ICT 実践事例紹介

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「ことまな辞書」を活用した授業内での実践事例

  1. 印刷する

高等学校英語

  1. その他
  2. 学習者用デジタル教材

森田 亜美 (城西大学附属城西中学・高等学校)

2023年03月30日

1.はじめに

 本校のICT教育は2018年度の中学入学生よりスタートした「Josai Future Global Leader Program」(以下JFGLP)から本格的に始まりました。JFGLPは基礎学力の育成を根底に、教養・協働力・異文化相互理解力・課題解決力・実践力に重点を置いた6年または3年一貫の教育プログラムです。本校の生徒は一人一台ICT端末を所有し、日々の学習や生活サポートなど様々な場面でICT端末を活用しています。校内でのWi-Fi環境も整備されているため、教室外の体育館や校庭、校内施設等、いたるところでICT端末を使った活動が行われています。

 

2.「ことまな辞書」の導入の経緯

 本校では2021年度高校入学生より、各自のICT端末に「ことまな辞書」の英語と国語の辞書がインストールされています。ICT端末の導入以前は、生徒が各自で辞書を準備していました。辞書のタイプは特に指定していませんでしたが、大半の生徒は電子辞書を使用していました。ICT教育の活動が盛んになるにつれ、辞書を使わずに各自のICT端末からオンライン上の翻訳ツールを使用して意味を調べている生徒の姿が見られるようになりました。無料の翻訳ツールは手軽ですが、画面上に予期しない広告が出ることによる学習への弊害や、品詞や日本語の意味などが曖昧に表記されていることがあります。正しい言葉を知り、良質な文例を目にすることで語彙力を高めてほしいという教員側からの要望と、画面上の作業を止めることなくワンストップで言葉の検索ができるという「タイムパフォーマンス」を重要視する現代の学生たちの学習スタイルに適しているという2つの観点から「ことまな辞書」の導入に至りました。ただ、辞書の正しい使い方も生徒たちに知ってもらうため、中学では現在でも各自が辞書を準備し、教員による辞書指導を行ったりもしています。

 

3. アウトプットを意識した授業

 

 

 学習指導要領改訂以前より、本校では4技能5領域の実践としてアウトプットを意識した授業を行い、全学年でネイティブ英語教員が主体となった授業を展開しています。中学は週3時間ネイティブ英語教員が授業で関わり、高校は週1時間ネイティブ英語教員と日本人英語教員のTeam Teachingの授業で「話すこと[やり取り]」「話すこと[発表]」「書くこと」を実践しています。このTeam Teachingの授業内で英語の表現を知り、さらに深めるために、「ことまな辞書」を積極的に活用するよう生徒たちに声掛けをしています。

 

 高校でのネイティブ英語教員と日本人英語教員によるTeam Teachingの授業は、「英語コミュニケーションⅠ/コミュニケーション英語Ⅱ・Ⅲ」の中で週に1回行われています。ネイティブ英語教員がオリジナルで作成したテキストを使いながら、エッセイライティングの書き方を学び、エッセイライティングのトピックからグループ・プレゼンテーションを各学期で行っています。

 

4. Team Teachingの授業における「ことまな辞書」の活用

 

 実際に生徒たちの「ことまな辞書」を使用する頻度が高まるタイミングは、先述のプレゼンテーション準備のための英文原稿作成時です。毎回異なるトピックに応じた発表になるため、調べる言葉も様々です。また学年進行に伴い、同じトピックでも質問の難易度が上がっていきます。実際に生徒が取り組んだ「スポーツ」のトピックを例に挙げると、高1の「Some people say students should play sports. Do you think it is good for students to play sports?」という質問から、高2の「Do you think it is always important to win when you play sports? 」といった質問へと変化します。さらに一歩踏み込んだ内容に対して各々が考え、グループで意見を交換し、プレゼンテーションに向けてグループ内の意見や具体例を発展させていくようになります。

 

 テキストに記載されている英単語や、ネイティブ英語教員とのやりとりの中で不明な単語や表現は「ことまな辞書」の英和辞典を使い、生徒たちは理解を進めます。発表のためのアウトライン作成時にはそれぞれの生徒の英語レベルに応じて、まずは日本語で書く生徒がいたり、最初から英語でメモを取る生徒がいたりと三者三様です。
ある程度各グループの意見がまとまってくると、今度は「ことまな辞書」の和英辞典を使う生徒が増える様子が見られます。和英辞典の使用時には、単語を単独で調べるより言い回しを調べている生徒が多いことが特徴的です。グループ内で議論を交えながら英文の原稿を仕上げていきます。

 

 原稿が完成すると、各グループが発表練習に進みます。発音が曖昧な語彙は教員に聞いたり、グループのメンバーに確認したりする生徒が大半ですが、英語の音声確認に「ことまな辞書」の英和辞典を使う生徒もいます。

 

 以上のように、活動の段階において「ことまな辞書」の活用スタイルが異なることがひとつの大きな特徴ではないかと思われます。これこそ複数の辞書が同時に使用できる「ことまな辞書」の持ち味を活かした活用方法ではないでしょうか。

 

5.さらなる「ことまな辞書」の活用にむけて

 英語の学習で辞書の活用は必要不可欠です。生徒たちは辞書や単語帳を用いて日々英語の語彙力を向上させています。一人で机に向かってコツコツ続ける学習のサポートツールとしての辞書活用だけでなく、本校のようなグループでの英語学習の中の辞書活用もまた、学習効果が高められる手段の一つだと思われます。

 

 「ことまな辞書」は生徒一人一人にライセンスが設定されているため、卒業後も活用が可能です。本校では導入2年目ということもあり卒業後の活用については未知数ですが、各自のスマートフォンにアプリを入れるなど、もっと身近に辞書を感じられ、使用頻度が高まるような活用法の呼びかけなどを今後進めていきたいと思っております。

 

○学校紹介(校長 神杉 旨宣)

 

 城西大学附属城西中学・高等学校は1918年に創立された東京都豊島区にある共学の中・高一貫校です。2代目校長の野口援太郎が掲げる「自由教育」の伝統を受け継ぎつつ、現代にマッチしたアクティブラーニング・PBL 型学習・体験実践学習と、一人一人の成長に応じた指導を実践しています。

 

 本校では2016年度より教室内のICT機材の整備を進め、2018年度から本格的なICT教育が始まりました。デジタルネイティブ世代の生徒たちは、生まれた時からインターネット環境に触れているせいか、あっという間にICT端末に慣れ学校生活の様々なシーンでの活用を校内でも目にします。そして、便利であるが故のトラブルも発生するため、本校では折に触れてネットリテラシーの啓蒙活動も行っています。

 

 ICT端末を使用した教育活動は今後も続いていくと思われますが、その時代のニーズによって使用するデジタル教材は変わっていくことでしょう。本校ではそのスピード感に適したデジタル教材を生徒に提供しながら、生徒一人一人の個々に応じた最適な学びと探究活動などにおける協働的な学びを高めていくことを目指しています。

 

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プロフィール

森田 亜美    もりた・あみ (城西大学附属城西中学・高等学校)

英語科主任

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