工藤洋路、津久井貴之
東京外国語大学、群馬大学
2026年09月01日
工藤
年度初めに、「昨年度の訪日外国人の数が過去最高を更新して4000万人突破!」っていうニュースを目にしたけど、今後もどんどん増えていく見込みみたいだね。
津久井
そうだよね。観光地に行くと、海外からもたくさんの旅行者の方々が来てくれているのを実感するし、授業見学に行かせてもらっても、外国にルーツをもつ児童や生徒が増えてきてる印象があるよ。
工藤
文科省の資料で、「日本語を家であまり話さない子どもが、中学校の40人学級の中に1.3人いる」と出ていたよ。あくまで平均値だから、そういう子がいない地域にはまったくいなくて、いる地域にはたくさんいる、というのが実態だとは思うけど。
津久井
そういえばこの間授業見学させてもらったクラスでも、教室の2列弱くらいが外国にルーツをもつ生徒で、想像してたより増えてきているなという印象を受けた。
そして、今年新任で英語の教員になった教え子から、「想像していたよりずいぶん教室内が多国籍なんですが、どうやって運営していくのがいいでしょうか」って相談を受けたよ。
工藤
教員養成課程の授業においても、今の大学生が小・中学生だった頃に比べてずいぶん教室内の多国籍化が進んでることは伝えておきたいよね。
今日は、外国にルーツをもつ子どもたちが増えてきた今、改めて認識しておきたいことについて話してみようか。
実際の教室での事例
工藤
さっきの、「教室の2列弱くらいの生徒が外国にルーツをもってた」っていう話だけど、割合で言うと十数パーセントくらいだよね。それはもう、クラス運営上も無視できないよね。
津久井
外国にルーツをもつ子どもたちからの支持があるのだと思うけど、生徒会に外国にルーツをもってる生徒が入っているみたい。民主的だなと思ったよ。
工藤
そういう声がきちんとあがってくるのはいいことだよね。
津久井先生が行ってる学校で考えると、例えば1クラスに外国にルーツのある生徒が5人いたとして、その子たちの国籍は同じなの?
津久井
いや、全員同じではない。どこのあたりが多いとかの傾向はあるけど、バラバラ。あとは、日本に来るまでの経緯や、来てからの期間も全然違っているみたい。
日本語のレベルも様々で、「まだ日本に来たばかりで、ホームクラスとは別の教室で一生懸命日本語を勉強し始めたばかり」の子もいれば、「幼少期から日本にいて、母語に加えて日本語も英語も話せる」というような子もいる。
工藤
へぇ、そうなんだね。
その子たちって、中学校を卒業してからもずっと日本にいるのかな?何年か経つと帰っちゃうのかな?
津久井
それも人によるけど、ずっと日本にいる予定の子もいるみたい。
工藤
そうか。そうすると、つい「外国にルーツのある生徒」とひとくくりに考えてしまいがちだけど、個人の性格はもちろん、日本に来た経緯や日本語のレベル、この先日本にいるかどうかについてもバラバラということになるね。それぞれの生徒に合わせた対応が必要だね。
工藤少年が「外国にルーツのある子ども」だった頃
工藤
以前のCoffee Breakでもチラっと話したことがあるけど、10歳の頃に1年間、アメリカの小学校に通ったんだよね。親の仕事の都合で家族みんなで行ったから、当時の自分はアメリカ人の先生からするとまさに「外国にルーツのある子ども」であり、「英語を家であまり話さない子ども」だった。
津久井
そうか!アメリカに行った時点で、工藤先生は英語がある程度話せたの?
工藤
まったく!ハローとサンキューくらいしか知らない状態で現地校に入ったんだけど、行く前に英語を習うこともなく、いきなり英語の環境にぶち込まれて、何にもわからなかった!特に、日本で言う「国語」の授業なんて何にも理解できないから、その時間に授業のない先生が別教室に連れて行ってくれて、英会話の授業をしてもらってたよ。
津久井
なるほど。でも、工藤少年は、アメリカでの経験は楽しかったんだよね?
工藤
そうそう。ことばはわからなかったけど、日本に比べて自由で、学校におもちゃを持って行ってもいいし、お昼休みにアイスを買って食べてもいいし。友だちも優しくて、休み時間にサッカーに誘ってもらってことばを使わないで遊ぶ時間も楽しかった。
津久井
案外子どもたち同士だと、ことばを使わなくても仲良くなれたりするもんね。
工藤
だけど、弟はあんまりアメリカでの小学校生活にいい印象をもってないと思うんだよね。同じようにアメリカに行ったけど、まずは食事が合わなかった。毎日タコスやピザのアメリカンスタイルな食事なのが嫌で、母親におにぎりを持たされてたけど、周りと違うものを食べることも嫌だったみたい。
日本人の生徒が英語をうまく話せなかったり、英語の単語テストで点数を取れないことなんて当たり前なのに、できないのも嫌だったみたいだよ。
津久井
うーん、そうか。
工藤
そういった、複合的な理由でいろいろなことが嫌だったんだと思う。
だから、例えば今「自分のクラスにいる、外国にルーツをもつ生徒が授業に向き合ってくれない」って悩んでる先生がいるとしたら、それは授業が嫌なんじゃなくて、もしかしたら給食が嫌だとか、そういう理由もあるかもしれない。
津久井
そうだね。現職の先生たちも、先生たち自身が小中学生だった頃には今ほど多国籍な教室じゃなかっただろうから、「日本語も英語もわからない!大変だ!」とひとくくりに考えてしまいがちだけど、一つの見方や対応では全てを解決できない可能性が大いにあるよね。
工藤
そうだね。
とはいえ、いろいろと手を打ってみなければ何がそれぞれの生徒に響くかはわからないから、次回は英語教員としてできそうなことをいくつか考えてみようか。
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※この連載は、お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり、工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。 |
工藤洋路 くどう・ようじ 東京外国語大学、「NEW CROWN」編集委員
・1976年生まれ
・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士前期課程・後期課程 修了(学術博士)
・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て、現在東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授
・趣味はランニング。出張先でのランが好き。大阪城周回、博多大濠公園、神戸みなとのもり公園でのランが特に好き。
・お気に入りのカフェメニューはプリンアラモード。
津久井貴之 つくい・たかゆき 群馬大学、「NEW CROWN」編集委員
・1974年生まれ
・群馬大学教育学部・同大学院修了
・群馬県内の公立中高一貫校やお茶の水女子大学附属高等学校教諭等を経て 、現在群馬大学共同教育学部講師
・趣味は朝の散歩後にレトルトカレーを食べること。
・お気に入りのカフェメニューは、ホットコーヒーとモンブラン。

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