池田 有紀子 (高根沢町立阿久津中学校)
2024年01月15日
1. この授業について
ここでは、作品内で語られる具体的なエピソードが登場人物の特徴を表す役割を果たしていることに気づき、具体的なエピソードから捉えられる登場人物の人物像を自分の言葉でまとめることをねらいとした。単元の最後では、「俺」と「清」の別れの場面に着目し、「俺」の行動描写が、本時で捉える「俺」の人物像と、どのように合致しているかを批評する活動を行う。
2. 評価規準 (3年生)
【知識・技能】
具体と抽象など情報と情報との関係について理解を深めている。(⑵ア)
【思考・判断・表現】
「読むこと」において、文章を読んで考えを広げたり深めたりして、人間、社会、自然などについて、自分の意見をもっている。(Cエ)
【主体的に学習に取り組む態度】
作品内で語られた具体的なエピソードから捉えられる登場人物の人物像について進んで考え、まとめようとしている。
3. 授業の流れ (全5時間/本時は第2時)
【導入】「坊っちゃん」のあらすじについて確認する。
【展開1】「俺」の性格や人柄を表しているエピソードを本文から探し、抜き出す。
・範囲は「清」との別れの場面の前まで。まず教室全体で探し、そのあと各自で探す。
例)小学校のとき、「弱虫やーい」とはやしたてられて、二階から飛び降りた。
【展開2】 エピソードを分類して整理し、「『俺』はつまりどんな人物だといえるか」について考える。
➊展開1で抜き出したエピソードを分類し、「俺」の性格・人柄を書き出す。
・考える糸口として、思考の方法「抽象化する」を使うことを伝える。
・抜き出したエピソードに共通する要素や性質がないかを考えさせて分類させる。
・分類したグループごとに「俺」の性格・人柄をまとめさせる。
➋書き出した「俺」の性格・人柄をもとに、「『俺』はつまり○○な人物」という言葉でまとめ、「俺」の人物像を捉える。
[教師の問いかけ例]
「『この人は、どんな人?』と聞かれたら、なんて答える?」
【展開3】 まとめた内容をペアやグループで共有し、それぞれが捉えた「俺」の人物像について、共通点や相違点を話し合う。
・同じエピソードを取り上げていても人物像の捉え方が違った場合に、「なぜ、そのような人物像だと考えたのか。」を話し合う。
【まとめ】 次時は「清」の作品内での役割を考えることを伝える。
4. 授業のまとめ
○ 具体的なエピソードから共通すると考えられる性格や人柄をまとめることで、具体的な事柄を「抽象化する」という思考の方法を用い、登場人物の人物像について考えられた
○ 同じエピソードを取り上げても、そのエピソードがどのような人物像を表したものかについての捉え方は生徒によって異なる。その相違点を起点に話し合いを行うことで、作品をどのように解釈したかが明らかになる
○ 「『清』や『清以外の人』」と「俺」との関係性や、「俺」と「清」が別れる場面の「俺」の行動描写について読み深める学習活動においても、本時の学習内容を活用することで、「俺」の人物像について更に多面的に捉えることができる。
5. ICT活用のヒント
アプリのホワイトボード機能を活用する
展開1でホワイトボードにエピソードを書き出し、展開2では書き出したエピソードを並べ替え、分類していく。
エピソードを分類して整理する中で、人物像とエピソードの捉え方について考えが変わったり、新しい考えが浮かんだりした際、簡単に書き直しや書き足しをすることができることが利点である。
展開3では、ペアやグループで画面を共有しながら共通点や相違点について話し合うとよい。
アプリにあらかじめ思考ツールのテンプレートが入っている場合は、それを活用することも考えられる。
(『ことばの学び』No.19 2024年1月発行に掲載)
池田 有紀子 いけだ・ゆきこ (高根沢町立阿久津中学校 教諭)
文学的文章には、読み手をひきつけるためのさまざまな工夫があります。教室の中で、工夫を読み解き、生徒どうしが、文章や図などを用いて伝え合うことで、文学的文章を教室で読むことの意義や楽しさに気づけるのではないかと考えながら、授業を構想しています。
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