三省堂 発行書籍
「新たな学び」を支える国語の授業 上 ―思考力・判断力・表現力の育成を目ざして

「思考力・判断力・表現力等」の育成は、現在の学校教育における最重要課題となっている。国語科においてこれらの能力を育むための「新たな学び」のあり方を、表現の授業を通して考究する。

  • 中洌正堯 監修   石丸憲一・岸本憲一良・香月正登 編著
  • 2013年 6月 20日 発行
  • 定価 1,800円+税
  • B5判  152頁  ISBNコード 978-4-385-36591-6
  • 対象 小・中

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著者紹介

中洌正堯 (なかす・まさたか)

広島大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。広島県公立中・高等学校、鳥取大学を経て、兵庫教育大学学校教育学部助教授、教授、評議員、学部主事、学校教育研究センター長、研究科長、学長を歴任。現在、兵庫教育大学名誉教授、国語教育探究の会代表。

石丸憲一 (いしまる・けんいち)

静岡大学教育学部卒業。兵庫教育大学大学院修士課程修了。静岡県公立小学校教諭、創価大学教育学部准教授、同大学院教職研究科准教授を経て現在、同教授。

岸本憲一良 (きしもと・けんいちろう)

兵庫教育大学大学院学校教育研究科修士課程修了。奈良県公立小学校教諭、奈良県教育委員会指導主事、山口大学教育学部助教授を経て現在、同教授、教育学研究科国語教育専修主任。山口県学力向上アクションプラン推進委員(座長)、下関市学力向上推進委員等。

香月正登 (かつき・まさと)

山口大学大学院教育学研究科修士課程修了。小野田市立高千帆小学校を初任として山口県公立小学校教諭。現在、下関市立小月小学校勤務。

目次

まえがき

第Ⅰ部 「新たな学び」を支える表現の授業
  第Ⅰ部の構成
  ○理論編
   ① 単元を組織して表現力を鍛える
   ② 書くこと」で表現力を育てるために
   ③「共創力」をそだてる
   ④「一・五人称の視点」で書く力を育てる
 ○実践編
   ① 入門期における「観察したことからたとえて表現する」生活文の授業  書くこと 小学校1年
   ② 思考力に着目し、論理形式や言語技術と内容をつなげる  書くこと 小学校2年
   ③ 日常の中に感動を見つけ、発想力を育む俳句の授業  書くこと 小学校2年
   ④ 題材の工夫と相互評価で表現力を育てる短作文の授業  書くこと 小学校2年
   ⑤ おもしろい詩を書く発想力を高める「習得」から「活用」の授業  書くこと 小学校2年
   ⑥ 「作文レシピ」で《いつも書いている》クラス作りを  書くこと 小学校3年
   ⑦ 生活文を物語風に書くことで表現力をつける「書くこと」の授業  書くこと 小学校4年
   ⑧ 「書きたい」と思える詩の授業  書くこと 小学校4年
   ⑨ マイ言葉辞典 書くこと 小学校4~6年
   ⑩ 意見文を適切に書くための「書く視点」の作成と活用  書くこと 小学校5年
   ⑪ 二段階の取材・構成で表現力をアップする意見文の授業  書くこと 小学校6年
   ⑫ 運動会新聞作りで表現力を育てる短作文の授業  書くこと 小学校6年
   ⑬ 「場の構成の工夫」で話し合いを展開する力を育てる音声言語の授業  話すこと・聞くこと 小学校2年
   ⑭ インタビューからスピーチ力の育成へ  話すこと・聞くこと 小学校3年
   ⑮ 「三文」を原形に説明力を育てる習得・活用の授業  話すこと・聞くこと 小学校4年
   ⑯ 役割を意識しながら、表現力が育つ話し合いの授業  話すこと・聞くこと 小学校4年
   ⑰ 〈分かる〉〈考える〉〈書く〉が一体化する説明文(言語教材)の授業  書くこと 中学校2年
   ⑱ 鍛えよう表現力! コラボレーション短歌の授業  書くこと 中学校2年
   ⑲ 「話し合いを振り返り、自分の考えを深める」表現力を育てる授業  話すこと・聞くこと 中学校1年

