東京外国語大学大学院教授。専門はコーパス言語学、辞書学、第2言語語彙習得。東京学芸大学大学院修士課程を修了後、東京都立航空高専、東京学芸大学を経て渡英、ランカスター大学博士課程でコーパス言語学を修める。言語学博士。その後、明海大学をへて現職。2003年、NHK教育「100語でスタート!英会話」講師を務める。同番組でキャラクター「コーパスくん」の人気が爆発し、日本ではじめてコーパス言語学の成果を本格的に英会話番組に応用した。同時に、JACET8000やALC SVL12000などの語彙表の作成に中心的に関わるなどコーパスに基づく英語教材開発を推進。
主な編著に、『エースクラウン英和辞典』『同英和辞典第2版』『クラウン チャンクで英単語Basic』『同Standard』(三省堂)、『NHK基礎英語データベース Mr.コーパス投野由紀夫のより抜き表現360』『コーパス練習帳』(NHK出版)、『英語教師のためのコーパス活用ガイド』『英語到達度指標CEFR-Jガイドブック―CAN-DOリスト作成・活用』(大修館書店)、『プログレッシブ英和中辞典第5版』(小学館)など。
また学習者コーパス研究では世界的に著名で、JEFLLコーパス、NICT JLEコーパス、ICCIなどのコーパス構築プロジェクトを主導。現在はCEFR-Jという新しい英語到達度指標を開発し、CAN-DOリストとコーパス分析による英語シラバスの科学的構築に関する研究で世界中駆け回っている。International Journal of Lexicography (OUP)、Corpora, International Journal of Learner Corpus Research (Benjamins) などの国際学術ジャーナルの編集委員、Lexicography (Springer)の編集長、英語コーパス学会副会長、アジア辞書学会元会長。
はじめに…………………………………………………………………ⅲ
第1章 知っておきたい英語基本語彙のメリハリ
現行学習指導要領の中身………………………………………………1
コーパスに見る英語基本語彙の構造…………………………………2
会話コーパストップ100の単語の内訳……………………………5
トップ2,000語でできること………………………………………11
英語基本語彙の仕事量………………………………………………12
「幹」と「枝葉」―語彙は立体構造…………………………………16
○コラム 私の英語との格闘 1
収集癖、凝り性の子供時代……………………………19
第2章 真の英語力を培う語彙指導の急所とは?
研修会などで痛切に感じること……………………………………21
「幹」と「枝葉」を分ける……………………………………………22
あるSELHi校での話…………………………………………………25
教科書本文を「語彙」の視点で見直す……………………………26
膨大な語彙のどこに焦点を置くか? ………………………………28
「幹」と「枝葉」の単語の目利き……………………………………29
テキストに基本動詞の応用例を……………………………………33
単語の「幹+枝葉」をセットで覚える……………………………34
接する量が乏しい日本の英語教科書………………………………39
外国語学習に必要な時間数…………………………………………45
日本人の英語力の典型パターン……………………………………47
自分で語彙学習ストラテジーを選び取る…………………………48
○コラム 私の英語との格闘 2
英語は伸び悩みの高校初期……………………………50
奇跡の添削指導者………………………………………51
第3章「辞書」を使って語彙学習をガイドする
「辞書指導」とその方法………………………………………………54
辞書で勉強法を判断する①―単語の目利き」をさせる………58
辞書で勉強法を判断する②―辞書の見出し語以下の情報………65
幹の「100語」―フォーカスページの活用………………………70
練習方法―Multimodal & 4/3/2…………………………………72
単語集と単語テスト…………………………………………………74
語彙学習ストラテジーを発見させる………………………………79
100語、2,000語で大学入試に対応できるのか? ………………81
英語に対する見方が変わると教え方が変わる……………………84
「辞書」は強力な武器…………………………………………………86
○コラム 私の英語との格闘 3
大学1年―辞書収集と研究の始まり…………………88
「使える英語」への転換…………………………………89
第4章 チャンク学習の重要性とその指導法
単語の「目利き」とそれに応じた語彙学習方略の選択 ………92
基本100語の扱い―単語研究ノート……………………………92
2,000語レベルはチャンクで………………………………………95
受信から発信へ………………………………………………………97
文レベルに移行する際の基礎ドリル………………………………103
「チャンク英作ノート」を用意する………………………………107
○コラム 私の英語との格闘 4
留学そして「辞書ユーザーの研究」へ………………109
COBUILD―そしてコーパスとの出会い…………110
第5章 CAN-DO&英語教育改革と語彙指導
日本の英語教育はどこに向かうのか?……………………………112
CAN-DOとは何か? ………………………………………………115
CAN-DOと対応した語彙・表現の重要性………………………120
改革の成否の鍵を握る「英語の基礎基本のイメージ」…………125
指導の時間配分について…………………………………………127
○コラム 私の英語との格闘 5
決意の留学、そして新しい研究の始まり……………131
参考文献………………………………………………………………134
さくいん………………………………………………………………135
はじめに
この本は「発信力をつける英語語彙指導」というテーマで中学・高校の先生向けに書きました。私の専門のひとつはコーパス言語学で、特に英語語彙習得研究にコーパスを活用しています。本書では、新しい英語教育改革のさまざまな提案を俯瞰しながら、どのような語彙指導が今後なされたらよいか、私なりのイメージを整理しました。特に大事なのは、「身につけるべき英語」の全体像をはっきり描くことです。英語はスキル科目ですから、「英語で何ができるようになるか?」という部分に関してのイメージが漠然としていると、教えたり学んだりする際に迷走してしまいます。逆にそのイメージがはっきりした先生や学習者は、何が大事かの優先順位がわかっているので、教科書や問題集、入試などに対しての戦略もしっかり立てられます。この本を読まれたら、きっとその「身につけるべき英語」に関するイメージが鮮明になり、教科書や教材を見る見方が変わってくるに違いありません。是非、ご自身の持っているイメージとすり合わせながら読んでみて下さい。
そして後半は私が最も大事だと考える語彙学習のノウハウと、特に辞書指導に関してまとめました。現行学習指導要領でも加えられた「辞書指導」。皆さんはどうやっていますか?本文で詳しく述べますが、「語彙の目利き」はできていますか?是非この本を読んで、しっかりしたガイドラインを生徒さんに示してあげて下さい。彼らは辞書を自分で引くことで調べる力を身につけ、英語に対して自力で取り組めるようになります。そのためには、いくつかの基本的な語彙学習のポイントを先生と生徒が共有するといいのです。それによって学習ストラテジーが立てやすくなります。そして、語彙学習のポイントが共有できたところで、発信力に結びつくような語彙トレーニングをおこないましょう。ここで重要なのは、チャンク中心の語彙学習です。このような流れから、学習プロセスの可視化=見える化が可能になります。見通しがきく指導法・学習法こそ、学習者が真の実力をつけ、独り立ちしていく道を助ける方法です。
最後に本書の成立に当たり、原稿整理をして下さった桃井秀知氏、編集担当の三省堂辞書出版部外国語辞書編集長の寺本衛氏には、たいへんお世話になりました。心から感謝します。この本で真の英語発信力に結びつくような教え方、学び方のエッセンスがわかるように、と心より祈念しています。
2014年初冬 投野由紀夫
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