本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。
奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員
2026年06月17日
「たほいや」というゲームをご存じですか?
「たほいや」は、もともとFictionaryとかDictionaryと呼ばれる思考ゲームで、日本では1990年代にフジテレビの深夜番組で、「たほいや」という名前で繰り広げられていました。当時高校生だった私はこれに夢中で、自分でもやってみたくて、放課後友達を誘って結構遊んでいました。
Dictionaryという英名からわかる通り、これは辞書を使ったゲームです。簡単に言えば、親がお題として挙げられた言葉の意味を子が推測して(いやむしろそれらしくでっち上げて)、集まった定義文の中から辞書に載っている本物の定義文を当てる、というルールです。ただ、このゲームの面白さは答えを当てるよりも、いかにそれらしい定義文を書いて他の参加者を騙すかというところにあります。
私は現在大学でライティングの授業を担当していて、自分の架空のWikipediaを英語で執筆させる活動なども行っています。descriptiveな書き方の練習になると思い、今回授業で取り入れてみました。以下は大学での実践ですが、仕組み自体が面白いので、中高の教室での指導の参考になれば嬉しいです。
遊び方
まずは基準になる辞書を設定する必要があります。TVシリーズの日本語版「たほいや」では、『広辞苑』(岩波書店)が基準になっていました。定義を1つに確定する意味で、何でもいいので1つ選択する必要があります。
いろいろ試してみて、現在の私の授業では、私のiPadに入っている物書堂の『コウビルド初級英英辞典(第4版)』を使っています。この辞書は英語学校に通う英語を母国語としない小学生(3年生以上)のために編集されていて、平易な(でもとても英語らしい自然な)語彙や表現で書かれているのが特徴です。例えば、penという語であれば、”a long thin object that you use for writing with ink”といった感じです。
5人グループの中の1人が親となってお題を指定します。例えば”detective”としましょう。
子がそれぞれひねり出した英文を集めて、それに実際の辞書の定義を混ぜて、ランダムに読み上げます。
1.the occupation of searching for something or someone
2.a private job that uncovers the truth of a complicated incident, especially a murder case
3.a person who works to solve clients’ problems
4.someone whose job is to discover what has happened in a crime, and to find the people who did the crime
5.a person who is hired to investigate crimes or gather information that other people cannot easily find
さて、『コウビルド初級英英辞典』の定義はどれだかわかりますか?(答えは一番下に)
“detective”とは何かを考えた時にそれを「人」と考える人もいれば「職業」と考える人もいて、こういう違いも面白いなぁと感じさせてくれます。
それぞれどれが辞書の定義かを発表して、答え合わせ、という流れになりますが、答え合わせの時の学生たちを見ていると、正答を当てた喜びもさることながら、誰かが自分の書いた英文を辞書だと思って選択してくれたことに喜びを感じるようです。日本語でもそうなので、すごくわかります。
最初はぎこちない英文を書いてしまうので、どれが辞書の定義かすぐにわかってしまいますが、何回もやっていると、みんな辞書の書きぶりを学んで「それっぽく」書けるようになります。その過程が見ていて面白いです。
注意点・アレンジ案
学生の書く英文にはエラーが含まれることもあるので(エラーがあるとすぐに正答でないとばれてしまうので)、私の授業ではクラスによってはWeb上の各種添削ツールでチェックさせることもあります。
また、ゲームに慣れるまでは、私が代表でお題を出して、全グループがそのお題でやってみる、といった運用をすることもあります。またお題は、最初は名詞が無難ですが、学習者の習熟度によっては様々な品詞を含めていくとレベルが上がって楽しいです。
本来の「たほいや」では、母語でも聞いたことがない語をお題にすることが一般的です。例えばゲーム名である「たほいや」とか「ししし」なんて言葉は聞いたことがない人がほとんどだと思うので、その意味を想像する(当てる)ところが面白いのですが、英語の授業でやる場合は英語での「書きぶり」のほうが大事だと思うので、みんなが知っている語でやるのが基本かなと思います。ただし、学習者のレベルによっては、あえて誰も知らなそうな語でやってみるのも面白いと思います。
辞書そっくりの定義を英語(しかも句)で書く、というのは、さすがに中高の教室では難しいかもしれません。でも、「このポスターのここに書いてある英文」とか「博物館のこの展示の説明文」とか「この写真のキャプション」とか、辞書よりももっとくだけた表記をお題にしてみれば、中高生の英語力でも取り組める可能性があると思うので、よかったらお試しいただければと思います。(フィードバックお待ちしています)
ブログ元ネタ:『英語作文の授業で懐かしの「たほいや」大会をやってみたらとても楽しかった件』(2021年5月24日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/2021/05/24/233746
『「たほいや」でライティング?』(2011年5月21日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20110521/p1
※”detective”の『コウビルド初級英英辞典』での定義は、4が正解です。
奥住 桂 おくずみ・けい
・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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