堂本 佳樹 (兵庫教育大学附属中学校)
2021年11月26日
1.はじめに
私は教科書を使った英語学習支援が大好きです。理由は以下の通りです。
<理由1>
教科書は、“learner friendly material”(学習者にとってなじみやすい教材)と考えるから。
<理由2>
教科書には場面設定があり、その中で登場人物がいて、そのキャラクターの発話分析、人間関係観察がおもしろいと思うから。
<理由3>
対話文を発展させる活動が設けやすいから。
場面設定や対話は限られた紙面の中でなされている。本文の対話の続きを、既習事項を使って続けるなどの活動を設けられます。
<理由4>
生徒たちにとって、身近な話題からキャリア教育、環境、人権など現代社会の話題も豊富で、それらが興味深いと思えるため。
私は「教科書で」学習支援をし、「教科書も」教えます。「教科書で」教えるとは、英語教育でよく言われるように、教科書を使って、音声、語彙、表現、文法、言葉の働きを指導支援することです。
「教科書も教える」とは、上記したように、場面設定の中で、登場人物がなぜその発話をしたかを考える、いわゆる「行間を読む」活動を展開すること、また各レッスンのパートごとの場面設定をつなげる説明を考える、ことを指しています。いやむしろその逆で、「教科書も教える」とは知識技能獲得で、「教科書で教える」とは、対話の続きを考えることや場面設定のつながりを説明するなどの思考判断表現活動かもしれません。いずれにせよ、教科書を用いることが、生徒たちにとって“learner friendly”と考えます。
2.デジタル教科書活用(教材)について
デジタル教科書(教材)には指導者用と学習者用の2種類があります。本稿では私の使い分けについてまとめてみます。
(1) 指導者用デジタル教科書(教材)
基本的な使い方はおそらく他の先生方と変わらないと思いますが多少「マニアック」な面もあるかもしれません。
1)とびらでその単元の学習動機づけを行う。
GETでどんな表現(文法)を学習するか、USE Readでどんな読み物で学習するか、USE WriteやSpeakで学んだことを使ってどう発信するか、を確認します。
2)GETは2時間ですすめます。
~1時間目:語彙、音声、内容の確認~
① 語彙、音声を確認する。リピートやシャドウイングで語彙、本文を読めるように支援します。また日本語機能を活用して内容理解を図ります。
② 次にPOINTをDrillで定着を図ります。
③ マスク機能の活用
私の授業では、とにかく「教科書を読める生徒」を育成したいと願っているので、その意味を理解し、表現できることをGETでのねらいとしています。そのために本文の音読インタビューテスト、暗唱インタビューテストを行います。その際に用いるのが「マスク」機能です。インタビューテストに時間がかかるので、内容確認は、日本語訳機能を用いて、さらっと意味を確認します。意味を理解させた上で、音読や暗唱発表インタビューテストを行います。
~2時間目:語彙や本文の復習、target sentenceの復習~
④ Drill機能のイラスト活用
語彙や本文、target sentenceの復習の際は、Drillのイラストのみ表示します。ListenやTalk&Write活動を行います。そしてGETの確認として、定着を図るために、リテリング活動を行います。リテリング用のイラストは学習者用デジタル教科書には付いていないので、後述しますが、デジタル教科書のイラスト部分をピンチで拡大して、その絵を見ながら、内容構成をさせ、発表させます(指導者用デジタル教科書のリテリング機能も使うこともある)。以上が指導者用デジタル教科書の主な使い方です。
(2) 学習者用デジタル教科書(教材)
① ペン、スタンプ機能の活用~音声の確認
音読や暗唱発表(技能)の評価規準として以下のように設定しています。
A 教科書のイントネーションや区切りで発表出来る。
B Aほどではないが、聞いてわかる範囲で発表出来る。
C Bには満たないものの発表出来る。
(1)で語彙や本文の読み方や内容確認を一斉授業で行う際は、基本的に生徒たちは指導者用デジタル教科書を見ながら学習をすすめています。音読・暗唱発表のための個別練習としてペン、スタンプ機能を使って、イントネーション、区切りを生徒用PC(本校ではクロームブック)に記入させます。生徒たちはそのために何度も聞き直しています。
記号記入の際には以下の指示を出します。
・区切りに / をいれる
・強く読むところに ´をつける
・上げ調子、下げ調子か矢印をいれる
生徒たちはこの課題を遂行しながら、5分~10分各自何度も英文をタップして確認し、音読練習に用いています。
② テキストの活用
生徒によってはリテリングのメモを、画面上にテキスト機能を使い、キーワードや英文を書いている生徒もいます。
現段階(2021年7月/1学期 現在)では、主にGETの学習、知識技能獲得のために学習者用デジタル教科書を使用させています。
3.まとめ
指導者用デジタル教科書(教材)と学習者用デジタル教科書(教材)の使い分けは、当たり前と言えばそうですが、以下のようにまとめられます。
・一斉授業の際には教師用デジタル教科書(教材)の機能を活用する。
・生徒が個別学習やグループで活動する際には、学習者用デジタル教科書(教材)の機能を活用する。
※個別学習は、音読・暗唱テストの音声確認やその練習、グループでの活動はリテリングです。
学習者用デジタル教科書(教材)は、機能が限られていますが、学習者が自分で音声の確認をし、本文が読めるようになる、教科書のように発話出来る、そんな個別最適化学習をすすめる一つのツールとしての可能性があるように思います。
堂本 佳樹 どうもと・よしき (兵庫教育大学附属中学校)
兵庫教育大学附属中学校主幹教諭。英語教育学修士。大阪府立高校非常勤講師、兵庫県公立中学校教諭を経て現職。特にリーディング指導・場面を意識したやりとりの活動指導支援に取り組んでいる。趣味は(英語)落語。
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