ICT 実践事例紹介

ICT 実践事例紹介

ICTが開く新たな「扉」

  1. 印刷する

中学校英語

  1. その他
  2. 学習者用デジタル教科書+収録音声付き

山蔭 理恵 (岩手大学教育学部附属中学校)

2023年02月06日

1.はじめに

 本校では、令和3年4月から1人1台の学習用iPadを生徒および教員に貸与し、本格的な活用をはじめた。2年目を迎え、各生徒、教員のICTスキルの向上に加え、デジタル教科書をはじめとする各種デジタル教材のアップデートがなされたことで、さらに活用しやすい環境が整った。この度、このような形で機会をいただいたことから、本校英語科におけるICT活用の一端をご紹介させていただく。

 

2.QRコンテンツの活用 個別最適な学び~授業も家庭学習も~

 

 

 NEW CROWNの特長の一つとして、QRコードからアクセスできるデータの豊富さ(量の多さと質の高さ)が挙げられる。教科書の新出語句や本文の音声だけでなく、GET等で用いる場面・状況を表すアニメーションや、発音記号別にそのときの口の形、舌の動き、息の流れなどを表す「発音図鑑」の3DCGアニメーション(1・2年生教科書のみ)など多岐に渡る。デジタル教科書ではそれぞれのデータに画面タップでアクセスできるようになり、紙の教科書よりさらに使い勝手が良くなった。例えば、以下のような活用が可能である。

 

 

① ターゲットセンテンスの習得と復習

 

 

 GET右ページにあるDrillでは、そのページで習得を目指す表現を繰り返し練習する。左ページのPOINTを参考にしながら自力で表現(話す・書く)した文の正確さを、音声を再生して確かめたり、音声を再生しながらその文のディクテーションに取り組んだりすることができる。授業で学んだ直後に宿題として出したり、定期テストの前後に復習させたりなど、1人1台端末が自由に使えるからこそ、活用のタイミングも選択できる。

 

 

② 音読・暗唱技能の向上

 

 

 他の事例でも紹介されている通り、デジタル教科書と音読活動は相性が良い。教科書の各ページでは、新出語句と本文の音声が再生できるため、自分が苦手な発音や音の繋がりなどに特化して繰り返し練習できる。リピーティングやシャドーイング、オーバーラッピングなど、音読の方法や効果を生徒と共有した上で取り組ませたい。

 

 また、QRコードから本文のアニメーションにアクセスすることで、言葉が使われている場面・状況の具体のイメージをもちながら練習することが可能となる。映像を流しながらオーバーラッピングをしたり、音声をミュートにし、映像に合わせて暗唱したりすることもできる。

 

 

3.各種ソフト・アプリの活用

(1) 授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」

 

 授業におけるICTの活用によりパフォーマンスの蓄積や共有が容易になったことは、英語科にとって大きな利点である。中でも、「ロイロノート・スクール」は、文書作成ソフト、表計算ソフト、プレゼンテーションソフト、動画編集ソフトなどで作成した多種多様な形式の成果物が共有できる。詳細は紙面の都合上割愛するが、授業の中では以下のようなものを日常的に作成、共有している。

 

 

① CM

 

 

 交流歴のあるタイの学校に向けて地域の魅力紹介CMを作成した。本校では端末を毎日家庭に持ち帰っている。そのため、生徒たちは休日に目当ての風景や建物などを撮影しに出かけたり、自宅で名物料理を作っている様子を撮影したりするなどして各々収集した素材を用いて動画を作成していた。

 

 

② ポスター

 

 

 写真は、授業でdiversityについて「話すこと[やり取り]」の言語活動を行う際に視覚補助資料として作成したポスターである。生徒は、文書作成ソフトやプレゼンテーションソフトなど、使いたいソフトを用いてイメージをまとめていた。

 

 

③ ライティング作品

 

 

 単元等の最後には、まとまりのある文章を書いてライティング作品として蓄積している。3年生Lesson1 Stand By Meでは「お気に入りの歌」、Lesson3 The Story of Sadakoでは、「平和についての意見文」など、教科書題材と関連付けながら表現させている。提出させ共有しておくことで、いつでも参照することができる。

 

 

④ 単元シート

 

 

 

 紙のワークシートでは実現できなかった「立体的な」単元シートで、単元の学習過程を共有している。パフォーマンス映像や作成した資料、作品などをひとまとめに振り返ることができる。

 

 

(2) フォーム作成ツール「Google フォーム」

 

 

 

 アンケート等のフォーム作成ソフトとして知られるGoogle フォームだが、標準機能としてテスト作成ができる。1つ、あるいは複数の答えを選択する形式のテストが適している。(記述式も可能だが、事前に正答記述例を入力しておく必要がある。入力時の全角/半角の違いやスペースの有無などで自動採点が左右されるため要注意。)解答後、即座に採点結果を返却することができるため、生徒は熱の冷めないうちに振り返り、復習を行うことができる。

 

 

4.結びに ~「何のために?」を問い続ける~

 

 

 

 ICTは非常に便利であり、デジタルの作品は見映えも良い。しかし、目的があってこそ効果的に活用できるものであることを忘れてはならない。「とりあえず使ってみる」ことから始まった昨年度。GIGAスクール構想2年目である今年度は「何のために使うのか?」「使うことで何が促進されるのか?」をより一層考えたい。

 

効果的に活用するために押さえておきたいこと

 

 

 

 

 

 

 本校英語科では、4月の教科オリエンテーションの中で学習用iPadの効果的な活用について生徒と共有し、学期末の授業アンケートで定期的に自己評価をさせている。ICTが開く「扉」は、何も開け閉めのタイミングや程度を教員が一律にコントロールするものではない。生徒自身が思考を働かせ、自らICT活用の場面や手段を取捨選択できる姿を目指すとともに、一生涯に渡って情報や情報技術と程よい距離感で上手に付き合える素地を養いたい。

 

 ICTのCはCommunicationであり、外国語科はコミュニケーションを図る資質・能力の育成を目指す教科である。授業を通して、生徒も教員も一緒になって、目の前の(あるいは通信機器の向こう側の)コミュニケーションの相手を慮り、血が通う、心が通うコミュニケーションを積み重ねていくことが、平和でより良い社会の「扉」を開くことに繋がると信じている。

 

 

 

 

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プロフィール

山蔭 理恵    やまかげ・りえ (岩手大学教育学部附属中学校)

岩手大学教育学部附属中学校教諭。一関市立大東中学校を経て平成29年度から現職。令和3年度全英連山形大会分科会発表者。同校は「いわて学びの改革研究事業」(岩手県教育委員会、岩手県立大学、岩手大学の共同事業)研究主幹校としてICT活用を推進。令和4年5月には「主体的・対話的で深い学び×ICTの効果的な活用」をテーマに研究成果発表会を実施した。

 

バックナンバー

    

ICTが開く新たな「扉」

2023年02月06日
山蔭 理恵

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デジタル教科書やアプリを活用した指導の実際

2022年06月23日
宿口 信子

詳細はこちら

    

学習者用デジタル教科書を効果的に活用した授業づくり

2022年04月19日
伊勢原市立成瀬中学校 英語科教員一同

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ICTを効果的に活用した授業づくりの提案【No.2】

2022年02月25日
唐澤 博

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指導者用デジタル教科書と学習者用デジタル教科書の活用(使い分け)について

2021年11月26日
堂本 佳樹

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