持する意味でも、最初の採点はかなり辛めにチェックします。また、あとで他の生徒にも解説できるように、「うん、ちゃんとstudiesになってるね」などのように、ポイントをつぶやきながら採点してあげるとよいでしょう。人に教えることで、得意な生徒たちの自尊心をくすぐることができるだけでなく、彼らの「学び」が深まることも期待できます。

 

生徒たちは、教師より「採点者代理」に採点してもらいたがりますので、手が空いた教師は、まだプリントが終わっていない生徒への支援に回ることができます。これが、この制度の肝かもしれません。早く終わった生徒にやりがいのある仕事を与えつつ、まだ終わっていない生徒を支援する仕組みを、いつも教室の中に作っておきたいものですね。

ブログ元ネタ:『採点者代理制度』(2006年6月13日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20060613/p1

プロフィール

奥住 桂    おくずみ・けい
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員

・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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