1951年、千葉県生まれ。早稲田大学卒業。早稲田大学系属早稲田実業学校中・高等部教諭・教頭を経て、現在早稲田大学教育・総合科学学術院教授。2004年から4年間、早稲田大学系属早稲田実業学校初等部校長を兼任。専攻は国語教育で、主にサブカルチャーを活用した国語科の教材開発と授業開発に関する研究と実践を進めている。博士(教育学)。
主な著書に、『授業を創る─【挑発】する国語教育』(三省堂)、『国語教育の戦略』(東洋館出版社)、『国語科授業構想の展開』(三省堂)、『声の復権と国語教育の活性化』(明治図書)、『国語科の教材・授業開発論─魅力ある言語活動のイノベーション』(東洋館出版社)、『新聞で鍛える国語力』(朝日新聞出版)、『「サブカル×国語」で読解力を育む』(岩波書店)、『国語教育を楽しむ』(学文社)、共著に『教師教育の課題と展望─再び、大学における教師教育について』(学文社)、編著に『魅力ある言語活動の開発事典』(東京法令出版)、『明日の授業をどう創るか─学習者の「いま、ここ」を見つめる国語教育』(三省堂)、『実践国語科教育法─「楽しく、力のつく」授業の創造』(学文社)、『早稲田大学と国語教育─学会50年の歴史と展望をもとに』(学文社)、共編著に『高等学校国語科 新科目編成とこれからの授業づくり』(東洋館出版社)などがある。
はじめに
総論
「境界線上の教材」による授業改革
─「楽しく、力のつく」教材開発と授業開発のために─
町田 守弘
第1章 「マンガ・絵本・写真」を使った授業提案
のび太といっしょに問題解決学習
[教材名] 『ドラえもん』第28 巻
岸 圭介
4 コマ漫画の音読で育む語彙力・言語表現力
[教材名] オリジナル4 コマ漫画
小西 理恵
マンガの名ゼリフ、キャラクターになりきって表現しよう
[教材名] 『マンガ「名ゼリフ」大全』
内田 剛
マンガを比較して「語り」を読み解こう
[教材名] 『コミック 文体練習』
加瀬 幸志朗
4 コマ漫画の展開を考えよう
[教材名] 『火星人と土星人』
神田 恵美子
反転ワードハンティング
[教材名] 『大家さんと僕』
宮﨑 春菜
ストーリーマンガの表現の工夫を読み解こう
[教材名] 『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』第10 巻
山田 範子
マンガをノベライズ(小説化)してみよう
[教材名] 『鬼滅の刃1 残酷』
金子 泰子
4コマ漫画にツッコミを入れて哲学しよう
[教材名] 『4 コマ哲学教室』
光野 公司郎
ことわざから見る日常の風景─現代版ことわざの創作─
[教材名] 『ことわざ絵本』
甲斐 伊織
「サンタクロース」で育む批判的思考力
[教材名] 『サンタのおばさん』
李 軍
「私の夢の国」を紹介しよう
[教材名] オリジナル写真
王 培
短歌と写真を組み合わせる─「うたらば」創作委員会─
[教材名] 「うたらば」
吉川 七菜子
第2章 「映像」を使った授業提案
エリンの世界を情景描写から読み取ろう
[教材名]「獣の奏者エリン」
小見 紗永子
「スーパー戦隊シリーズ」を企画しよう
[教材名] 「スーパー戦隊シリーズ」
小峰 梓
「耳すま」の映像と字幕から鍛える日本語の力
[教材名] 「耳をすませば」
石井 明子
映像の表現効果を「読む」
[教材名] 「父と暮せば」
後藤 厚
星新一のショートショートを「見て」「読んで」味わおう
[教材名] 「生活維持省」
深澤 克俊
ジャミラの変身を読み取る
[教材名] 「ウルトラマン」第23 話「故郷は地球」
市川 涼
ミュージカルの楽曲の歌詞を創作しよう
[教材名] 「宝塚グランドロマン『新源氏物語』」
江口 千晶
「グッド・バイ」に終焉を
[教材名] 「グッド・バイ」
岡田 和樹
比べることで考える─単元『詩歌の世界』
[教材名] 「言の葉の庭」/『小説 言の葉の庭』/「Rain」
加藤 晴奈
「かぐや姫の物語」と『竹取物語』の比較読み
[教材名] 「かぐや姫の物語」/「天の羽衣」(『竹取物語』)
金田 富起子
「13 人目の陪審員」として、議論を小説化してみよう
[教材名] 「12 人の優しい日本人」
小林 賢太郎
アニメーションを“読み”、“刺さる”CM をつくろう
[教材名] 「秒速5センチメートル」/「One more time, One more chance」
中川 甲斐
身体表現を言語化しよう─戯曲と舞台のはざまで
[教材名] 『朝日のような夕日をつれて 21 世紀版』
柳本 彩子
映画を用いてメディア・リテラシー力をつけよう
[教材名] 「下街ろまん」
園部 泉子
第3章 「音楽」を使った授業提案
「車輪の唄」の歌詞を読む
[教材名] 「車輪の唄」
荒木 智
ミュージックビデオを読み解く
[教材名] 「結証」
坂本 晃洸
「マリーゴールド」で詠む相聞歌
[教材名] 「マリーゴールド」
齊藤 真子
「パプリカ」をいろいろな視点で読み解こう
[教材名] 「パプリカ」
坂本 邦仁
和歌とJ-POP の交差を求めて
[教材名] 「糸」「狼になりたい」
中桐 由
楽曲から学ぶ物語の重層性
[教材名] 「ピアノ泥棒」
平沼 一翔
現代と重なる「レモン」のイメージ
[教材名] 「Lemon」
大谷 誓也
J-POP からショートストーリーを作ろう
[教材名] 「ライオン(2018 New Ver.)」
櫻井 礼子
歌詞の精読で文学テクストの「読み」をつくる
[教材名] 「太陽」
田中 慎一朗
現実と虚構の合間で手紙をしたためよう
[教材名] 「桜の季節」
永瀬 恵子
第4章 「 その他(ソーシャルメディア・ゲーム・お笑いなど)」を使った 授業提案
YouTuber に学ぶプレゼンテーション能力
[教材名] YouTube チャンネル「中田敦彦のYouTube 大学」
金巻 秀樹
「YouTube」動画をモデルに、録画動画で表現してみよう
[教材名] 動画共有サイトYouTube
遠山 大樹
映画レビューを活用した「読むこと」の授業
[教材名] 動画配信サービス・映画レビューサイト
森 響平
「どうぶつの森」でプレゼンテーション
[教材名] Nintendo Switch「あつまれ どうぶつの森」
大森 麻美
J-POP かるた「狩歌」で詩を創作しよう
[教材名] J-POP かるた「狩歌」
橘 美咲
漫才(分析)入門編!
