三省堂のWebコラム

奥住桂のTips for Teaching English 2.0

本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。

No.15 ビデオ通話で現在進行形の導入

奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員

2026年05月07日

はじめに

最初におことわりしておくと、こちらの実践は2019年、まだGIGAスクール構想による生徒用デジタル端末どころか、当時勤務していた自治体では教師用の端末も配布されていなかった頃のものです。校内のWi-Fiも整備されておらず、教員の自前の機器で(持ち出しで)やっていた残念な記録でもあります。最近の教室を見ると隔世の感がありますが、当時の苦労を忍びながら読んでいただけると幸いです。

 

今回は導入のお話。私自身の実践を振り返ってみると、指導経験を積むごとに、新出文法事項の導入はシンプルにポイントを絞ってやるようになりました。伝える内容も、昔は語形変化や構造など「形式」に気づいてもらうことに重きを置いていましたが、後年はその文法がどんなふうに使われるかという「機能」を強調するようになりました。

 

そんな「機能」を感じてもらうために、中学1年生の現在進行形の導入で、今はなきビデオ通話アプリSkype(スカイプ)を使いました。

ALTはどこにいった?

授業冒頭の英語の歌が終わると、さっきまで教室にいたはずのALTがいません。そこで、テレビにつないだiPadのSkypeでALTにビデオ通話してみます。電話に出たALTはくつろいでいる雰囲気。

JTE: Where are you?
ALT: I’m in the teachers’ room.
JTE: Ha? What are you doing there? We are studying English NOW!
ALT: I’m drinking coffee!

この会話で生徒は大騒ぎです。とにかく教室に戻ってこい、という指示を出したあと、黒板に”drink”と”study”という動詞を書いて “We are studying English now, but Rob is drinking coffee!”と繰り返します(笑)

 

板書したフレーズを繰り返していると生徒は勝手に真似して繰り返してくれるので、流れでなんとなく何度か口頭練習。すると、ALTから着信アリ。

ALT: Hey, now I’m in the classroom, but nobody is here! Where are you?

どうみても、同じ階の空き教室から電話しているようです。

JTE: What are you doing there? We are waiting for you!
ALT: I’m waiting for you, too!

このへんでボランティア生徒に別室にALTを迎えに行かせます。Skypeはつないだままなので、やがて画面に迎えに行った生徒が写って盛り上がります。このあと、生徒とALTが戻ってきたら、改めて”drinking”と”studying”の口頭練習をしたあと、黒板に英文を書いて、簡単に解説します。ここまで5~7分くらいです。

文法の機能が伝わる導入を

さて、この導入はビデオ通話という飛び道具があるので生徒は勝手に盛り上がりましたが、こちらとしてはそれ以上に現在進行形が持つ「機能」について感じ取ってもらうことに重きを置いていました。

 

もちろん現在進行形は別に電話でのシチュエーションのみで使われるわけではないし、この導入だけで「機能」が体感できるわけではありません。その後も、考えられる使用場面を提示していく中で、生徒は現在進行形が使われる場面の共通点を考えるようになります。

 

– Aくんを教室に訪ねてきた隣のクラスのBくんに “He is running outside now.”

– 電話で友達に手伝いを頼んだら “Sorry, I’m doing homework.”

– スマホで遊んでると思って親が叱ったら “I’m studying English.”

 

こんなふうに、たくさんの事例に触れる中で、

 

*ああ、現在進行形って相手には見えない状況を伝えてるんだな。
*その結果として相手の申し出を丁寧に断ったり、怒られたときの言い訳をしたりするのに役立つんだな。

 

そんなふうに感じてもらえるような例文を提示するようにしています。

 

最初に出会う導入も、そういう場面と結びついたものになることで、生徒は一貫したイメージを保持しながら文法事項に触れていくことができると思います。それを強調して伝えるために、今回はビデオ通話が効果的だったということです。 そういう意味では、当時の回線や機器の都合もあってビデオ通話の画質がイマイチだったのも、言葉で確認する必然性があってむしろよかったのかもしれません(笑)

 

導入で何を伝えるか、どんな場面でICTを使うべきか、考えていただくきっかけになれば嬉しいです。

ブログ元ネタ:『skypeで現在進行形の導入してみた』(2019年1月10日)
https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/2019/01/10/235900 

プロフィール

奥住 桂    おくずみ・けい

・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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