
大城 真紀子 (豊見城市立豊見城中学校)
2026年08月28日
1 はじめに
近年、教育現場ではICTの活用やDXスクールの導入が進み、生成AIをどのように位置づけ、学習に生かすかが重要な課題となっている。このような学習環境の変化は、生徒に求められる資質・能力の在り方にも影響を及ぼしている。とりわけ国語科には、情報を的確に読み取り、言葉を通じて思考を整理・深化させ、他者との関わりの中で自分の考えを適切に表現する力を育成することが求められており、転換期を迎えるこの時期にその教育的意義が改めて問われている。
こうした状況を踏まえて、国語科における「書くこと」の指導は、生徒の実態を把握し、課題の所在を明らかにすることが重要である。全国学力・学習状況調査の結果から「書く活動」そのものに対する抵抗感や苦手意識が顕著に表れている。一方で、「書くこと」の領域において、課題となる要因が構想、記述、推敲のいずれの過程にあるのかを捉えるのも容易ではない。
そこで、生徒の「書くこと」に対する課題の背景を捉えながら、目指す資質・能力が育つよう、実生活と結び付けた言語活動と単元構成を工夫した。知識・技能(2)情報の取り扱い方との関連を踏まえ、これまで身に付けた「読むこと」の既習の力を使って、「一〇〇年後の水を守る」「飲み水は不足しているか」の二つの論説文と「水問題に関する資料」の図表等を比較し、インターネット以外の情報収集の仕方を学びながら、複数の情報を関連づけて自分の伝えたいことを明確にして文章を書くまでの一連の活動を複合単元としてパッケージ化し、学習に取り組むこととした。
2 授業単元構成
3 ワークシート冊子について
(1)単元で使うワークシート(冊子状にして、第1時に配布)
(2)第3時で使用した構成シート
(3)実際の評価物
4 本単元における評価の実際
(1)〔知識・技能〕の評価
〔知識・技能〕①の「意見と根拠、具体と抽象など情報と情報との関係について理解し使っている」状況を、「意見と根拠の関係を理解し、判断や考えを示す意見を裏付けるための適切な根拠が示されている」姿と捉え、第1時のリフレクションや第7時の構成シートの記述から評価を行った。生徒Xは、構成シートに、自分の体験とユニセフの資料から得た情報、国土交通省が提示している数値などを根拠として、共通項から問いを立て、「人間の行動が引き起こした課題」とその要因を記述していたため、「おおむね満足できる」状況(B)と判断した。
〔知識・技能〕②「情報と情報の関係の様々な表し方を理解し使っている」状況を、「複数の資料から得た情報や自分の持っている情報を図や絵、記号などを用いて整理している」姿(「おおむね満足できる」状況(B))と捉え、第7時に行った。生徒Xは構成シートに多様な方法で集めた情報を矢印やピラミッドチャートなどの思考ツールを用いて整理し、自分の伝えたいことを明確にして記述していたため「おおむね満足できる」状況(B)と判断した。
「努力を要する」状況(C)と判断した生徒Yに対しては、意見と根拠の間には、それを繋ぐ「理由づけ」があることを伝え、根拠としてまとめている複数の情報の共通点について考えるような声掛けや「なぜそう思ったの?」といった「理由」を想起させる問いかけを行うなどの指導を行った。
(2)〔思考・判断・表現〕の評価
〔思考・判断・表現〕①の「『書くこと』において、社会生活の中から題材を決め、多様な方法で集めた材料を整理し、伝えたいことを明確にしている」状況を、「インターネットや書籍、新聞や論文、自分の体験や見聞きしたことなどから、目的や意図に応じた観点を設けて比較、分類、関係付けなどをしながら、伝えたいことを明確にしている」姿(「おおむね満足できる」状況(B))と捉え、第9時にドキュメントの記述や構成シートから評価した。生徒Xは、自分の体験やインターネットの関連サイト、新聞や大学論文等の資料から情報を整理し、自分が伝えたいことを「1人1人の行動が世界を変える」と明確に記述していたことから「おおむね満足できる」状況(B)と判断した。
