三省堂 発行書籍
中学・高校 英語ディベート入門

英語ディベートは、スピーキングをはじめ「4技能5領域」を総合的に伸ばす活動として学校現場で注目を集めている。本書では中学・高校の授業や部活動における効果的な導入方法や留意点を具体的に説明する。

  • 河野 周 著
  • 2021年 3月 10日 発行
  • 定価 2,420円(本体2,200円+税10%)
  • A5  208頁  ISBNコード 978-4-385-36148-2
  • 対象 中・高

著者紹介

河野 周 (かわの・あまね)

上智大学大学院( 心理学専攻:修士号取得)で「英語力とクリティカル・シン
キングの関係性」を研究。博士後期課程を満期退学後、英語科教諭として浅野中学・高等学校に勤務(2013~2016年)。同校英語ディベート部を
立ち上げ、全国大会強豪校に導く。自身も選手として社会人英語ディベー
ト全国大会や教員英語ディベート全国大会等で優勝。また、審査委員と
しては高校生英語ディベート全国大会(PDA)において最優秀ジャッジ賞を
3年連続受賞。2017年、シドニー大学大学院(TESOL専攻:修士号取得)に留学、「英語
教育におけるディベートの効果的な活用法」について研究。また同大学の
ディベート部(世界大会最多優勝チーム)に所属し、オーストラリアのメジャー
トーナメントにシドニー大学の選抜チームの一員として出場。
現在は、英語科教諭として聖光学院中学・高等学校に勤務。同校の英
語ディベート同好会を顧問として全国大会優勝に導く。また、教員研修
やワークショップ(小学生から社会人対象)の講師として全国を回るとともに、
高校生英語ディベート世界大会日本代表ヘッドコーチとしても活動中。

目次

第1章 概論編

1 英語ディベートとは
2 英語ディベートはどのように行うのか
3 英語ディベートの教育効果とは
補:教員のための英語ディベート

第2章 実践編

1 英語ディベートを実践するための土台作り
 (基本スキルと段階的アクティビティ)
2 英語ディベートを実践するための形式とルール
3 英語ディベートを実践するためのTODOリスト
補:英語ディベートを活用した教育実践

第3章 指導編

1 授業英語ディベートの指導 126
2 競技英語ディベートの指導 135
3 人間教育としての英語ディベートの指導
参考:英語ディベート 年間スケジュール案

インタビュー

コラム

参考資料

1. 中学・高校英語ディベート団体の紹介
2. 中学・高校英語ディベートのためのウェブサイト:
 English Debate for Education

あとがき

 この原稿を書き終えた今、あらためて世界一の英語ディベート部に留学していた日々のことを思い出しています。「世界一のディベートを学んできます」と意気込んで実行したシドニー大学大学院への留学。しかし現実は、そんなに甘いものではありませんでした。世界一のディベート部のレベルの高さに圧倒され、毎日が苦しい日々でした。週一回の練習日の前夜には腹痛に襲われ、毎週末に行われる大会の朝には何度も逃げ出したい思いに駆られたこともありました。

 ただ、そのような状態のときでも、欠かさず練習会や大会に参加していたので、そうした姿勢を評価してくれるディベート部のメンバーも徐々に増えていきました。その中でも特に、シドニー大学ディベート部のエースであり、高校生の時には世界大会で優勝し、後に大学生世界大会でも個人1 位を獲った、今は私の親友であるJimmy(James Stratton)は、練習会や大会で会う度に私のことを気にかけてくれ、「元気かい?」「ディベートを楽しんでいるかい?」といつも優しい言葉をかけてくれたのです。挫けそうになっていた私は彼の言葉にどれほど励まされたことか。