[教材名] かまいたち「UFJ・USJ 漫才」
八木 翔平
おわりに
出典一覧
執筆者一覧
早稲田大学大学院教育学研究科に町田守弘が担当する国語教育の研究室が設置されたのは、2002年4月のことでした。研究室が出発した当初から、いわゆるストレートマスターをはじめ現職の教員など、様々な立場の方々が研究室に集いました。この構成員の多様さは、町田研究室の一つの特色になっていると思います。現職教員の担当する校種も小学校から大学までの広い範囲に及び、中国からの留学生も複数在籍しました。
早稲田大学大学院の国語教育研究室には2021年現在、幸田国広教授が担当されている研究室と町田が担当する研究室があります。幸田研究室が主に国語教育の理論研究と歴史研究を中心に研究を展開しているのに対して、町田研究室は実践研究および教材開発・授業開発の研究を中心としている点にそれぞれの特色があります。
修士課程1年、修士課程2年、そして博士後期課程それぞれのゼミが実施されますが、院生は可能な限りすべてのゼミに参加して、研究を深めることを推奨しています。春学期と秋学期の学期末には、「合同発表会」と称して、研究室関係者全員で個々の院生の研究内容の検討と研究の支援をするという場面を設定することにしました。また原則として毎年夏休み期間に、2泊3日の日程で研究室のゼミ合宿が実施されました。最初の数年は、東郷克美教授(当時)が担当された日本近代文学の研究室と合同で実施し、その後は学部学生の国語教育ゼミと合同で実施するようになったものです。
町田研究室は2011年に設立10周年という一つの節目を迎えて、『明日の授業をどう創るか─学習者の「いま、ここ」を見つめる国語教育』というタイトルの単行本を三省堂から刊行しました。このタイトルの「明日の授業をどう創るか」という問いに答えることこそが、国語教育研究の主要な目標だと思います。研究室で学んだメンバーが小学校から大学までの広い校種に関わっているという特色を活かして、それぞれの校種ごとに論文・提言をまとめた本になりました。
そして2021年に、研究室は設立20 周年を迎えることになりました。2022年3月をもって町田は早稲田大学を定年退職いたします。そのような年に前著に続く2 冊目の研究の総括として本書を再度三省堂から刊行できることは、とても幸せなことと受け止めております。
町田自身担当する授業において、常に「楽しく、力のつく」という目標を掲げてきました。学習者の興味・関心を喚起するために、彼らの身近な場所にあるサブカルチャーに目を向けたことは、町田研究室の一つの特色といえるでしょう。学校との親和性に乏しく、教材にはなりにくい素材を積極的に取り上げて、国語科の教材となるかならないかの境界線上に位置づけ、扱いを工夫して教材として成立させることを目指してきました。
この研究の方向性を、町田研究室の一つの特質として捉えることができるはずです。実践を重視して、具体的な実践に結びつく構想を明確に発信したいという思いから、これまで研究を続けてまいりました。確かな実践から帰納的に導き出された理論を大切にしたいと思います。本書はそのような研究室の研究成果を形にしたものです。本書を手にされた読者の皆さんが、「明日の授業をどう創るか」という問いに向き合って、何らかの答えを出していただくことができれば、これに過ぎる喜びはありません。
この20年間、研究室にご縁があったメンバーに声をかけて、具体的な教材開発と授業開発の成果をまとめてもらいました。そして定例のゼミや合同発表会のときには、発表を担当した院生の研究について、町田は必ず何らかのコメントを述べることにしていました。そこで本書に寄せられた様々な提案に対しても、ひとことずつコメントをさせていただくことにしたのです。
終わりとはまた一つの新たな始まりでもある、そう思っています。本書がその新たな始まりに向けての可能性を拓いてくれることを心から期待しております。貴重な提案を寄せていただいた皆さん、編集に携わってくださった内田剛、江口千晶、甲斐伊織、岸圭介、坂本晃洸の皆さんと、特に本書の刊行に多大なご尽力をいただいた三省堂の片岡明奈さんと山田桂吾さん、そして本書の読者の皆さんを含む研究室にご縁のあったすべての皆さんに、深甚なる謝意をお伝えいたします。
2021年7月5日
町田 守弘
●正誤訂正表
本書の記述に誤りがございました。お詫びして訂正いたします。
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