工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学
2026年06月01日
工藤
前回、私たちが英語教員になったきっかけについて話したけど、津久井さんは教員以外の選択肢はなかったの?
津久井
なかったなー。考えてみたこともなかった。
工藤
自分は教員以外にも、もう一個考えていたことがあるんだよね。それは、英語を「教える」ではなく「使う」方面。今後の英語教育が、もっと英語を「使う」方面にシフトしていったら、英語を「教えたい」って思う学生は減ってしまうのかなと思うこともあったりする。今日はそんなことを話せたらなと思うよ。
「英語を使う仕事」に惹かれていた頃
工藤
自分は今もスポーツが好きだけど、子どもの頃からずっと好きなんだよね。スポーツ雑誌の『Number』っていうのをよく読んでたんだけど、知ってる?
津久井
知ってる知ってる!自分も子どもの頃、けっこうよく読んでたよ!
工藤
ああいう、スポーツ雑誌の記事を書く記者になりたい、って思ってた。取材でスポーツ選手に会えるんじゃないか、って、ミーハーな理由だけど。
津久井
確かに、どの記事も面白かったもんなー。
工藤
学生だった頃、当時の外語大には衛星放送を見られる部屋があって、そこでNBAを英語で見ていて面白かった。サッカーもJリーグが始まって盛り上がってたし、野球では野茂英雄選手がメジャーに行ったのも話題だった。日本の選手だけではなく、海外の選手へのインタビューができることにも憧れて、本気で記者を目指していた時期があったよ。
津久井
英語教員もスポーツ雑誌の記者も「英語」という点ではつながっているけど、記者は完全に英語を「使う」方面だね。
工藤
そうだね。たまたま、教育実習というきっかけで英語を「教える」教員を目指したけど、もし何か別のきっかけがあれば、本格的に記者を目指していたかもしれない。
英語が「教科」から「道具」になると、教員志望は減る?
工藤
話が逸れるけど、今は小学校から、使いながら英語を覚えることを目指しているよね。そうすると、英語は道具で、英語を使ってコミュニケーションしようという思考になっていくと思う。そしたら、大学で英語を学んで英語教員になろうと思う学生が減らないかな、と考えることがある。
津久井
確かに。
工藤
今の指導要領が完璧に実行されて、「英語を使う」方向に進めば進むほど、英語自体を専門にしようとする人が減ってしまうんじゃないかな。
自分は、英文法を明示的に教えてもらって学んだことで、英語の「しくみ」が面白いと思ったし、英語そのものに興味を持った。でも、英語をコミュニケーションで使って、「使うこと」が面白いと思うようになったら、英語を使って何か別のことをやりたいと思うようになる気がするんだよね。
津久井
前に英語を指導していた子で、将来ミュージカルに出たいと言っていた子がいたんだよね。海外の演出家の指導を受けるときに、通訳を介して理解していたみたいなんだけど、英語がわかれば指示のニュアンスもつかめるし、どういう風に演じればよいか質問やアピールもできる。ツールとして重要だと言っていた。
工藤
英語教育的には重要なことだけど、英語教員養成の観点からすると、少し心配になるね。
津久井
でも、英語を使えるようになって「よかったこと」があると、「将来子どもたちにもそれを経験してほしい、英語を使えるようになってほしい」、と思って「英語の先生」になりたいという子はいるかも。層は変わるかもしれないけど、英語の先生になりたいって思う子が今後もたくさん出てきてくれたらいいな。
工藤
そうか!英語ができたことで世界が広がった経験を「次は自分が未来の子どもたちに渡したい」と思って英語の先生になる人もいるよね。英語教育改革は、英語教員を目指す動機やタイプを変えていくのかもしれないね。
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※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。 |
工藤洋路 くどう・ようじ 東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員
・1976年生まれ
・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程 修了(学術博士)
・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授
・趣味はランニング。出張先でのランが好き。大阪城周回、博多大濠公園、神戸みなとのもり公園でのランが特に好き。
・お気に入りのカフェメニューはプリンアラモード。
津久井貴之 つくい・たかゆき 群馬大学、「NEW CROWN」編集委員
・1974年生まれ
・群馬大学教育学部・同大学院修了
・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て 、現在群馬大学共同教育学部講師
・趣味は朝の散歩後にレトルトカレーを食べること。
・お気に入りのカフェメニューは、ホットコーヒーとモンブラン。

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