三省堂 発行書籍
小学校にプログラミングがやってきた! 超入門編

2020年度から小学校でのプログラミング教育が必修化される。本書はプログラミングを子どもに楽しく習得させるための必須の心得を伝授。プログラミングを初めて学び、教えるための待望の入門書! 全6章、「簡略用語集」付き。

  • 上松恵理子
  • 2016年 12月 10日 発行
  • 定価 1,320円(本体1,200円+税10%)
  • B6判  144頁  ISBNコード 978-4-385-36440-7

著者紹介

上松 恵理子 (うえまつ えりこ)

博士(教育学)。新潟大学大学院人文科学研究科情報文化専攻修士課程修了、新潟大学大学院現代社会文化研究科人間形成文化論専攻博士後期課程修了。
現在、武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部准教授、早稲田大学招聘講師・研究員、国際大学GLOCOM・明治大学サービス創新研究所客員研究員、東洋大学・群馬大学・実践女子大学非常勤講師。 「教育における情報通信(ICT)の利活用促進をめざす議員連盟(超党派)」有識者アドバイザー、総務省「プログラミング教育事業推進会議」委員など。

執筆者紹介

上松恵理子(うえまつ えりこ)
担当:はじめに、SECTION6
久野靖(くの やすし)
理学博士。東京工業大学理工学研究科情報科学専攻博士後期課程単位取得退学。
現在、電気通信大学情報理工学研究科教授、筑波大学名誉教授。
担当:SECTION1~4
萩谷昌己(はぎや まさみ)
理学博士。東京大学理学系研究科情報科学専攻修士課程修了。
現在、東京大学情報理工学系研究科コンピュータ科学専攻教授。
担当:SECTION5

目次

はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 003
プログラミングでつく新しい力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 009
1.1 コンピュータの可能性を理解する ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 011
1.2 コンピュータの性質がわかる ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 012
1.3 いろいろな見方・考え方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 013
1.4 表現力・創造力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 014
1.5 未来の自分が活かせる力 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 015
プログラミング言語のものさし ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 017
2.1 ものさし1 : テキスト型か、グラフィクス型か ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 021
2.2 ものさし2 : 教育用か、汎用か ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 025
2.3 ものさし3 : 機器制御か、ソフトのみか ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 029
2.4 プログラミング言語の地図を描く ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 033
さまざまなプログラミング言語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 035
3.1 言語1 : ビスケット ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 038
3.2 言語2 : アルゴロジック ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 044
3.3 言語3 : スクラッチ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 048
3.4 言語4 : ドリトル ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 052
3.5 言語5 : JavaScript ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 056
3.6 言語6 : VBA ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 058
3.7 言語7・8 : RubyとPython ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 060
3.8 言語9 : C言語 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 063
3.9 言語10・11 : C++とJava ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 065
プログラミングの学び方 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 069
4.1 「離陸」して、それを維持しよう ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 073
4.2 自分のレベルに合ったチャレンジを ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 076
4.3 自分の問題を解くことを楽しむ ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 079
4.4 ファシリテーションが重要 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 081
4.5 自分に合うプログラミング言語・環境を使おう ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 083
プログラミングの未来 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 085
5.1 プログラミングと教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 091
5.2 情報学とコンピューテーショナルシンキング ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 093
世界のプログラミング教育 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 099
6.1 フィンランドの事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 102
6.2 スウェーデンの事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 109
6.3 デンマークの事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115
6.4 オーストラリア、クイーンズランド州の事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 118
6.5 韓国の事例 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123

おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 128

簡略用語集 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 132
主要索引 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 136
主要参考文献 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 139
著者紹介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 141

