三省堂 発行書籍
中学英語いつ卒業? ―中学生の主語把握プロセス

中学生の「名詞句」の把握、特に主語を把握するプロセスが3年間の学習とともにどのように変化していくか。中学生の英語学習の実態を縦断的に追いかけた結果報告書。本研究で使用したテスト問題付き。

  • 金谷 憲・小林美音・告 かおり・贄田 悠・羽山 恵
  • 2015年 8月 3日 発行
  • 定価 1,600円+税
  • A5判  176頁  ISBNコード 978-4-385-36212-0

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著者紹介

金谷 憲 (かなたに けん)

東京大学大学院人文科学研究科修士課程,教育学研究科博士課程及び米国スタンフォード大学博士課程を経て(単位取得退学),32年間,東京学芸大学で教鞭を執る。現在はフリーの英語教育コンサルタントとして,学校,都道府県その他の機関に対してサポートを行っている。専門は英語教育学。研究テーマは,中学生の句把握の経年変化,高校英語授業モデル開発など。全国英語教育学会会長,中教審の外国語専門部会委員などを歴任。1986年より3年間NHK「テレビ英語会話I」講師,1994年から2年間NHKラジオ「基礎英語2」監修者。著書に,『英語授業改善のための処方箋』(2002,大修館書店),『和訳先渡し授業の試み』(2004,三省堂),『英語教育熱』(2008,研究社),『教科書だけで大学入試は突破できる』(2009,大修館),『高校英語授業を変える!』(2011,アルク),『高校英語教科書を2度使う!』(2012. アルク),『高校英語教育を整理する!』(2013,アルク)など。

小林 美音 (こばやし みね)

国際基督教大学教養学部,東京学芸大学教育学研究科教育実践創成専攻修了。埼玉県公立中学校英語科教諭として20年間教鞭を執る。平成16年度埼玉県長期研修教員(東京学芸大学にて研修)。埼玉県教育局指導主事,管理主事を経て,現在は埼玉県所沢市立美原中学校教頭。関東甲信越英語教育学会理事。
告 かおり(つげ かおり)
獨協大学大学院外国語学研究科前期博士課程修了。日本学園中学校・高等学校教諭を経て,現在は十文字中学・高等学校教諭。関東甲信越英語教育学会,全国英語教育学会会員。

贄田 悠 (にえだ ゆう)

青山学院大学文学部英米文学科卒業。埼玉県飯能市,坂戸市の小中学校を経て,現在は坂戸市立城山中学校教諭。平成21年度埼玉県長期研修教員(東京学芸大学にて研修)。関東甲信越英語教育学会会員。
羽山 恵(はやま めぐみ)
東京学芸大学大学院教育学研究科修士課程(教育学修士),英国ランカスター大学大学院言語学コース修士課程(MA in Linguistics)及び東京学芸大学大学院連合学校教育研究科博士課程(教育学博士)を修了。立教大学講師を経て,現在は獨協大学外国語学部准教授。研究テーマは,学習者コーパスを用いた第2言語習得過程の観察,習得を困難にする語彙特性の解明,中学生の句把握の経年変化など。全国英語教育学会事務局(研究企画担当),関東甲信越英語教育学会理事。共著に,『英語教育評価論』(2003,河源社),『文献からみる第二言語習得研究』(2005,開拓社),『英語診断テスト開発への道』(2006,英語運用能力評価協会),『日本人中高生一万人の英語コーパス』(2007,小学館),『現場型リサーチと実践へのアプローチ』(2008,桐原書店),『英語教育の「なぜ」に答える』(2009,学校図書),『英語学習者コーパス活用ハンドブック』(2013,大修館書店)など。