〔思考・判断・表現〕②の「『書くこと』において、伝えたいことがわかりやすく伝わるように、段落相互の関係などを明確にし、文章の構成や展開を工夫している」状況を、「段落もつ役割や表現の効果を考えながら、文章の構成や展開を工夫している」姿(「おおむね満足できる」状況(B))と捉え、第9時に提出されたドキュメントの記述から評価した。生徒Xは、当初「話題の提示」に置いていた「11月の断水」の内容を、事例③へ移動し、問題提起の内容と関連のある「世界の飲み水」についての話題を書き出しとして使う判断をしたことが構成シートに記述から見とれたため、「おおむね満足できる」状況(B)と判断した。
また、「努力を要する」状況(C)と判断した生徒Zに対しては、これまでに学習した論述の型や段落の役割について示されている構成シートをヒントとして、段落相互の関連について確認するような声掛けを行った。
(3)〔主体的に学習に取り組む態度〕の評価
〔主体的に学習に取り組む態度〕①の「これまでの学習を生かして情報を整理し、自分の伝えたいことを明確にして、粘り強く文章を書こうとしている」状況を、「多様な方法で情報を集めて、整理し、自分の伝えたいことを明確して、文章を書こうとしている」姿(「おおむね満足できる」姿(B))と捉え、第6時と第7時に評価した。〔主体的に学習に取り組む態度〕②の「学習の見通しをもって、内容を吟味し、文章の構成や展開を工夫しようとしている」状況を、「文章の構成や展開について何度も吟味しながら修正を行い、よりよい文章にしようとしている」姿(「おおむね満足できる」姿(B))と捉え、第8時と第9時に評価した。ここでは、インターネットのみに頼らず、新聞や書籍、大学論文など多様な資料で情報を収集し、複数の情報から自分の伝えたいことを明確にしようとしている姿から主として粘り強さを、さらに学習の見通しをもって、提出期限までに文章の展開や構成について何度も吟味して文章をよりよいものにしようとしている姿を主として自らの学習の調整を確認した。
また、言語活動(作文の完成)を評価するのではないことに留意する必要がある。
5 おわりに
本単元では、「全日本中学生水の作文コンクール」への実際の応募という実の場を設定したことで、生徒の中に明確な相手意識や目的意識、そして自らの文章を推敲する評価意識が生まれ、「書く活動」に切実な意義を持たせることができた。生徒たちは、これまでの学習で培ってきた「具体と抽象」や「因果関係」といった情報の整理・分析手法を縦横に活用し、自らの考えを根拠立てて論述する姿を見せた。その確かな成果として、実際のコンクールにおいて県内10作品の入賞のうち、優秀賞2名、入選3名という半数を占める結果を得ることができた。また、「書く活動」においては、生徒に書く目的や意図を理解させ、「伝えたいこと」を自分自身の中に形成させることが重要だと改めて感じた。複合単元としたことで、必要な情報取集の仕方やその整理の仕方、それを土台とした文章構成や展開の工夫が既習の学びと結びついたことで、生徒の中に手ごたえを感じさせる活動にすることができた。
何よりの成果はコンクールの結果以上に、生徒たちが「自らの言葉で考え、発信できた」という強い成功体験を得て、自己効力感を高めたことにある。今後も、教室内の学びを実社会へ接続させ、生徒が社会生活の中で生きて働く資質・能力を身に付けていけるよう、指導と評価の一体化を目指した言語活動の充実に一層取り組んでいきたい。
参考リンク
「全日本中学生水の作文コンクール」表彰式を紹介する「沖縄タイムス」記事(2026年8月6日付)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1896857
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大城 真紀子 おおしろ・まきこ (豊見城市立豊見城中学校)
沖縄県中学校国語教育研究会研究部長。社会生活で生きて働く国語の力の育成を目指して仲間と共に勉強中。実の場を想定した課題設定や単元構成、指導と評価の一体化を目指した授業づくりなどを中心に行っている。

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