ICT 実践事例紹介

ICT 実践事例紹介

デジタル教科書(教材)のフル活用により、生徒一人一人の活動時間を生み出す

  1. 印刷する

中学校英語

  1. 学習者用デジタル教科書+収録音声付き
  2. 指導者用デジタル教科書(教材)

上村 慎吾 (新潟市立葛塚中学校)

2021年11月26日

1.はじめに

 今年度(令和3年度)から新潟市では、GIGAスクール構想が本格的に実施されている。生徒たちに1人1台のiPadが貸与され、またiPadには学習者用デジタル教科書(教材)と授業支援アプリ『ロイロノート・スクール(株式会社LoiLo)』(以下、ロイロノート)などがインストールされており、デジタル教材を活用した授業が多く展開されるようになってきている。

 

 当校の英語科は3人のスタッフがおり、全員が指導者用デジタル教科書(教材)を毎日使用し、授業を展開している。指導者用デジタル教科書(教材)の「日常化」をスムーズにすることができた。一方で、学習者用デジタル教科書(教材)の「日常化」は今年度から新しい課題である。指導者用デジタル教科書(教材)と学習者用デジタル教科書(教材)を比較すると、次のような課題をクリアしなければならない。

 

【指導者用デジタル教科書の使用メリットから見えてくる学習者用デジタル教科書の課題】

 

 

 これらのことから見えてくる課題は、学習者用デジタル教科書(教材)によって、1時間の授業での教師主導の授業マネジメントがしにくくなるということである。しかしながら、この視点を変えてみると、これからの授業は教師主導の授業だけではなく、学習者主導の授業も必要になってくることである。学習者用デジタル教科書(教材)は、生徒個々の学びに活かすための絶好の教材である。今までの授業のスタイルを変え、1時間の授業、さらに家庭学習で、生徒個々の学びの時間をつくり、生徒たちが学習者用デジタル教科書(教材)を活用できる環境づくりが必要である。

 

 本号では、生徒個々の学びとして、Writingの実践を紹介する。

2.実践単元「NEW CROWN BOOK 2 ─ Lesson 2 My Dream」

 本単元を15時間で構成した。本単元の指導計画は次の通りである。なお、指導計画中の[A1][A3]については、次項で紹介する。

 

① なりたい職業ランキングならびに指導者用デジタル教科書(教材)の資料映像によるLessonゴールの説明

[A1] 単元導入:学習者用デジタル教科書の付録P17-18使用)

②~④ 新出文法事項「不定詞の3用法」の導入・練習

⑤~⑧ Part 1~3本文、USE Readの音読練習

[A2] 学習者用デジタル教科書(教材)と指導者用デジタル教科書(教材)の音声機能の使用)

⑨ スピーチ作文書き1回目

⑩ スピーチ作文書き2回目

⑪ スピーチ作文デジタル化

⑫~⑭ スピーチ練習

[A3] スピーチ原稿の作成ならびにスピーチ練習:学習者用デジタル教科書P28のスピーチモデル映像の使用)

⑮ スピーチ発表─パフォーマンステスト

3.実践の具体

[A1] 単元導入場面

 

 

 今まで自分自身の授業では、本時の導入場面で、どうしても教師主導になってしまっていた。これを改善するために、学習者用デジタル教科書(教材)の付録とロイロノートを併用して、生徒個々の活動の時間やペア活動の時間をつくった。付録P17-18の職業に関する単語を導入し、生徒同士で職業当てクイズを行う。例えば、doctorならば、“hospital”、“sick”、“He can help people.”など、単語レベルから単文レベルの英語を伝え、相手に推測させる。学習者用デジタル教科書(教材)の付録は音声機能が付いており、生徒が知りたい単語をすぐに使うことができる。また、今までのように単語一覧表の印刷の必要がない。この活動の後に、ロイロノートのアンケート機能を通して、生徒たちに “What is your dream?”や“Which job is worth working?”などを質問し、単語の使用ならびに単元の導入の動機付けを図った。

 

<学習者用デジタル教科書(教材)の使用メリット>

□教科書の付録で使いたい単語の発音をすぐに調べることができる

□今まで単語一覧表を配付していた手間が省け、単元の帯活動として、簡単にペア活動ができる

 

[A2] 学習者用デジタル教科書(教材)と教師用デジタル教科書(教材)の音声機能の使用

 

 

