工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学
2026年10月01日
津久井
前回、教室が多国籍になってきた!っていう話をしてから少し考えてみたんだけど、日本語母語話者の生徒が英語の授業にあまり参加してくれない場合でも、その理由はさまざまだよね。
工藤
うん、そうだね。
津久井
もちろん、「英語そのものが嫌」っていう生徒もいるだろうけど、「学校に来ることがそもそも嫌」だったり、「学校も英語も別に嫌じゃないけど、隣の生徒とペアワークさせられるのは嫌」だと思ったりしてる生徒もいるよね。
工藤
そうだよね。今日は前回からの続きで、もう少し具体的な実践について検討したいなと思うよ。
学校に来ることに前向きなら、「得意」を発揮できる機会を
津久井
外国にルーツをもつ子どもと言ってもいろいろなタイプの子がいるということは前回確認したね。
まずはかつての工藤少年のように、ことばはわからなくても前向きに学校に来てくれている生徒のことを考えてみようか。
工藤
自分がやってもらって嬉しかったなと思うのは、自分が得意なことにフィーチャーしていろいろなイベントをやってくれたこと。イベントと言っても、新しい行事をするとかそういうことではなくて、例えば計算とか。
津久井
工藤先生は計算が得意だったの?
工藤
アメリカに行ったときは4年生に相当する学年だったんだけど、そこで習う算数の内容は、日本の小学校の2年生とか3年生ですでに習ってる内容だったんだよね。それに、算数は、ことばがわからなくても式を見れば何をすればいいかがわかったし。
津久井
そうか!計算だと、必ずしもことばでの明示的な説明を理解する必要はないもんね。
工藤
自分としては、「こんなの前に習ってるんだから、できて当たり前じゃん!」と思ってたけど、みんなの前で計算をすると、「ヨウジすげぇ!できるなぁ!」って褒められるのは嬉しかった。
もちろん同じ立場でも、見世物にされてるみたいで嫌だと思う人はいるだろうから、一概には言えないけどね。
津久井
そうだね。でも、「得意」を披露できる場をつくることは大切なことだと思う。
工藤
他には、「お箸DAY」みたいな日が設けられて、お箸の使い方を教えてあげた記憶もあるし、折り紙でツルを折るイベントでは、他のクラスもまわって、ツルの折り方を教えてあげた。
お箸も折り紙も、「教える」と言っても実際には「見せる」だけで、 “Like this!” くらいしか言わないんだけどね。
津久井
なるほどー。
工藤
いろいろな人と関わる機会にもなったから、ありがたかったよ。ことばを使いこなすことが難しい生徒の場合は、ことばがなくてもできるようなものがいいんじゃないかと思う。
津久井
いいね。活躍できる場面を設けてあげられれば、学校生活に前向きになれるかもしれないよね。
工藤
あとは、すでに実施しているところもあると思うんだけど、外国にルーツをもつ子どもたちの出身国の料理を給食で出すのも、交流のきっかけになるよね。
津久井
楽しそう!できるかどうかはわからないけど、シュラスコとかタコスとか、盛り上がりそうだなー。
先生が意図的に居場所をつくる
工藤
NEW CROWNだと、1年生のLesson 6のGoal Activityに「日本の学校生活や行事を紹介するメールを書こう」というのがあるよね。こういうときにも、一律に日本の学校を紹介させるのか、外国にルーツをもつ子どもたちは出身国の学校を紹介させる方がいいのか、教員が現場で判断していくことになるよね。
津久井
この間見せてもらった授業にネパール出身の生徒がいたんだけど、先生のやり方がうまいなーと思ったよ。「あれ?そういえば、ネパールではどうなんだっけ?」って、ちょこっと挟む。その生徒は日本語も英語もそこまで堪能ではないみたいだったけど、その生徒の発言を拾って、「へえー!ネパールではそうなんだね」って。
工藤
いいね、それ。日本人の生徒にとっても、発見があるよね。
津久井
そうそう。それがきっかけで、日本人の生徒もネパールの事情に興味をもって、一生懸命コミュニケーションを取ろうとしてた。
しかもそのコミュニケーションって、慣れ合いじゃなくて本気なんだよね。日本人の生徒同士だとどうしても共有されてるバックグラウンドが多いから、ことばで明示的に言わなくても何となくわかったり、英語がわからないときは日本語で言えばいいやって思ったりしてしまうこともあると思うんだけど、それはできないからね。
工藤
そうだよね。せっかくだから、外国にルーツをもつ生徒も「授業に貢献できた!」と思えるような機会とか、日本人の生徒も「その生徒がいてくれたから理解が深まった」と思えるような機会を提供できるといいよね。
津久井
「貢献」といえば、英語は母語ではないけどある程度話せる、外国にルーツをもつ生徒が活躍してる英語の授業もあったなぁ。次回はその話からということで。
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※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。 |
工藤洋路 くどう・ようじ 東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員
・1976年生まれ
・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程 修了(学術博士)
・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授
・趣味はランニング。出張先でのランが好き。大阪城周回、博多大濠公園、神戸みなとのもり公園でのランが特に好き。
・お気に入りのカフェメニューはプリンアラモード。
津久井貴之 つくい・たかゆき 群馬大学、「NEW CROWN」編集委員
・1974年生まれ
・群馬大学教育学部・同大学院修了
・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て 、現在群馬大学共同教育学部講師
・趣味は朝の散歩後にレトルトカレーを食べること。
・お気に入りのカフェメニューは、ホットコーヒーとモンブラン。

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