はじめに

この本は、プログラミングとはなんだろう、プログラムを学ぶとどのようなよいことがあるのだろう、プログラムを作る方法としてどのような作り方があるのだろう、そしてプログラミングを学ぶのにはどのようにするのがよいのだろう、という疑問に答えるものです。
 現在、日本の小学校でプログラミングを必修化しようという動きがあります。でもなぜ、プログラミングが必要なのでしょうか?今、私たちの日常は、コンピュータ無しでは生活ができない状況になってきています。私たちはスマートフォン(その中身はコンピュータです)を使って調べたり、仲間と連絡し合ったりしながら暮らしていますし、職場に行けばパソコンを使ってさまざまな仕事をしています。
 企業や社会全体もそうです。企業では経理や品物の管理、商品の企画やプランニング、社員どうしの連絡などをコンピュータで行っています。外に出れば、電車やバスや航空機などの交通手段もコンピュータで制御されていますし、公的機関に情報を登録したり証明書をもらったりするときも、すべてコンピュータで情報が取り扱われています。
 また現在、ロボットが社会のさまざまなところで活躍していますが、これもその動きはコンピュータによって制御されています。人工知能という言葉を聞いたことがあるでしょうか。人工知能というのはひらたく言えば、コンピュータに「学ぶ」「学んだことに基づいて推論する」「判断する」といった、人間と同様の知的な活動をさせる技術のことですが、ロボットなどのさまざまな場所で人工知能の技術が使われ、コンピュータが「知的な」活動を作り出しています。今は人間にしかできない仕事でも、近い将来コンピュータにとって代わられてしまうだろう、という人もいます。
しかし、飛行機もロボットも人工知能もすべて、人間がプログラムを作ってコンピュータに与えることで、すべての動作ができあがっているのです。言い換えれば、プログラミングによって便利なものや新しいものがたくさん作り出され、その上で成り立っている社会が今日の情報社会です。
 たとえば、今日の小学生が大人になったときに就く職業の65%は、現在まだ存在していないものである、と言われています。そのような新しい職業の多くは、コンピュータと深く関係してくるでしょう。ですから、これからの社会を担っていく子どもたちが、コンピュータやプログラミングについてきちんと学び理解していることは、本人が将来重要な仕事を任される大人になるためと、私たちの社会がこれからも繁栄していくために必要なことなのです。
でも待ってください。「これまでの経験では、パソコンの使い方は確かに大切だったけれど、自分でプログラムを作ることまでは必要が無かった。誰か専門家が作ったプログラムを使えれば十分じゃないの?」そのように言う人がいらっしゃるかも知れません。
 確かにこれまでは「使えるだけ」で済んでいたかも知れません。しかし、これからの世の中では、自分でプログラムを作ったり手直ししたりする「体験」を持っておくことがとても大切です。だから今後、小学生全員がプログラミングを必修でやることになったのです。
 この本は、初めから読む必要はありません。好きな場所から読んでください。このことは、どのプログラミングにも共通することです。どのような方法で行うかは、皆さんが決めるのです。そして学び方にもいろいろな方法があることを知ってください。
 世界では小学校1年生からプログラミングが必修化されている国もあります。皆さんが、プログラミングの世界を楽しいと思うことができるようにこの本を編んでみました。さあ、プログラミングの世界へようこそ!

編著者

おわりに

海外の学校へ視察に行くと、プログラミングの授業を見てみませんか?とよく言われます。わざわざ日本から来たのだから見てください、と言わんばかりです。教室に入るとプロジェクターや電子黒板は日本製が少なくありません。日本は優れたIT機器をたくさん作っているIT先進国で、日本を目標にしている国もあります。 貧困の連鎖という言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、海外では内戦が続き、難民問題をかかえている国もあり、その連鎖を断ち切るためにプログラミングを学ばせるといった小学校もありました。教育の成果は10年後、20年後に出るということも少なくありませんから、子どもに生きる力をつけ、将来のことを考えてのことでしょう。
 私が訪れた国では、幼少期から必修でプログラミングが行われていました。日本は何歳から学校でやっていますか?と聞かれることもあります。まだ中学校の技術・家庭科で必修、2020年から小学校でようやく必修化が始まる、と言うと意外だと驚かれることもありました。繰り返しますが、コンピュータを理解するためにプログラミングを学ぶことが先進国では始まっています。学校で早くプログラミングを教えて欲しいという保護者のニーズがあるということも聞きました。海外の学校訪問を繰り返すたびにプログラミングについての私自身の考え方が変わってきました。
 これまで私は、プログラミングというとパソコンの前でプログラムを黙々と打ち込むというイメージしかありませんでした。難しそうだし自分の専門でもないし、と敬遠してきました。
 しかし、このようなことを海外で見聞きし、私もいろいろ試行錯誤しながら、プログラミングを専門分野とする先生方が身近にたくさんいるという恵まれた環境の中にたまたまいることもあり、プログラミングを教えてもらいました。確かにやってみると楽しく、はまってしまいます。しかし専門の先生方はそれぞれ言語を縦横無尽に操り、それぞれの言語について熟知されているので、私は先生方が既知のこととしていることすらわからずに、とても戸惑ってしまいました。入門書は売っていてもプログラミングの全体像について網羅している入門書が多くないことに気がつきました。 実はかなりプログラミングが得意な人でも、全員が全員、複数の言語を使いこなせているわけではありません。この言語はわかるけれど、この言語は苦手といったこともままあります。そのような中で、ちょっとどんなものかを知るために手に取って、プログラミングをより理解できるような本が欲しいなとずっと思っていました。この本はまだ入門書の手前、プログラミングってどんなものかの入り口で手渡されるイメージで読んでみてください。たとえば、プログラミングが苦手な保護者の方でもお子さんが小学校に行って必修化になった場合、ナビゲートできるようにわかりやすく書いています。また、学校図書館に必ず置いてあるというイメージで読んでもらえたら幸いです。
 さて、「デザインする」という言葉を海外に行くとよく聞きます。日本でデザインと言えば、「ロゴなどを描く」というようなイメージを持つことが多いかもしれませんが、海外ではデザインは社会構造をクリエイトすることまでも指す場合があります。モノづくりにおいてもよい製品を作るだけではなく、販路や販売先の使われ方までもがデザインの対象となるのです。もちろん教育がどう社会に関わっていくべきか、将来のビジョンを含めた社会システムをクリエイトするのもデザインの1つです。デザイン力や創造力はプログラミングにも必要な力です。こういった能力を幼いころから育てていくことで、これからの日本のスマートな社会を担っていくことができるのではと私は考えます。
 まず、プログラミングを始める時にこの本で全体の概要を理解してスタートしてください。
 最後に、出版にこぎつけていただき、私のイメージを形にしていただいた三省堂の飛鳥さんに感謝いたします。

2016年10月
編著者 上松恵理子

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