
岩田 将 (吹田市立南千里中学校)
2026年06月10日
1 はじめに
「英語を使って何ができるようになるか」という視点から、コミュニケーション(「やりとり」)中心の授業への転換が求められるようになって久しいですが、そこに生成AIも加わり、教員はより多角的なアプローチが可能になりました。
教員が教室でしかできないことに焦点を当てながら、私の実践をいくつか紹介します。
2 「やりとり」について
「やりとり」中心の授業をするようになって、間違いを恐れずに英語を楽しむ生徒が増えています。
まただただ闇雲にその日のペアと英語を「使って」いればよいのではなく、中間指導などで正確性を担保しつつ、少しずつ「生きた英語へと醸成させる」という流れが主流になっていると感じています。
もちろんその成長曲線には個人差があり、それは一朝一夕では難しく、積み重ねを要するものだと考えています。一方で、そうした表現の定着だけではなく、選抜試験等にも対応するために文法・語彙の定着も生徒たちには必要なことだといえるでしょう。
週4時間の授業を「やりとり」中心にしながら、知識や表現を定着させるために、本校では家庭学習を重視しています。「やりとり」中心の授業は、ひとたび家に帰ると、その練習相手がほぼ皆無となり、学校だけで通用するメソッドになりがちです。そうなってしまうと、授業で使った表現や、教室で聞いた表現を再現する(もしくは思い出す)ことが難しく、使って習得するという点からは少し遠ざかります。
そこで、私は、生徒がICT端末を用いて、授業で学んだ表現を自ら復習することで、「今日の授業のつながりを保ったまま次の授業に臨めるのでは」と考え、端末に会話文形式の問題を配信することにしました。
その会話文は、なるべく彼らが廊下で話したり聞いたりしているような、身近な表現にし、次時での「やりとり」や「スモールトーク」にそれらを織り交ぜ、再度表現を共有することで、「授業→家庭学習→授業」といった連続性を意識するようにしています。
ただ、配信したり、授業で再確認したりするだけでは生徒たちは成果を客観的に知ることはできません。今では学習が持続するよう、定期考査でその成果を見取ることにしています。
3 単語指導について
次に単語の指導について紹介します。
中学1年の間は、単語の綴りと音とのつながりに時間を割いて指導します。その際、単独の英単語の発音との区別をつけるために、その単語が「英文の中でどのように使われるか。」に特に注意して指導します。
下の表は、宿題として生徒に課すものの一例です。
本文中で使用頻度が高いものや、単元の文法にかかわるものは、英英辞典からその意味を選択させることもあります。
上記のどちらにも、中学生にはやや難度が高い単語を含むことがありますが、生徒たち自身が家庭学習するなかで自ら意味を調べるようになりました。
また、英単語単独の発音は、生徒がデジタル教科書や二次元コードを用いて、自宅で練習することも宿題として課しています。
授業では、上に示した例文がどのような場面、状況で使われるかを生徒同士、教室内で共有し、それを基に簡単な「やりとり」を行うため、単語の指導は専ら、「やりとり」のなかで生徒同士がお互い指摘しながら行う、もしくは、机間指導中に気付いたものを全体で共有するという方法をとっています。
「やりとり」中心の授業が活発化すると、生徒たちは英語を日本語と同じように、聞き手の反応を見ながら、使う語彙を微妙に変化させることができるようになり表現にも豊かさが生まれてきたと感じています。
4 定期考査の出題形式について
定期考査は授業の延長線上にあるという考えのもと、授業内や家庭学習で課したものを題材として出題しています。テスト範囲は概ね1か月以上前に公表し、出題する問題を”Formsクイズ“で配信します。早めに範囲を公表することで、生徒が計画的に学習できるようにするためです。
Formsクイズを使うことで、オンライン環境ならではの「いつでもどこでも受験可能」「繰り返し挑戦できる」という手軽さから、家族旅行のスキマ時間に取り組む生徒や、寝る前に取り組むという生徒もいました。
Formsクイズは、無料または低コストで実施でき、出題や採点の効率化が図れます。また、回答数がある程度蓄積されれば、生徒には全体の正答率を開示しています。そうすることで生徒自身が、間違いやすい問題に気づき、間違えた問題を繰り返し学習できるため、理解度が深まり、自身の学びへとつなげられるようになっています。
【配信している課題】
【実際のテスト】
【クラスの解答状況】
ただ、フィードバックにより自分の弱点を客観的に把握できるようにはなりましたが、何度も挑戦できることで緊張感が薄れ、「本番」としての意識が低くなることもあります。そのため、Formsで出題された英文は、自然な会話の中に組み込まれた状態で定期テストに登場させています。
その結果、当初は、生徒数の1.3倍程度の回答数でしたが、生徒同士の口コミもあり、今では回答数が300を超える回(生徒数のおよそ3倍)もあります。
空所補充問題も定期考査に出題します。実際の会話では、聞き手を意識して、言葉を選ぶように、前後の文脈によって空所に入る語もさまざまだと思います。場面や状況に応じて複数回答できる場合もあります。そこで、より適切だと思われる表現を生徒が自然と判断できるように、前後の文脈も併せて出題するようにしています。最近では生徒からは、「この文脈なら、こういうんじゃないか」などの反応があり非常に頼もしく感じています。
最近では、他教科の内容と関連づけることで、英語学習の意味や必要性を実感できるようにしています。たとえば、社会科の授業や、技術家庭科の授業を参観させてもらい、授業内での生徒と教師のやりとりを英語にしたものを出題することもあります。導入当初、生徒たちは他教科で学んだ内容が英語で出題されたことに驚いていましたが、パフォーマンステストなどで使用する語彙を獲得するなど、よい面があることも気づいていました。
5 おわりに
「やりとり」に重きを置いた授業から家庭学習を経由して定期考査につなげる今回の取り組みは、「家庭学習の提示」という面において、依然として教師主導の側面が強いといえます。
しかしながら、教師が多様な「学び方のカタログ」を提示することで、生徒自身が自分の特性に合った学び方を選択できるようになります。はじめはとりあえず取り組んでいた方法が、いつの間にか自分に合った学び方へと昇華しているかもしれません。こうした経験は将来的に、自分に合った学習法を模索・調整する「学習の個性化への準備」、ひいては「自律した学習者への入り口」となりうると考えています。
岩田 将 いわた・まさる (吹田市立南千里中学校)
現大阪府吹田市英語コーディネータ兼指導教諭として、「教室を海外に」を信条に、オーソドックスな英語表現だけでなく、場面・状況に応じた口語表現も授業に取り入れる。
生成AIなどのICTを通じて、生徒自身が、正確さを追求する厳しさと、間違いを笑い飛ばす寛容さをもった自律学習者となるよう奮闘中。

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