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納得解の得られる論題を探そう
~「グループディスカッション」~

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中学校国語

阿部 由美 (東京学芸大学附属世田谷中学校)

2024年09月10日

1. この授業について

 グループディスカッションは競技ディベートとは異なり、勝敗を決する必要がない。重要なのは自分がよく知っていると思っている友人と自分との間に感覚の差や意見の違いがあることを客観的に、あるいは体験的に理解することである。与えられた論題について話し合う過程で互いに意見が異なることを知り、誰か一人の意見だけが有用なわけではないことに気づき、相互の意見を取り入れて「納得解」を探すことを最初のねらいとした。ここでは与えられた論題について考えるところから一歩深化して論題を「探す」ことを目的とする。

 

 

2. 評価規準 (1年生)

【知識・技能】

原因と結果、意見と根拠など情報と情報との関係について理解している。(⑵ア)

 

【思考・判断・表現】

「話すこと・聞くこと」において、目的や場面に応じて、日常生活の中から話題を決め、集めた材料を整理し、伝え合う内容を検討している。(Aア)

 

【主体的に学習に取り組む態度】

日常生活の中からグループディスカッションに適した論題を探し、提供しようとしている。

 

3. 授業の流れ (全3時間/本時は第2時)

【導入】 第1時の復習。

・第1時では、「話し合いのこつ」(「提案」「確認」「質問」「促し」)を意識しながら、グループディスカッションの仕方そのものについて練習をした。

・自分の中のあたりまえが友人にとってのあたりまえではなかったことをふまえ、論題があらゆるところにあるという前時の学びを振り返る。

 

【展開1】 学校生活のあたりまえを疑う。

・中学校生活を送りながら感じている「不思議だ」と思うことや、小学校とのシステム的な違いを探す。

・3~4人のグループワークで行い、「小学校との違い」や「中学校に入って驚いたこと」などを列挙する。

<実践時に生徒からあがった論題例>

・出席簿を男女混合にするメリット・デメリットは何か。

・制服に男女差は必要か。(ネクタイは男子だけのものなのか。女子の冬服にはスラックスがあるが、夏用も必要ではないのか。)

・そもそも制服は必要か。

・委員会活動で「男女各1名ずつ」となっている現行システムの「男女枠」は必要か。

 

【展開2】 あたりまえの中から論題を探そう。

・展開1の活動の中から「グループディスカッション」の論題になりそうなものを選び、グループの論題としてロイロノート・スクールで提出する。

 

【まとめ】 次時は提出されたそれぞれのグループの論題でディスカッションを行う。

 

4. 授業のまとめ

○ 展開1が既にグループディスカッションの体裁を取っており、3~4名の生徒がそれぞれ促しあいながら自分の小中の学校生活を振り返ることができた。また提案された論題からは、生徒の関心がある領域がわかった

 

○ 「自分がふだん何も考えずに受けている事柄に疑問をもつ人がいることが最初の驚きで、話してみると『なるほど』と思うことと『考えすぎではないか』『そうは思わない』ということが出てきておもしろかった。」等の感想があり、ディスカッションにも、テーマを考える活動にもおもしろさを感じることができたという手ごたえを得た

 

○ 今回は学校のことや身のまわりの問題について考えたが、この先、環境問題を扱った教材へ、教材から現実的な世界が抱えている問題へ、と生徒の視野を広げていくためにどのような手立てが必要かを考えていくことが課題である。理科や社会との連携を図りながら授業を組み立てていきたい。

 

 

5. ICT活用のヒント

ロイロノート・スクールを活用し、話し合いの過程を可視化する。

ロイロノート・スクールの「共有ノート」機能と「シンキングツール」を使い課題に取り組んだ。

まず班のメンバーが自分のメモの色を決めて論題となりそうな自分の意見を書き、互いのメモを見て似たようなテーマのものを分類した。誰の発言かということを色でわかるようにすることや、意見の類似点の分類をするにあたりシンキングツールを活用することで、情報を整理しやすくできる。

 

図は意見の共有場面。見やすい資料を作ることだけを指示しており、どのシンキングツールを使うかの指示はしていない。このグループはXチャートを使用している。

 

(『ことばの学び』No.20 2024年9月発行に掲載)

 

 

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プロフィール

阿部 由美    あべ・ゆみ (東京学芸大学附属世田谷中学校)

この数年の関心は「学校図書館との連携を図る授業」。他教科との連携に加えて図書館を効果的に使い、教師も生徒も楽しみながら充実した学びを得る授業を模索している。

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