授業レポートプラス

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教科書とつながる曲紹介活動
―「伝えたい」を生み出すバックワード・デザインの授業―

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中学校英語

岩田 慶子 (神戸市立星陵台中学校)

2026年10月07日

1 「最後に何をするか」を先に示す

 中学3年生の英語の授業で、『NEW CROWN English Series 3』Lesson 2 “The Power of Music”を扱った。今回の単元では、文法や教科書本文の学習を始める前に、単元のゴールを生徒たちに提示した。それは、「ALTや友達が聞いてみたいと思えるような英語の曲を、自分がどんな気持ちの時に聞くかを交えて紹介しよう」というものである。最初にゴールを明確に示し、そこから逆算して日々の授業を組み立てる、バックワード・デザインを意識して単元を進めた。

 このようなゴールを設定したのは、英語の学習を「教科書の英文を理解すること」や「文法問題に正解すること」で終わらせたくなかったからである。生徒たちにとって音楽は身近な存在であり、自分の好きな曲や、その曲を聞いたときの気持ちなら、英語が得意かどうかにかかわらず、自分なりの考えを持つことができる。「普段英語の曲を聞かない」という生徒たちにとっても、好きなJ-popの英語バージョンを検索して聞いてみるなど、新しい世界が広がった。

 

2 「みんなで歌う」を仕掛けにする

 生徒のさらにエンゲージメントを高めるために、各クラスで曲紹介のコンテストを行い、最優秀賞に選ばれた曲は、翌月の英語の授業の冒頭で毎回、クラス全員で歌うことにした。「自分たちが選んだ曲が、これからみんなの歌になる」という仕掛けによって、単元の最後の発表が一度きりの活動ではなく、その後の授業にもつながるものになると考えた。生徒たちにとっても、「せっかくならみんなに歌ってほしい」「自分たちの曲を選んでもらいたい」という思いが、活動に取り組むモチベーションになった。

 

3 教科書の中から「使える表現」を見つける

 授業では、教科書本文の学習を大切にした。今回の単元では、本文の中で登場人物たちも、自分たちが演奏する曲の候補について話し合っている。そこで、生徒たちには本文の内容を理解するだけでなく、「自分たちの曲紹介に使えそうな表現はないか」という視点を持たせた。登場人物が曲について自分の考えを伝えたり、相手の意見を聞いたりする場面では、「これは自分たちの発表でも使えそうだ」と気付かせる。そして、本文に出てきた表現をそのまま覚えるのではなく、自分が紹介したい曲に置き換えて使ってみる。このように、教科書の英文を「読むための英文」だけではなく、「自分が英語を使うためのモデル」として扱った。

 この点は、今回の実践で特に大切にしたことである。最終的な曲紹介プレゼンテーションは、単元の最後に突然現れる独立した活動ではない。毎日の教科書本文の学習、そこで見つけた表現、それを使って自分のことを伝える練習が、少しずつ最後の発表につながっているのである。

 生徒たちにとっても、「この表現、教科書でやった!」という経験が、自分たちの英語を支える手がかりになった。教科書で出会った表現を、実際に自分たちの伝えたい内容の中で使ってみることで、学習した英語が「自分たちの言葉」へと変わっていった。

 

4 「自分にしか伝えられないこと」と「即興のやり取り」を大切に

 発表内容を考える際には、単に曲名や歌手を紹介するのではなく、「自分はどんな気持ちのときにその曲を聞くのか」「なぜその曲を聞いてほしいのか」という、自分自身の具体的な経験や思いを大切にした。テスト返しや部活動の試合で悔しかった時…具体的な経験は、自分にしか語れないオリジナル・エピソードでありつつ、「自分も似たような経験があるから、気持ちがわかる」と人の共感を呼ぶこともできるのだということを、生徒たちは掴んでいる。

 発表では、生徒たちは原稿を書かず、「マッピング」で整理したキーワードだけを見て文を作って話す。また、英語の正確さだけではなく、「聞いている相手に問いかけ、答えてもらう」という「巻き込み」と「即興のやり取り」も大切にしている。これらは、英語を「正しく言うこと」だけでなく、「相手と気持ちを伝え合うために使うこと」として捉えてほしいという私自身の授業観ともつながっている。

 

5 教科書で「ゴール」と「出発点」を設定

 今回の実践を通して改めて感じたのは、ゴールを先に示すことの大切さである。「最後に何をするのか」が分かっているからこそ、生徒たちは日々の教科書学習の中で、「この表現は最後の活動で使えそうだ」と学びをつなげることができる。そして教師にとっても、教科書本文、文法、語彙、言語活動を一つのゴールに向かって意図的に結び付けることができた。

