ICT 実践事例紹介

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Microsoft Formsを活用したOutputに対するフィードバック

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高等学校英語

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矢島 哲也 (東京都立多摩科学技術高等学校)

2023年11月20日

 本校は、未来の科学者の卵を育成するために創設された専門高校で、現在14年目になる。研究や探究が教育活動の根幹に位置付けられ、研究者の素養として求められる基礎力・応用力・創造力を生徒が日々各教科で鍛えている。                             

 

 英語科では、教科指導の重点(別表1)にあるように、「プレゼンテーション力の向上」が重点課題として掲げられている。私が担当する「論理・表現Ⅰ」では各課のまとめとして、トピックに基づくプレゼンテーションを全生徒が行い、それらを生徒やJETを含めた教員が評価することにしている。本校は35名学級で、1クラス2展開でこの授業を行っている。少人数授業ということで、個々の生徒の指導を丁寧に行うことができる。

 

 

別表1

 

 ここでは、最近の授業における実践例を紹介したい。使用する教科書「CROWN論理表現Ⅰ」では、様々なテーマのプレゼンテーションが課末に用意されている。本校では、2学期が始まってすぐに、ワークシート(資料1)を提出し、JETを含めた教員が添削を行う。ここでは、本人達の表現を尊重して、あまり抜本的に添削しない(助言は講評を含めて最後にJETが行う)

 

資料1

 

 プレゼンテーションは、生徒がタブレット上のスライドを使いながら進める。私が担当するクラスでは、marine pollutionやmicroplastics、deforestationやclimate changeなどの環境問題が語られていた。それに対して、自分が何を取り組むべきかについても、”I will bring my own bag when I go shopping.”や “I will try to clean the beach when I go to the sea.”などと生徒ならではの視点で語られていた。

 

 プレゼンテーションの最後にJETがコメントをする。今回のプレゼンテーションでは、「環境問題を自分事としてとらえ、今からでも実行できることは何かを語ることができているが、もっと自信を持って発言した方がいい」と、attitudeの部分を指摘された。

 

 

 フィードバックについては、私のクラスでは、プレゼンテーション時に生徒にMicrosoft Formsを使って相互評価をさせる。具体的にVoice(声量)、Delivery(話しぶり)、Memorization(原稿の暗記)、Visual Aid(スライドの有効性)など生徒に注目してほしい観点を事前に明確にしておく。その上で、これらの項目を総合的に聞いて(見て)、素晴らしいプレゼンテーションをした生徒を3名、自分を除いて選ばせ、その根拠をコメント入力させて提出させる。次の授業ではその結果を基にして生徒にフィードバックを行う。

 

 生徒の投票を集計したグラフ(資料2)は、各生徒がプレゼンテーション終了後に投票した結果である。生徒が「上手だ」と選んだ3名の発表者が数名に集中していることがわかる。その中で評価が高かったのは、とてもseriousな環境問題というテーマに、時にjokeを入れながらaudienceを取り込んだ生徒だった。この評価は、生徒が見る観点を明確にしないと「面白い」「ウケる」等と適正に行えない場合があるので、観点を事前に周知することが非常に重要である。

 

 

資料2

資料2

 

 また、Visual Aidについての評価は、「スライドの有効性」であった。自分が話していることとの関連、情報量の適正さ(載せすぎず、載せなさすぎず)を評価した。本校の生徒は様々な授業で発表活動があるため、スライド制作は場数を踏んでいるが、この点も事前に指導した。

 

 生徒のコメント(資料3)を見ると、事前に評価項目について周知することがいかに重要であるかが判ると思う。このコメントを読むだけでも、こちらも非常に学ぶものがある。

 

資料3

資料3

 

 また、「CROWN論理表現Ⅰ」のLesson 4 Save Our Planetでは、文法事項として「不定詞」を扱った。ここでも生徒のアウトプットとしてMicrosoft Formsを活用した。教科書及び副教材を用いて、例文の発音や説明を終えた後、「ここだけはおさえて欲しい!」という部分を問う英作文を5題出題した。私が好んで英作文のアウトプットにMicrosoft Formsを使う理由は、フィードバックの即時性である。今、生徒がどんなところで理解できていないのか、またどこまで理解できているのかを客観的に見ることができる。生徒の視点で言えば、「こういう表現もあるのか」などクラスメイトの答えから学ぶものが多々ある。生徒の英作文(資料4)は、教科書準拠のワークブックから引用した問題について答えたものである。例えば、 “I have to study more…”のように勉強量に言及するもの、 “I want to study harder…”とやる気について言及するもの、「入学する」においては “to pass the medical school exam”や “to enter (the) medical school”、 “to be (a) student of medical school”など様々な表現を使っていることがわかる。これらをクラスの前で示すことにより、生徒が刺激されて、表現の引き出しが増えていくと感じる。教員側も模範解答は示すが、他の素晴らしい表現についても、出来る限りコメントしてフィードバックする。

 

資料4

資料4

 

 現在はChatGPTに代表されるように、使用制限があるにせよ、生成AIが有効に活用されている。細かい文法的な訂正は、このようなアプリなどにある程度任せて、自分で自分の英作文を添削できるようになることも大切と感じる。私はこれらの活動を通して、言語を学ぶ上で血の通った表現の豊かさや、人間味あるメッセージをどんどん褒め、受容して、生成AIには出せない味を追求していくべきと考えている。

 

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プロフィール

矢島 哲也    やじま・てつや (東京都立多摩科学技術高等学校 主幹教諭)

前職を経て、教員生活23年目を迎える。現勤務校は6年目となる。教壇に立ちながら教員研修の講師などを経験し、現在はCALL教室の活用やICT機器の授業利用など、英語教育においてデジタルとアナログの利点を融合した授業デザインをライフワークとしている。

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