
中野 峻佑 (大田区立雪谷中学校)
2026年09月25日
1 はじめに
学習効果測定や領域別テスト、定期考査など、生徒の理解度を測るテストの結果を見ると、毎回と言ってよいほど、「書く力」を伸ばせていないことを痛感していました。しかしながら、指導に課題を抱えている「書く活動」を帯活動として継続的に行っていくことは、私にとって大きな壁でした。一番の理由は「その場で生徒全員の添削を行うことが難しい」こと。
書く力を伸長させるために、最初は生徒用タブレットにプリインストールされているアプリケーション(大まかな自動添削機能付き)を利用して英作文の練習をすることもありましたが、次第にChat GPTやGoogle Geminiなど、インターネットを介して誰でも簡単に使えるAIを利用し始めました(生徒は私よりもAIについて詳しいので、抵抗感や苦労はありませんでした)。
AI時代の到来により、授業で取り入れることのできる「書く活動」の幅が画期的に広がったと感じています。「書くだけに止めてはもったいないので、せっかくだから4技能すべてを含めた活動にしてみよう」と考えたのが、これから紹介する帯活動のきっかけでした。
帯活動というと、どうしても5分から長くても10分くらい、というイメージだと思いますが、私の場合は、長い時で25分ほど、この活動を行っていました(もはや帯活動とは呼べないかもしれませんね(笑))。しかし、英作文に対しての苦手意識はもちろん、英語を発することへの抵抗感の払拭、即興力の伸長、自然なリアクションの語彙など、費やす時間に十分見合う成果が、すべての生徒に見え始めました。結果の一例として、英検取得率では準2級以上が学年の37%、3級以上では78%(ともに中3・2学期終了時)と、意欲的に取り組んだ成果が英語の習熟度向上にもつながったのかもしれません(もちろん生徒自身の家庭学習や英会話学校、学習塾の先生方の力が大きいところです)。以下に、この活動を取り入れた経緯やいくつかのパターンを書いてみたいと思います。少しでも参考になれば幸いです。
2 中1から中3へ、3年計画の段階的なレベルアップ
【中学1年:素地】
(1)英語発話のハードルを下げる。言語とは、間違っても全く問題がなく、伝える意志こそが大切なことに気付かせる。
(2)基本文型を定着させる。(ときに古式と呼ばれるような指導も行っています)
(3)教え合いの風土を定着させる。基本的に習熟度の近い生徒同士を組ませるが、ペアワークのレベルが高い教材の場合には英語が得意な生徒と苦手な生徒とを組ませることもある。
【中学2年:基礎】
○2学期後半(11月~)以降にペアでのPicture Description→Questions & Answersの活動を取り入れ、相互間コミュニケーションを行う。なお、Questionsは自分で考える。(ペアでアドバイスを与え合い、質問や回答、反応の質を上げていく) 質問は極力5W1Hを用いるが、最初はYes/Noの質問も許容する。
[テーマ]
日本の伝統文化や観光地、建造物、または他教科で扱っている教材など、生徒にとって身近なものほどよい。
[Picture Descriptionの流れ]
①画像を2つ投影し(電子黒板がなければ掲示)、ペアでじゃんけんを行い、どちらの画像を説明するかを決定する。(決め方は何でもよい)
②準備時間を20秒間与える。★簡単な英語を用いて説明することを指導する。
③教師が“Which of the pictures do you think is easier?” などの質問をし、生徒が簡単と感じている方から発表を開始させる。
④ペアでのフィードバック1分間 ★この時間だけ日本語の使用を認める。
⑤教員からのフィードバック3分以内程度。(Tips for Talking) 良い発表を取り上げたり、便利で役に立つ表現を紹介したりする。★既習文法や目標文法にこだわらない。特に、分詞や関係詞などの修飾句(節)は必要に応じて簡単に紹介する。
[投影/掲示するProcedure]
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①Preparation…………20 sec ②Presentation…………20 sec Talk in EASY and SIMPLE English! ③Q&A………………… 20 sec ④Feedback……………1 min |
【中学3年:発展】(書く活動スタート)
⓪クラスの習熟度(少人数展開基礎クラスなど)によっては、2年次のPicture Descriptionを継続する。
①「帯活動としての英作文(PCでタイピング)→言語活動(ディベート/ディスカッション)」を始める。ただし、あくまでもターゲットはディベートやディスカッションではなく「書くことと即興的なミニ会話」であるので、会話の時間は短めに設定。
★私なりのテーマ選びのポイントは「日本語で考えても楽しい(本気で考えることができる)もの」。
★いわゆる一般的なまじめっぽいテーマでない方がよい。
★「試験で満点を取る英作文」ではなく「書いていて、読んでいておもしろい英作文」を目指すように指導する。
→試験のことを考えると、「工夫」をすることを止め、文章構成や表現がワンパターンになりがち。自由に考えることによって文章構成力や思考力を培う。
★英語が苦手な生徒は日本語で作文するところから始める。
→英作文の力を伸長させるには文章構成力から伸ばすべきだと考えるため。文の羅列ではなく、一貫した文章づくりにこだわる。
→私自身は、初回は全員日本語で書かせた。「日本語と英語の思考・表現レベルを合わせましょう。」
[テーマ選びの例]
○2つの相反する画像(プール/海など)を提示し、ペアでどちらか1つを選ぶ。テーマの発問から自分たちで予測する/教師の発問をディクテーション(タイピング)する。
例)Which is more comfortable, living in the countryside or in the city?