目次

まえがき
本書へのガイド
    本書の背景
    本書に出てくる用語
    本書で強調したいこと
Part I 中学生の主語把握プロセスを追う
第1章 定着が見られていない
    1.1. 「どう教えるのか」の前に
    1.2. 長期的視点
    1.3. 「導入」ばかりで「定着」まで見られていない? ~導入中心のシラバス~
    1.4. 定着とは
    1.5. 基礎基本とは何か
    1.6. 「定着」の過程を追うテストの提案
    1.7. なぜ名詞句か
    1.8. 後から修飾? ~かたまり把握を阻むモノ~
    1.9. 定着テストの作成
    1.10. テスト作成の困難点
第2章 定着を見るテストを創る ~第1次調査~
    2.1. 新プロジェクト始動
    2.2. どのように調べたか(第1次調査)
    2.3. 何がわかったか(第1次調査)
    2.4. 第1次調査の反省点
第3章 見えてきた実態をさらに追う ~第2次調査~
    3.1. 第1次調査からの変更点
    3.2. どのように調べたか(第2次調査)
       3.2.1. 学校・生徒について
       3.2.2. テストと実施について
    3.3. 新たにわかったこと(第2次調査)
    3.4. 第2次調査の反省点
       3.4.1. 問題形式について
       3.4.2. 名詞句の語数について
       3.4.3. 低選択率の錯乱肢について
       3.4.4. 結果を解釈するための情報不足について
Part II Billy’s Test
第4章 Billy’s Testの開発 ~第3次調査~
    4.1. 第2次調査からの変更点
    4.2. 困難点を特定するために
       4.2.1. 名詞句の語数
       4.2.2. 名詞句の構造
       4.2.3. センテンスの補部構造
    4.3. Billy’s Testの問題構成
       4.3.1. is挿入問題
       4.3.2. 和訳問題
       4.3.3. 同一問題
    4.4. テスト ~Billy’s Testのサンプル~
第5章 Billy’s Testを実施する
    5.1. 学校・生徒について
    5.2. 全8回のテスト実施時期
    5.3. テストの実施方法
       5.3.1. テストの構成
       5.3.2. テストの実施
    5.4. 採点方法
    5.5. 指導とフィードバック
       5.5.1. 指導について
       5.5.2. フィードバックについて
第6章 Billy’s Testでわかったこと
    6.1. 中学生の名詞句習得の状況
    6.2. 同一問題を3年間解いたとき
    6.3. 習得困難の原因とは
    6.4. 5種類の集団
    6.5. 名詞句習得のプロセスについての仮説
Part III 教育への提言
第7章 英語導入から定着まで
    7.1.「句の把握」,どう助ける
       7.1.1. コミュニケーションの時代だからこそ文法
       7.1.2. 教えられるか
       7.1.3. まず,知ること
       7.1.4. 高校での受け取り
       7.1.5. マクロな構造,長期的視点
       7.1.6. 与える「教育」から学習のサポートへ
    7.2. カリキュラムはどうあるべきか
       7.2.1. 長期的視野で考える
       7.2.2. 学習指導要領の作り方
       7.2.3. 行動中心の評価法との接点?
    7.3. 反省点と今後の展望
       7.3.1. 一般動詞を使ったら
       7.3.2. 関係詞などを含めたら
       7.3.3. そして高校へ
       7.3.4. 一般化できるか
あとがき
引用文献
巻末資料
筆者略歴・執筆分担一覧

コラム
 チームだから続けられた!
 後置修飾ダブルパンチ !
 印象に残る生徒たち
 「返してくれ」とは言わない?
 テスト問題を作るときに
 飽きさせない工夫 ①
 飽きさせない工夫 ②
 快適なビリビリを求めて…
 ただ今Billy's Test実施中
 Think-aloudからわかること
 主語の語数で教科書を見てみると
 ありんこの行列
 名詞句に10年…

まえがき

本書は,中学生の英語学習の実態を縦断的に追いかけた結果の報告である。三つの公立中学でそれぞれ3年間,同じ生徒が入学してから卒業するまでの学習の軌跡を追ったものである。
われわれが生徒たちの学習実態調査に着手した理由は,「教える」ためには「学び」を理解しなければならないと考えたからである。生徒がどのように学ぶのかがわからなければ,効果的にその「学び」をサポートすることができない。
教育全般についても言えることだが,特にこのことは英語教育に当てはまる。英語学習には他教科と同じような「教わって知る」(learning)という側面の他に「使いながら徐々に身につけていく」という習得(acquisition)の側面があるからである。
われわれが注目したのは,中学生の名詞句把握が,3年間の学習とともにどのように変化していくかということである。この点を追いかけた理由は,英語の基本的な構造を理解し,そして,使えるようになるためには,名詞句の習得が不可欠であると考えたからである。名詞句はレンガ造りの家で言えば,積み上げるレンガそのもののような存在である。こうして得たデータを整理してここに報告する。
生徒たちの英語学習(習得)をよりよく手助けするために,名詞句把握という一つの側面を例として報告することによって,学習をサポートする教育の大切さを訴えたいと思う。
2015年7月
金谷 憲

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