石塚 弘幸 (栃木県立佐野高等学校附属中学校)
2023年12月18日
1. この授業について
「少年の日の思い出」を、描写をもとに解釈し、分析する。グループやクラスでの対話を通して、自分の意見を形成し、表現していく授業を構築した。
第1時に、答えのない「大きな問い」を提示する。この問いをふまえて、本文から読み取った情報をもとに考え、議論し、最終的に自分の意見を作文に表現し、それを読み合う活動を設定した。
2. 評価規準 (1年生)
【知識・技能】
【思考・判断・表現】
【主体的に学習に取り組む態度】
3. 授業の流れ (全5時間/本時は第4時)
①「少年の日の思い出」の最後の場面について確認する。
・この作品は「僕」が闇の中でチョウを潰した場面で終わり、時制が過去のまま物語の終末を迎えることを確認する。また、前時に考えた「なぜ『僕』はチョウを潰したのか。」という問いについての意見を振り返る。
②「『僕』はその後、どのように変化するのか。」という大きな問いを解決するために、交流して考えを深める。
➊班で意見を出し合う。
・この作品の語り手は「僕」(一人称視点)であるということをふまえて考える。
➋ワールドカフェ方式を用い、班で出た意見をもとに話し合う。
・話し合い後、最初に考えた意見や他の班の意見をもとに、チョウを潰した翌日以降の「僕」の変化や、大人になってからの「僕」の変化について、班で再度意見を交流する。
➌教師がファシリテートしながら、「僕」の心情の変化についてクラスで意見を述べ合う。
③自分の意見を400字程度で書く。
・「『僕』はその後、どのように変化するのか。」という問いについて、意見交流を通して深めた内容をふまえ、自分の意見を根拠を明確にして書くことを伝える。
・Microsoft Teams を使い、Word に入力して文章をまとめてもよい。
④次時では作文を読み合わせて交流することを伝える。
・他者と意見を交流することで、更に考えを広げ、深める活動を行うことを促す。
4. 授業のまとめ
○ この教材の学習の最初に、「『僕』はその後、どのように変化するのか。」という問いを提示することで、生徒は課題解決に向けて本時までの活動を進められた。また視点人物を意識させ、叙述をもとに文章を俯瞰的に見ることによって、「僕」の心情を更に深く捉えることができた。
○ 文学作品を扱う「書く活動」は、自分の読みを表出するための活動であることを生徒に意識させることで、作文が苦手な生徒も、話し合いをもとに前向きに活動に取り組むことができた。
■生徒の振り返り例
● 大きな問いを解決するために、感想や疑問点をもとに内容を深めてきたが、いちばん疑問にあがっていたチョウを潰す場面の意味について、みんなの意見から理解することができた。
● 話し合いのときは自分の意見が固まったつもりでいたが、他の人の作文を読み、更に考えてみたいという気持ちになった。
5. ICT活用のヒント
意見交流の場面で効果的に使う
グループでの交流:MicrosoftWhiteboard グループで付箋を使いながらKJ法などを実施できる(手書き機能を活用して、付箋を線でくくったり、色を付けたりすることも容易にできる)。入力した内容はクラウド上に保存されるため、あとで見返したり、他の班のファイルを開いて参考にしたりもできる。
クラス全体での交流:MicrosoftPowerPoint スライドをグループ分用意し、自分のグループのスライドに入力させることで、情報が共有しやすくなる。正面のプロジェクターに一括で表示することが可能になり、全てのグループの進捗状況や内容を全体で共有できる。
(『ことばの学び』No.18 2023年9月発行に掲載)
石塚 弘幸 いしづか・ひろゆき (栃木県立佐野高等学校附属中学校)
平成26年度より現任校で勤務。本年度(令和5年度)は学年主任、中学学習指導主任を務める。中高一貫校で求められる学習指導を高校と連携する。現在はICTを活用した授業を展開しながら「絶えず思考する授業」を心がけ、「対話」の充実を意識した授業を実践中。
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