 彼と出会って分かったことは、世界一のディベーターというのは単にディベートだけが上手なのではなく、人間としても素晴らしい人格の持ち主なのだということでした。また彼のみならず他のシドニーのディベーターたちも本当に思いやりのある人たちばかりでした。こうした人たちとの出会いは、英語ディベート教育に携わる今の自分にとって非常に重要なものでした。なぜなら、彼らと出会っていなければ、「日本に英語ディベートをもっと普及させたい」という強い思いも抱かなかったかもしれないからです。留学前には日本に英語ディベートを普及させることは本当に良いことなのかと迷うことも正直何度かありました。本文でも述べたように、英語ディベートによる負の一面も目の当たりにしたこともあり、学校教育において英語ディベートを普及させることがその負の側面を助長するのであれば、英語ディベートを普及することはかえって良くないことなのではないかと考えてしまうこともありました。しかし、シドニー大学で、彼らと出会い、世界一のディベーターたちがこんなにも人間として素晴らしいのだということを肌で知ってからは、先のような問題は、英語ディベートそのものにあるのではなく、英語ディベート教育のあり方にこそあるのではないかと考えるようになりました。こうしたことから、英語ディベートに対する誤解を解くと同時に、間違った英語ディベート教育がそうした誤解を助長することがないように、きちんと伝えていくことが重要なのではないかと考え、そのことが本書を執筆するきっかけともなりました。

 学校教育の中で遅ればせながら盛り上がりを見せる英語ディベートですが、そのような時代の流れの中で「英語ディベートなんてやらせるべきではなかった」と言われないようにするために、本書が少しでも役立ってくれることを願うばかりです。

 最後になりましたが、本書を書くきっかけとチャンスを与えてくださった三省堂の小野寺粛さんには、私にとって初めての執筆で至らぬ点が多々あったにもかかわらず、根気よく、また温かくサポートして頂き、心底から感謝申し上げます。小野寺さんのご助力がなければ、今このようにこの本を書き終えることは決してできなかったと思います。

 また、執筆を書くきっかけを与えてくださり、初の執筆に右も左も分からない私に執筆のコツを教えてくださった遠田和子先生、私のディベートの師匠であり、出版前の原稿に目を通し貴重なフィードバックをしてくださった綾部功先生、推薦文を書いてくださっただけでなく、いつも温かい励ましの言葉をくださる松本茂先生、コラムにも書かせて頂いた諸先生方はじめ、インタビューを受けてくださった先生方他、英語ディベートを日頃一緒に練習してくださる先生方・ECCの先生方、そしてこれまでお世話になった多くの方々にも、心からお礼を申し上げます。さらに、現在勤務している聖光学院の関係者の方々には感謝の思いしかありません。工藤校長先生をはじめ、英語ディベート同好会顧問の百武沙紀先生、グロリア・ヌー先生、そして同僚の方々には、私が英語ディベートの活動に従事することを暖かく見守っていただくと同時に、応援までして頂いています。また、私の授業を受けた生徒のみなさんは、私が考えたさまざまな授業英語ディベートのアクティビティに一生懸命取り組んでくれました。そのおかげで、授業英語ディベートのさまざまなアイディアを得ることができました。そして、聖光英語ディベート同好会(SUCCEED:SEIKO UNION of Con_dent Capable Exceptional English Debaters)のメンバーには、英語ディベートをいつも真剣に取り組んでくれるだけでなく、全国大会優勝までも成し遂げてくれたことを誇りに思います。

 最後に、2019年・2020年のTeam JAPANのメンバー(中山隆起さん・一瀬ルアナさん・市岡彪吾さん・植田歷さん・杉本絢香さん・神崎花南さん・金世和さん・梶谷凜奈さん・吉田光太朗さん)には、本書を執筆中に多くの良い刺激をもらい、感謝しています。世界大会という大舞台で一緒に戦えた日々、そしてTeam JAPANとして初のチーム賞・初の個人賞を取れたことは私にとって一生の思い出となるでしょう。

 英語ディベートが今よりさらに普及することを切に願って筆を置きたいとおもいます。

2020年12月

 この本を学生時代の英語ディベートが縁で結ばれた両親に贈ります。

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