山梨大学准教授。福井県出身。兵庫教育大学にて教育学博士取得。著書に、『「自己表現活動」を取り入れた英語授業』『英語教師の発問テクニック―英語授業を活性化するリーディング指導』(ともに共著、大修館書店)などがある。
桃山学院大学教授。三重県出身。マッコーリー大学にて応用言語学修士、兵庫教育大学にて教育学修士取得。著書に、『英語授業実例事典』(共著、大修館書店)、『新しい英語教育のために』(共著、成美堂)がある。
仁愛大学教授。福井県出身。福井大学にて教育学修士取得。著書に、『これからの英語教育―研究と実践』、『コミュニカティブ・クラスのすすめ―コミュニケーション能力養成の新たな展望』(ともに共著、東京書籍)がある。
雨宮靖子 (あめみや・やすこ)
山梨県立甲府西高等学校 《5.5,7.1》
伊佐地恒久 (いさじ・つねひさ)
岐阜聖徳学園大学 《4.6,5.2,7.3,8.3》
奥村信彦 (おくむら・のぶひこ)
長野工業高等専門学校 《3.4,4.1,4.4,5.4,8.2》
紺渡弘幸 (こんど・ひろゆき)
仁愛大学 《4.3,7.2,8.0,8.1》
島田勝正 (しまだ・かつまさ)
桃山学院大学 《第2章,3.1,3.5,4.5,8.4》
田中武夫 (たなか・たけお)
山梨大学 《第1章,3.0,4.0,5.0,第6章,7.0,8.5》
森 暢子 (もり・のぶこ)
愛知工業大学 《3.2,3.3,4.2,5.1,5.3》
はじめに
第1章 推論発問のすすめ
1.0 リーディング指導の問題点は何か
1.1 推論発問とは何か
1.2 なぜ推論発問に着目するのか
1.3 読解過程における推論の働きとは
1.4 リーディング指導での推論発問の役割とは
第2章 推論発問づくりのポイント
2.0 推論発問づくりの原則は
2.1 明確性の原則:問いを明確にする
2.2 意見差の原則:異なる意見を引き出す
2.3 証拠の原則:本文中に証拠を探させる
2.4 挑戦性の原則:挑戦的な問いにする
第3章 会話文での推論発問
3.0 会話文では何を問うのか
3.1 行動の目的や意図を推測させる
3.2 場面や状況を推測させる
3.3 人物の性格や心情を推測させる
3.4 行動や出来事の結果を推測させる
3.5 テキストにない動作やことばを推測させる
第4章 物語文での推論発問
4.0 物語文では何を問うのか
4.1 行動の目的や意図を推測させる
4.2 場面や状況を推測させる
4.3 人物の心情や性格を推測させる
4.4 行動や出来事の結果を推測させる
4.5 テキストにない動作やことばを推測させる
4.6 テキスト全体の主題を推測させる
第5章 説明文での推論発問
5.0 説明文では何を問うのか
5.1 語句や表現の選択の意図を推測させる
5.2 筆者の態度や意見を推測させる
5.3 パラグラフの目的や要点を考えさせる
5.4 前後の内容を推測させる
5.5 テキスト全体の主張を考えさせる
第6章 効果的な推論発問活用のポイント
6.0 効果的に推論発問を活用するために
6.1 魅力的な推論発問を作り出す
6.2 推論発問の目的を明確にする
6.3 推論発問の実施方法を計画する
第7章 推論発問を取り入れた授業の実際
7.0 レベルに応じた授業展開例
7.1 中学校での授業(会話文)
7.2 高校での授業(物語文)
7.3 高校での授業(説明文)
第8章 推論発問の効果の検証
8.0 推論発問にはどのような効果があるのか
8.1 読みへの意欲を高め、深い読みを促すのか
8.2 テキスト情報をどれだけ記憶できるか
8.3 推論発問は事実情報の理解とどう関係しているか
8.4 推論発問は文法への気づきを促すか
8.5 推論発問は協同学習をどのように促すか
教科書テキスト出典
参考文献
はじめに
■本書の企画について
本書は、中部地区英語教育学会における課題別研究プロジェクトの研究成果をまとめたものです。平成19年夏に2年間の協同研究を開始し、リーディング指導における生徒の読みを深める発問について議論を進め、とくに推論発問に焦点を絞り考察を行ってきました。本書は、リーディング指導を活性化するために、推論発問を使って何ができるのかについて現時点での私たちの結論を具体的な形にまとめたものです。
私たちの研究プロジェクトがどのように進んできたかを紹介します。まず、協同研究を始めるにあたり、中学校や高等学校におけるリーディング指導の現状と課題をメンバーで話し合い、今なお主流である訳読式の指導の問題点など数多くの課題を確認しました。一方、これからの英語教育のあり方をめぐり、単なる知識の詰め込みではなく、学習した知識を活用させる新しい指導が求められてきている中で、リーディング指導においても表面的な理解にとどまらずに深い理解を促す指導が必要であることも共有しました。
