三省堂 発行書籍
授業を豊かにする28の知恵

大切なのは、一人一人の子どもにまっすぐ向き合い、一つ一つの課題に真摯に対応しつづけること。豊かな授業をつくるノウハウを、豊富な実例を挙げて解説します。PISAや情報教育など現代の課題にも言及。

  • 白井達夫
  • 2010年 1月 10日 発行
  • 定価 1,800円+税
  • A5判  128頁  ISBNコード 978-4-385-36461-2

三省堂WebShopで購入

著者紹介

白井達夫

横浜国立大学教育人間科学部非常勤講師
川崎市立小学校教諭、横浜国立大学附属横浜小学校副校長、川崎市総合教育センター教科教育研究室長、川崎市立宮崎小学校校長、川崎市立中原小学校校長などを経て現職。著書に『小学校新教育課程 国語科の指導計画作成と授業づくり』(共著・明治図書)、『生きてはたらくことばの力を育てるカリキュラムの創造』(共著・三省堂)、『「チーム学校」を創る』(共著・三省堂)。

目次

第1部  子どもの見方を深める
 1 学び続ける教師に
 2 よさを生かす
 3 ハードルを置く
 4 「ずれ」を生かす
 5 学習課題と当事者意識
 6 評価は対話
 7 自己評価力育成のカギは教師の評価
 8 相互評価は自分の学習を見直す鏡
 9 通知表の充実のために
 10 聞く力を育てる方程式

第2部  授業の技術を高める
 11 学習態度を育てるために
 12 教師の言葉
 13 教師の立つ位置
 14 机間指導中に行うべきこと
 15 挙手がなくても指名する
 16 板書の三機能
 17 ノート指導の大切さ
 18 掲示物は飾りではない
 19 グループ学習と全体学習
 20 見学学習と課題意識
 21 地域人材の活用

第3部  これからの教育を考える
 22 教科の縦割り指導を見直す
 23 PISA型読解力と言語活動の充実
 24 習得と活用を考える
 25 総合的な学習の時間に期待する
 26 情報を批評する教育の大切さ
 27 読書のススメ
 28 授業を作る

はじめに

「白井さん、あれは授業ではありませんね。」

 新任の時、初めての授業研究が終わっての帰り道、歩道橋の上で当時の校長であったH先生からいただいた言葉です。
自分なりにがんばったつもりであり、授業後の研究協議会でも厳しい意見をいただかなかっただけにショックでした。

 「模造紙何枚もの資料を作ったのに…。」
「睡眠時間を削って指導案を書いたのに…。」

 今考えれば、H先生の言葉がよくわかります。
せっかく作ったからといってすべての資料を広げれば、子どもたちは混乱するばかりです。授業は私の努力を見せる場ではありません。また、睡眠不足は私の準備不足から来たもので、子どものせいではありません。むしろ、そんな状態で授業をしたことを子どもたちに謝らなければならないところです。

 つまり主語がすべて自分であって、子どもたちが主語になっていないのです。
当時はそのことに気付きませんでしたが、この厳しい言葉が、授業について考える出発点になったのは確かです。

 それから三十数年、すでに私の年齢は当時のH先生を越えました。その間ずっと、私にとっての興味は授業であり続けました。今でも時々、クラスをお借りして授業をしては、相も変わらず同じセリフをつぶやいています。

 「授業は難しいなあ。」
しかし一方で、こうも思います。
「難しいからこそ、授業は面白い。」

 幸いにして、私はたくさんの授業を見せていただく機会に恵まれました。今までに見せていただいた授業の数は、二千本近くになるのではないでしょうか。これだけの数の授業を見せていただき、また、数多くの研究協議会にも参加させていただいているのですから、少しは学んだこともあるはずです。それらを伝えることが先生方の授業作りのヒントになるのではないかと考え、なるべくわかりやすく、時には具体的なエピソードなども添えながら書き残しておこうと考えたのです。

 本書は三部構成になっています。

 第1部「子どもの見方を深める」では、私が講演の中で話したり文章に書いたりしてきたものを中心に、十の項目にまとめました。私の授業観、子ども観が一番色濃く出ているのではないかと思います。私は若いころからずっと評価研究に縁が深かったので、評価に関する項目が半数近くになっています。

 第2部「授業の技術を高める」では、先輩諸氏から教えていただいたことを軸に、私が考えたことや工夫したことなどを加えて十一の項目にまとめてみました。「教育再生」などという失礼な掛け声の中で、先輩たちが残してくださった貴重な財産が失われていってしまうことを危惧する気持ちも、これをまとめた動機の一つです。「技術」という言葉にテクニック的な響きを感じる方もおられるでしょうが、私は職人が自らの技を練磨していくというイメージで使っています。

 第3部「これからの教育を考える」では、新しい学習指導要領のもと、これからの教育をどう作っていくべきかについて考えたことを、七つの項目にまとめました。私が現在勤務している川崎市立中原小学校は、各教科等における言語活動の充実についての研究に取り組んでおり、三省堂から『生きてはたらくことばの力を育てるカリキュラムの創造』というタイトルの本も出版しております。その研究成果も盛り込んだつもりです。

 教師の仕事は、授業の中で子どもたち一人一人のよさを輝かせることだと思います。そして、子どもたち一人一人に学ぶ喜びを実感させることだと思い
ます。

 本書が、その一助になれば幸いです。
平成二一年一二月

同じカテゴリの書籍

ページトップ