三省堂のWebコラム

奥住桂のTips for Teaching English 2.0

本コラムは、奥住桂先生が長年綴ってこられたブログ『英語教育2.0』をもとに、新たな視点と内容を加えて再構成していただいたものです。実践に根ざした具体的なアイデアと、英語授業への深い洞察が詰まったそのエッセンスを活かし、先生方の授業に役立つヒントをお届けします。

No.14 言えることは英語で

奥住 桂
埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科、「NEW CROWN」編集委員

2026年04月13日

授業で必要になるフレーズを

毎年、これは1年間徹底して継続しようと心に決めて指導に当たるのですが、なかなか継続していくのは難しいものです。そんな中、私がずっとこだわってやってきたことの1つは、生徒に「言えることは英語で」言わせる、ということです。いわゆる「クラスルーム・イングリッシュ」というやつですけど、教師が使うというより、生徒が使う方を重視しています。

 

 

 

この方針を徹底していくために大切なことは、生徒にとって本当に必要になる英語をインプットする、ということです。というか、インプットした英語を使わなければならない場面を、授業の中に(あえて言えば無理矢理にでも)作るということでもあります。

 

例えば、4月に私が中学1年生の生徒に提示していたのは、下記のような表現集です。基本的にはA4版1枚に20個の表現を載せておきます。以下はその一部です。ポイントは、授業中に生徒が言いそう(言わなきゃいけない)言葉たちです。(ワークシートのダウンロードはこちら PDF版MS EXCEL版)。

 

Let’s Talk 言えることは英語で言おう!
1  Let me try.  その問題、私にやらせて!        
2  I know. Please ask me.  わかる!私に聞いて!        
3  Well… / Let me see…  えーっと…        
4  Just a moment, please.  ちょっと待って!        
5  Once more, please.  もう一度お願いします。        

 

これらのフレーズからは、「(指名を求めて)手を挙げる」「お願いする」「謝る」「感謝を示す」といった「言語の働き」が垣間見えます。生徒が、教師やクラスメイトに(他教科の授業だったら日本語で)言いそうなフレーズを集めているわけです。

 

英語使用の真性性(authenticity)という言葉もよく話題になりますが、その意味では、日本人中学生が日本人中学生のクラスメイトに向かって、英語で話す必然性なんてないですけど、個人的には「英語の授業なんだから英語使おうぜ」でいいと思うんです。そんなことより、「今、綴りを確認したい」「もう1枚ワークシートが欲しい」というその瞬間に高まっているコミュニケーションする必然性の方を「利用」したい、と思うんです。

 

なので、あえてそういうフレーズを選んでリストにしています。それらをどうやって覚えさせて、どうやって使わせていくのか、以下ご紹介します。

覚える!

もちろん、生徒が「言いたい!」と思った時に表現を導入するという方法もありますが、私はリストにして意識的に音声化する練習をしていました。いろいろ知らせておいて、必要になった時に生徒が自分でリスト内を探して使えるようにしたかったからです。

 

練習は、ペアでじゃんけんをして勝った方が日本語、負けた方が英語を言うというスタイルでした。制限時間を設定して、時間で追い込んでいきます。だんだん達成が難しくなるように、到達度や時期に応じて複数のステージを用意しています。ステージの例としては、以下のような段階が考えられます。

 

ペアで用紙を交換して、相手が言えたら(読めたら)チェック欄を塗りつぶします。一応、相手の言葉をしっかり聞くという習慣を身につけさせたいので、相手が日本語を言い終わる前に英語を言ってはいけない、というルールです。片方が終わったら、役割を交代してもう一度やります。

使う!

さて、ここからがポイントですが、せっかく4月に覚えさせた表現なんですから、年間を通して使わせましょう。

 

普通に授業をしていれば、生徒が困って英語で問題を解決する場面は生まれるものですが、その際に面倒でも(時間がなくても)必ず英語で言わせる、と腹を決めることが何より重要です。私がこの実践を取り入れるきっかけになった地域の先輩教師は、たくさんの参観者が集まる研究授業でも、言えずに困っている生徒に “You can say it in English. Try it!” と励まし、待つ姿が印象的でした。私もそれは常に心がけていました。

 

また、ALTと協力して、ワークシートを配る時にわざと少なめに(あるいは多めに)配って “One more sheet, please.” などと言わせてみたり、机の上の消しゴムを(ぼくが)落として、拾って上げて “Thank you.” と言わせてみたりと、かなり強引に英語を引き出していました(笑)。

 

中学1年生なんかは、”Let me try!” と言わないと挙手しても当ててもらえないので、すごく張り切って言ってくれるようになります。みんなと同じことを言っていては気づいてもらえないから、勝手に “Here!” とか違った表現を言おうとする生徒も出てきます。(全員でデモ行進のように “LET ME TRY! LET ME TRY! …” の大合唱になってしまった時は参りました…)

 

また、ふりがなをふることもできるように、英語は少しだけ上寄りに印刷してあります。1年生なんかは、文字指導をする前にこれを配って練習しちゃいますけど、音で覚えちゃいますね。何より「くり返すこと」と「使う機会を用意すること」で、定着の度合いはずいぶんよくなるかと思います。

 

英語の授業そのものが、一番の英語の使用場面になるといいなと思います。

ブログ元ネタ:『言えることは英語で』(2010年4月8日)https://anfieldroad.hatenablog.com/entry/20100408/p1

プロフィール

奥住 桂    おくずみ・けい

・千葉県野田市生まれ
・獨協大学外国語学部英語学科卒業、埼玉大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程研究指導認定退学
・埼玉県公立中学校教諭、帝京大学、埼玉学園大学を経て、現在埼玉大学教育学部・大学院教育学研究科准教授
・最近の関心は「ゲーミフィケーション」と「演技」
・このところラーメン派から蕎麦派になりつつある自分に驚き

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