そのような現状を打開する解決策の1つとして、教師の発問に焦点を絞って研究を進める意義を確認しました。その後、発問の基本コンセプトを確認し、実際の発問をメンバー全員で考えました。高校の教科書の中で典型的な説明文と物語文を1つずつ選び、その英文テキストについて発問を考え出しました。その中で優れた発問を絞った結果、生徒の読みを深める発問の1つに、推論発問(inferential questions)があることが徐々に見えてきました。
議論を深める中で、推論発問の中でも、とくに、テキスト情報をもとにした推論発問がリーディング指導において重要であることがわかってきました。テキスト情報の中にヒントがある推論発問は、思いつきの推論とは異なり、生徒にテキストを何度も読ませることになり、効果的なリーディング指導につながると考えました。
そして、研究プロジェクトは2年目に入り、この推論発問には、どのような効果が実際にあるかを調べることにしました。メンバー全員が自分なりに仮説を立て、多様な角度から推論発問の効果を調査した結果、推論発問には、生徒の読みを深く豊かにする、テキストの事実情報を読みとらせる、文法形式に意識させる、生徒同士の協同学習を促すなど、リーディング指導を効果的なものにする多様な効果があることがわかってきました。これらの調査の結果から、推論発問が、私たちがリーディング指導を効果的に行うためのカギになる重要な要素であることを確信し、これまでの私たちの議論を本書の形にまとめることに至りました。
■本書の目的と構成について
本書を手にされた読者の中にも、リーディング指導でちょっとした推論発問を活用することで、授業に活気が生まれたという経験のある方がいらっしゃると思います。しかし、どのようにそのような発問を作り出せばよいのかコツを知りたいという方や、発問を使ったリーディング指導を始めてはみたけれど、生徒の深い読みを促す一歩進んだ推論発問をぜひ作ってみたいとお考えの読者の方もいらっしゃることでしょう。
推論発問を使ったちょっとした指導の工夫は、いつでも誰にでもできます。テキスト情報をもとに、テキストには直接書かれていない内容を推測させる発問を活用することで、テキストのメッセージに生徒の意識を向けることになり、生徒を読解活動にうまく引き込むことができるのです。リーディング指導における教師の発問に、推論発問を少し加えることで、テキストを繰り返し読まざるを得ない状況をつくりだします。教師がテキストの意味を一方的に解説するのではなく、テキストの意味を生徒の力で主体的に理解させることが可能です。テキストの主題の解釈に関して生徒とやりとりをしながら、豊かで、かつ、深い読みを促すことにもなります。
本書の目的は、どのように推論発問を作り出し、授業の中でどのように活用することができるか、具体的なアイデアを提案することにあります。そこで、まず第1章では、推論発問とは何かという基本概念を明らかにし、第2章では、どのような推論発問を作ればよいのかについてその原理原則を提示します。第3章から第5章までは、テキストのどこに着目すれば面白い推論発問ができるのかを具体的なテキスト例をもとにしながら、テキストタイプごとにアイデアを提示します。第6章では、どのような点に注意して推論発問を行えば、より効果的な実践ができるのかを提案します。第7章では、実際の授業の中で推論発問をどのように活用することができるのかを授業展開例とともに示します。そして、第8章では、推論発問をリーディング指導で実際に活用すると、どのような効果が見られるのかといった調査結果を提示します。
本書をもとに、読者の方には推論発問の秘めた力をぜひ知っていただき、目の前にある英文テキストを使って推論発問をどのように作ればよいのか、どのように推論発問を活用することができるかなど、本書からヒントを見つけていただければ幸いです。日頃の授業にちょっとした工夫を加えてみたいという先生方に、生徒の知的好奇心をくすぐり活気あるリーディング指導を行いたいと思っている先生方に、テキストのメッセージを大切にして生徒の心に残るようなリーディング指導を作りたいと考えている先生方に、本書が少しでも参考になることを心より願っています。
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