○1つの発問に対してYes/Noどちらかの立場を選ぶ。
例)Do you think that children should go to juku to study?
○ディスカッション型
例)What is one thing that children should do during childhood?
[英作文→言語活動→Brush Up(AI活用)の流れ]
⓪テーマと単語制限(上限は基本的になし。基礎レベルでは20-30語以上、発展レベルでは45-50語以上程度)を提示する。(発展的な力をもつクラスではテーマを自分たちで考えさせるのもよい。ただし時間は長く取らない)
①Writing(Typing)5分間。★辞書(機能)は使用しない。分からない単語は日本語(ひらがなやローマ字など)で書かせる
②Presentation(PCを見ながらでよい) → Q&A(このQ&Aが実質のMini-Debate/Discussionになる)2分間。
③ペアでPCを交換して文法や内容の相互チェック1分間。校正は色を変えて打ち込ませる。
④フィードバック1分間。★唯一日本語での会話ができる時間。
⑤AIに添削やアドバイスを受ける。(コピー&ペーストや文字数カウントなどのショートカットキーも同時に指導して、できる限り時間を効率的に使わせる)
★AIとのchatは英語でも、日本語でもよいとする。AIには必ず「文法(スペルも含む)・内容」の2つの観点をチェックしてもらうように指導する。“Please check my English essay for grammar and content.”などの文のヒントは最初に与える。(AIとの最初の会話は英語が望ましく、AIのアドバイスが分からなくなったら日本語訳を添えてもらうなど、できる限り英語でトライさせたい)
⑥書き直し3分間。フィードバックを基にもう一度書いてみる。コピー&ペーストは使わない。(生徒は早く打つ必要性を強く感じるので、自然とタイピングの速度は上がる(数か月で驚くほど速くなります))
⑦教員からのフィードバック(Tips for Writing)。2年次のフィードバックと基本的には同じ扱い。場合によっては教師のモデル文章なども見せる。発展レベルには未習語・表現・文法も積極的に伝えていく。
→自分が必要な文法は繰り返し使うことで、より自然に覚えられる可能性が高い。
[投影/掲示するProcedure]
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①Writing…………………………5 mins ②Presentation, Q&A……………2 mins ③Grammar check………………1 min ④Feedback………………………1 min ⑤Chatting with AI (check)……5 mins ⑥Rewriting………………………3 mins |
4 おわりに
最後までお読みいただき、ありがとうございます。「こんな時間、取っていられない」と感じられた方が多いかもしれません。毎回行わずとも、週に1回や2回、やってみることもできます。一例として、ほんの少しでも取り入れていただける部分があればうれしいです。
私は、生徒一人一人にPCが配付されると知ったときは「使わせられるかな…」とか「授業はやっぱり黒板だろう。」などと思っていましたが、正確さと、何よりもスピード、そして個別最適化、という面から見ると、AIの存在はとても大きなものであり、そういった場面で活用しない手はないと、今では感じております。
もっともっと素晴らしい活用をしていらっしゃる先生方がたくさんいらっしゃると思います。いろいろな先生方の指導方法を知り、学びながら、自分でも研鑽を積んでいきたいと思います。ありがとうございました。
【生徒の作文例】
[テーマ]
“What is one thing that we should do to understand each other?”
[生徒の作文]
I think we should talk a lot. Communication is necessary for us to understand each other. When we meet someone for the first time, we often do greetings. I believe saying hello with a smile is the first step to make a good conversation and a relationship. When a good conversation starts, I’m sure we must know each other well.
中野 峻佑 なかの・しゅんすけ (大田区立雪谷中学校)
大田区立雪谷中学校主任教諭。授業は基本的にペアの形(学び合い)で展開。積極的なチャレンジ、ミスを恐れずに英語を発すること、それらを認め合う姿勢を培うことを目標に、自分なりの英語で伝えるための「引き出し」を増やすような授業を目指している。生徒の「英語の授業、楽しいじゃん!」は「書く・話す」のアウトプット学習が鍵を握っていると信じて授業の可能性を日々探している。

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