
根本 浩 (豊島学院高等学校)
2026年08月18日
1 本時のねらい
英語の文章で取り上げられた20世紀とはどのような時代だったのか。戦争の歴史と言われる20世紀は本当にそのような時代だったのか。自分たちで20世紀を象徴する国内外の出来事を1つ取り上げ、教科書には示されていない独自の20世紀観を生徒に育ませる。
発表は時間の都合上、プレゼンテーションを録画の形式で行い、生徒には後日録画したものを配信し、鑑賞させる。同時にこの録画については当該クラスの他教科の教員だけでなく、学校の教職員、ひいては保護者にも見てもらえるように、配信を行った。
2 授業の流れとポイント
Lesson 8では、まず教科書の冒頭の写真から20世紀とはどんな時代だったかを簡単に説明し、Section 1で科学技術が発展した「陽」の20世紀を生徒に理解させる。同時にSection 2と3で戦禍に見舞われ暗い影を落とした「陰」の20世紀を理解させる。その後Section 4でSection 3の戦争の惨禍を生き抜いたKim Phuc氏の話を読み、「陰」の時代にも「陽」の面影はあることを理解させる。同時に、教科書に掲載されている写真“Walk through Paradise Garden”が以前、順天堂大学医学部の小論文試験でも出題された事例を紹介し、20世紀の「陰」と「陽」の側面を様々な観点から見ることができることを理解させた。
この文章の読解に入る前に、生徒に対し、20世紀はどんな時代であったかを問うてみた。しかし、21世紀生まれの生徒たちにとって、20世紀は想像上の世界、もしくは話を聞いただけで実体験のない世界であるため、歴史に精通した生徒でない限り、すぐには浮かぶことは無かった。そこで、この課では英語を読みながら現代史を理解することの大切さ、科目横断的な側面から様々なことを知る大切さを理解するために、下記のようなスライドを使い、発表を最後に行うことを伝えた。
今回のポイントは、「国内外の事例を1つ取り上げる」と共に、我々にとって「良い」側面と「悪い」側面、そしてそれが今後の我々にとってどのような影響をもたらしうるのかを、生徒独自で考えさせることに力点を置いた点である。単純な調べ学習では一面的な側面しか扱わない場合も多いため、調べぬいた上で最後に自分なりの見解を述べるように伝えている。
このようにしたことで、様々な生徒の発表がなされた。1人あたり3分以内という制約で発表を行ったが、いざ発表させると「あれも話したい、これも話したい」が積もりに積もり、一番長い生徒では13分を超える発表になってしまった。この時期になると次年度の文理系分けも大方出来上がっているため、生徒自身での関心とリンクしたものも多かったが、理系志望の生徒がかなり深い世界の歴史を持ち出したり、文系の生徒が理系の発明に関する出来事を持ち出したりすることもあった。
なお、今回の取り組みは前年度担当したクラスでも実践したが、その中で「練馬区がなぜ板橋区から分離したのか」を扱った生徒がいた。その生徒は今年度の総合的な探究の時間で、「練馬区は田舎か否か」という一歩踏み込んだ独自の視点で「田舎」という定義付けを作り出し、探究発表も行っていた。生徒の興味、関心はその後の文理系志望の観点や、総合的な探究の時間のテーマにも生かされている。
録画したものを鑑賞した生徒からは、自分たちが知らない出来事がまだまだ多くある中で、その出来事の奥深さを知りつつ、他の生徒のプレゼンテーションを実際に見ることで更なる向上を見せたくなり、録画の撮り直しをしてほしい、という生徒も出た。それだけ、自分たちが調べ上げたことを多くの人に知ってほしい、という、調べ上げたことに対する自負を多くの生徒が持つきっかけとなった。
今回のプレゼンテーションにより、20世紀が単なる過去ではなく、多くの発展と犠牲を伴った時代であったと学ぶことで、今後の生徒たちの人生設計に対して一石を投じることができたと考える。
3 授業と単元のねらい
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時数 |
単元 |
内容 |
ねらい・指導上の注意点 |
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1 |
Introduction |
レッスン扉 プレゼンテーションの説明 |
・単に写真を見て、これがこんな出来事であったと知るだけでは心に響かず、記憶にも残らない。そのために、自分たちで調べ上げて、自分なりの歴史観を持たせる。 ・スライドでプレゼンテーションの詳細を発表し、昨年度の事例の一部を一緒に鑑賞しながら、どのように展開していくのかを確認する。 |
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2 |
Section.1 |
第1, 2段落の内容の確認 |
※文章の読みは主に予習前提だが、この課では臨場感を持たせるため、一緒にその場で読むことに重点を置く。 ・スラッシュリーディングを効果的に用いて、内容を理解できているかを確認する。 ・20世紀の「陽」の側面を本文から読み取らせ、現代の21世紀にその科学技術が発展していることを確認させる。 |