あとがき

まえがき

「新たな学び」の要件

現下、学校教育の目標として、基礎的、基本的な知識・技能の習得、学習意欲の向上、課題を見いだし解決を図る力、思考力・判断力・表現力等の育成、多様な人間関係を結んでいく力の育成などが重点化されている。これらのことは、これまでもくりかえし求められてきたことである。しかし、省みて手薄だったことは、これら育成すべき能力の有機的なつながりであり、相互の補完、助長の関係である。「新たな学び」は、このつながりや関係を強化することによって成り立つ。

目標としての「表現力」

国語教育の目標を「表現力」に焦点化していえば、かつて柳田国男が「国語の愛護」に関して「この日本語をもって、言いたいことは何でも言い、書きたいことは何でも書け、しかもわが心をはっきりと、少しの曇りもなくかつ感動深く、相手に知らしめうるようにする」と述べた理想を今でも唱えることができる。では、「言いたいこと、書きたいこと、わが心」というのは、どこから生じてくるか。それは、学習者が自分をとりまく世界(現象・事象等)に接し、刺激を受け、思考し、判断することにおいてである。

文章・作品は一つの構造体

自分をとりまく世界(現象・事象等)の中の事象には、学習者の場合、教材としての文章・作品が大きな位置を占めている。文章・作品は、論述(叙述)・構成・要旨(主題)を中核とする構造体である。そこには、説明的文章でいえば、知識・情報、実証の方法、筆者の発想・思想など、文学的文章でいえば、人物・事件、虚構の方法、作者の意図・精神などが融け込んでいる。その構造体の任意の要素あるいは全体に即して私はここをこう読む、こう考えるということを表明・表現していく。学習者が習熟していない段階では、授業者が構造体の任意の要素あるいは全体のポイントにくさびを打ち込んでどう考えるかを表明・表現させていく。その表現(自分の考え)を他者と交流することによって相互に評価、批評し、高めていくのである。

一つの構造体の論述(叙述)・構成・要旨(主題)と類似的なもの、対比的なものを比べ読みしたり(教材開発)、一つの構造体が提示している世界の捉え方、表現の仕方を模して、あるいは発展して別の構造体を創ったりする学習も可能である。

「新たな学び」のための単元構成

「単元」を当該学年のその段階で学習者につけたい力を実現するための学習指導の一まとまりと規定する。単元と単元の間の相互連関は全学年にわたって考えることであるが、少なくとも当該学年での前単元――本単元――次単元間の有機的なつながりを保つ必要がある。

単元の学習指導過程について、いわゆる三読法の実践に即していえば、第一次(通読)――第二次(精読)――第三次(味読)の恒常的な繰り返しの一方で、さまざまな工夫が加えられてきた。今日求められる工夫の根幹は習得しつつある能力(知識・技能)を活用によって強化する「言語活動」の設定である。その「企図する言語活動」は、話すこと・聞くことの言語活動、書くことの言語活動、当該とは別の読むことの言語活動の組み合わせによって構成される。

学習指導過程としては、通読・精読・味読の後に「企図する言語活動」をおく場合、木に竹を接ぐことになりがちなので、三読の過程に「企図する言語活動」を融け込ませるようにしたい。その場合、「企図する言語活動」の内容によって、「通読」前のありかた(意欲づけ)や「通読」に「精読」の要素(問いの意識や関係把握)を編入するなどの工夫、また、「精読」における段落や場面ごとのきめこまかな読みの時間と学習指導の方法を精選して、文章・作品のポイントとなる部分を見いだし、その論述や形象の相関関係から全文をおさえる読みを目ざすこと、さらに、「味読」の代わりに「企図する言語活動」のまとめの活動を行うなどの改善が求められる。

いずれにしても通読・精読・味読の言語活動と「企図する言語活動」との相互作用によって、能力(知識・技能)の習得・活用のサイクルは上昇していくのである。

本書『「新たな学び」を支える国語の授業 上』は、上述の趣旨を受け、第Ⅰ部として「表現」の授業に焦点をあて、理論と実践を追究したものである。

平成25年3月1日 国語教育探究の会代表・兵庫教育大学名誉教授  中洌 正堯

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