 今まで自分自身の授業では、教科書本文の音読活動場面で、教師が一方的に“Chorus Reading”や“Read and Look Up”などの活動を行っていた。ただし、生徒側の視点に立つと、生徒たちは自分が読めない一部分をよく読みたかったり、同じ場所を繰り返し音読練習したかったりするものである。この実態を改善するために、iPadの画面録画の機能、ロイロノートの学級配信機能、そして学習者用デジタル教科書(教材)の「書き込み機能」を併用して、音読活動で生徒個々やペア活動の時間を増やした。手順は以下の通りである。

 

①iPadの画面録画機能を活用し、指導者用デジタル教科書(教材)のモデル音読を撮影する。

※カラオケや日本語付きにすると、多くの生徒にとって取り組みやすい

 

②ロイロノートの学級配信機能を使い、生徒に配信し、生徒個々で音読活動に取り組む。

※ICTを活用した教育での著作物利用については、改正著作権法第35条運用方針(令和3(2021)年度版)に基づく。

 https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin_20201221.pdf

 

③iPadの持ち帰り学習を活用し、学習者用デジタル教科書(教材)でも同じように音読練習をする。

 

④生徒同士で学習者用デジタル教科(教材)書の「書き込み」機能を使い、穴埋め形式の問題を出題し合い、本文の定着を図る。

 

<学習者用デジタル教科書(教材)の使用メリット>

□デジタル教科書(教材)によって、生徒個々のペースや習熟度に応じた音読活動が可能になる

□タブレット端末の自宅持ち帰りにともなう家庭学習の充実につながる

 

[A3] スピーチ原稿の作成ならびにスピーチ練習

 

 

 今まで自分自身の授業では、スピーチ原稿作成の際に、多くの生徒から「先生、〇〇の表現って何て言いますか」と質問を受けていた。また、生徒は紙辞書を使い、自分が表現したいことを調べていたが、生徒の英語レベルよりも高い表現をしてしまう傾向にあった。これを改善するために、学習用デジタル教科書(教材)P29のモデル原稿(本文を中抜きしたもの)、ロイロノートの学級配信機能、学習者用デジタル教科書(教材)の付録、翻訳アプリ『Google翻訳(Google)』(以下、Google翻訳)を活用した。手順は以下の通りである。

 

①指導者用デジタル教科書(教材)P28のYukiのモデルスピーチを視聴

 

②指導者用デジタル教科書(教材)P28 Readのモデル原稿を生徒に配付、および原稿の書き方の説明

 

③モデル原稿の一部を変え、自分が表現したい英文を作成

※この際、わからない単語・語句のみを、学習者用デジタル教科書(教材)の付録、Google翻訳を使用させた。1文全てや、難しい日本語を訳すことを避けるようにした。

 

④学習ノートに清書を書き、デジタル写真としてiPadに取り込み、音読練習に入る

 

<学習者用デジタル教科書の使用メリット>

□指導者用デジタル教科書(教材)と学習者用デジタル教科書を併用することで、生徒が教師に頼り過ぎず、自分の力でスピーチ原稿づくりが可能になる

4.結びに

 学習者用デジタル教科書(教材)の活用に向けて、まだまだ改善しなければならないことは多い。しかしながら、デジタル教科書(教材)を活用することで、生徒一人一人の学びの時間を多く増やすことができた。その分、授業中に、教師が生徒一人一人にフィードバックを与えることができ、生徒の学びのサポートをできている。  

 

 今後は、デジタルとアナログの両方のよさを活かし、教師が生徒の学びをリードするのではなく、サポートし、生徒が自律した学習者になるようにサポートしたい。

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プロフィール

上村 慎吾    かみむら・しんご

新潟市立葛塚中学校教諭。三省堂NEW CROWN 教科書編集協力委員。前任の新潟大学付属新潟中学校での在任中、関東甲信越英語教育学会第38回大会、日本カリキュラム学会第30回大会、他の研修会等で学習評価に関する実践を発表。英語の実践を紹介した書籍として『ヤマ場をおさえる学習評価 中学校 深い学びを促す指導と評価の一体化入門』(図書文化社)がある。

バックナンバー

    

指導者用デジタル教科書と学習者用デジタル教科書の活用(使い分け)について

2021年11月26日
堂本 佳樹

詳細はこちら

    

デジタル教科書(教材)のフル活用により、生徒一人一人の活動時間を生み出す

2021年11月26日
上村 慎吾

詳細はこちら

    

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