 教科書で学んだ英語を、自分の好きな曲や自分の気持ちを伝えるために使う。そして、その英語で紹介した曲が、今度はクラスのみんなの歌になる。今回の授業では、教科書での学びが「自分の英語」となり、さらに「みんなで共有する英語」へとつながっていく過程をつくることができた。

 これからも、教科書をゴールにするのではなく、教科書を出発点として、生徒が「英語を使って何かを伝えたい」と思える授業をつくっていきたい。

《今回の評価のルーブリック:生徒と最初に共有、ALTとは英文で共有し、協働で評価》

評価項目 A:基準を十分に上回る B:基準を満たす C:さらなる努力が必要
聞き手に曲を薦めるために、十分な英語を使っている 説明が明確で、誰にとっても「なぜこの曲を聞く価値があるのか」が分かりやすい。 初めて聞く人にも、その曲についておおむね理解してもらえる説明ができている。 聞き手がその曲をよりよく理解できるよう、説明をさらに工夫する必要がある。
歌詞やメロディーについて、自分の経験や理由とともに説明している 歌詞やメロディーについて詳しく説明し、思いのこもった理由や自分自身の経験も伝えている。 歌詞やメロディーについて説明し、その理由や自分の経験も伝えているが、さらに詳しい説明があるとよい。 その曲が自分にとって特別なものである理由が、よりはっきり伝わるように説明する必要がある。
聞き手がその曲を聞いてみたいと思うように工夫している その曲を聞く強い理由を示し、質問なども取り入れて、聞き手が興味を持つように工夫している。 その曲を聞く理由を示し、聞き手を少し巻き込みながら紹介している。 聞き手がその曲を聞いてみたいと思えるよう、さらに工夫する必要がある。

 

《単元後の生徒たちの振り返りより》

 

《生徒のプレゼン・やり取りの文字起こし》

※下記は、上記「振り返り」を書いたそれぞれの生徒のプレゼンややり取りの文字起こしです。文法ミスは訂正してあります。

 

生徒①

生徒① : I recommend “BLUE” by “Yoasobi” for you. First, I’ll introduce “Yoasobi” to you. “Yoasobi” is one of the most popular singers in Japan. “BLUE” is “GUNJO” in Japanese. This song makes me positive and motivated. This song helps me that I can be myself and tells me to do my best for my dreams. When I didn’t get good results, I listened to this song. Have you ever heard it?

相手: Yes, I have! Many times.

生徒①: These are my favorite lyrics: “All I can do now is to have fun using my own unique usage of color.”

 

生徒②

生徒② : (曲を流す) Do you know this song?

相手: Yes!

生徒②: (歌詞の一部を見せる) These are my favorite lyrics. I listen to it sometimes because I like the powerful beats and lyrics. It makes me more positive and confident. If I listen to this song, I can do anything. Listening to this song gives me a kind of confidence. You should check out this song. What song do you like and why? Please tell me.

 

生徒③

生徒③: What do you listen to before you want to be motivated?

相手: I always listen to “Que Sera Sera” by Mrs. Green Apple.

生徒③ : That’s nice.  What do you listen to when you are depressed?

相手: When I am depressed, I always listen to “Let it go”.

生徒③: Nice!  I’ll introduce “Fight Song” by Rachael Platten. This is a cheering song for myself. It makes me motivated. I often listen to it before the game, when I am depressed. This song has saved me so many times. If you have never listened to it, please listen to it. I hope the song will help you cheer you up!

 

生徒④

生徒④: Do you have your music?

相手: Yes, yes.

生徒④ : When you want to lift your mood, you should listen to “Shape of you”. “Shape of you” is by a famous precious musician. It was released in January 2017. I have been listening to this song since 5 five years ago. My soccer coach played it. I got a strong power. Throughout this song, we want to sing and move. You will feel like this person in this song is cheerful because the melody is upbeat and catchy. If you sing this song, you will forget your concerns and nervousness. I hope this song will help you lift your mood better.  What song do you listen to many times? Please tell me your favorite song.

 

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プロフィール

岩田 慶子    いわた・けいこ (神戸市立星陵台中学校)

神戸市外国語大学英米学科卒業。神戸市立星陵台中学校主幹教諭。神戸市教育実践英語グループ幹事長。『リフレクションを学ぶ!リフレクションで学ぶ!』(2021年学事出版)、『令和時代のコミュニケーション力あふれる中学校』(2021年中村堂)などを共著。2026年4月から神戸市外国語大学修士課程中高英語教育コースに入り、現職を続けながら言語活動について研究中。

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