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3 |
Section.1 |
第3段落の確認 |
・仮定法過去の文法事項を説明し、仮定法過去は筆者が現在あるいは未来において実現する可能性が低いと思うことを述べることを併せて理解させる。 ・20世紀の「陰」の側面を本文から読み取らせ、次のセクションでその確認を行うことを示唆する。 |
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4 |
Section.2 |
第1, 2段落の確認 |
・Joe O’Donnell氏による写真を、生徒には事前に予習前に示しておく。その中で、この少年は何をしているのかを予想させる。 |
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5 |
Section.2 |
第3~5段落の確認 |
・少年の写真が何を物語っているのか、そのリアルに迫る。 ・太平洋戦争下の日常はどのようなものだったかをこの文章で理解させ、戦争の悲惨さを理解させる。 |
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6 |
Section.3 |
第1, 2段落の確認 |
・Nick Ut氏による写真が何を写し出しているかを理解させる。 ・太平洋戦争後も世界で起こっている戦争があり、その中でのベトナム戦争とはどのような戦争だったかを、説明を交えながら理解させる。 |
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7 |
Section.3 |
第3, 4段落の確認 |
・Kim Phuc氏の生還から、彼女が体験してきたことを後世に伝える大切さを理解させる。 |
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8 |
Section,4 |
第1~3段落の確認 |
・これまでに読んできたSectionを通じて、このレッスンで何を学ぶことを求められているかを、確認させる。 |
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9 |
Section.4 |
第4~5段落の確認 写真“Walk through Paradise Garden”の確認 プレゼンテーションの確認 |
・20世紀はどのような時代だったか、戦争の歴史を振り返り、我々はどうすべきなのかを考えさせる。 ・“Walk through Paradise Garden”が順天堂大学医学部の2012年度入試の小論文で使われていた事例を鑑み、この写真が物語っている内容を生徒に考えさせ、意見を求める。 ・ここまでの内容を踏まえ、20世紀がどのような時代だったのか、今一度何をプレゼンテーションで伝える必要があるのかを確認する。 |
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課外 |
プレゼンテーション(録画・撮影)・発表評価 |
・プレゼンテーションでは20世紀の「陰」と「陽」の二面性を持たせ、1つの出来事の両面を見据えた発表を行わせる。 ・生徒は録画したものを鑑賞し、その感想を生徒間で共有する。 ・本クラスの教科担当だけでなく、様々な教員に幅広く感想を求め、生徒にフィードバックを行う。 |
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〈参考文献〉
竹岡広信, 2025, 大学入試 読むため書くための英文法ハンドブック, 旺文社, P336
根本 浩 ねもと・ひろし (豊島学院高等学校)
日本大学文理学部英文学科卒業。同大学大学院文学研究科英文学専攻博士課程後期満期退学。大学・大学院では認知言語学・認知意味論を専攻し、慶應義塾大学名誉教授・田中茂範氏に師事。
教員19年目。学校法人豊昭学園に着任後、現在は豊島学院高等学校に勤務し、豊島学院高等学校・昭和鉄道高等学校の英語科主任を務める。SDGs for School 認定エデュケーター。
大学・大学院で学んだ認知言語学・認知意味論の知見を基盤に、語彙や文法を個別の暗記事項として扱うのではなく、意味や概念、文脈とのつながりの中で理解させることを重視している。また、英語を単なる「勉強」や大学入試のための教科として捉えるのではなく、「英語を使って何をするのか」という視点を大切にし、英語を通して文化や社会、科学など幅広い分野の知識や考え方に触れることのできる授業を目指している。
東北楽天ゴールデンイーグルスの大ファン。シーズン中は日本各地の球場へ足を運び、声を枯らしながらもスタンドから熱烈な応援を送っている。
『CROWN English CommunicationⅡ New Edition』(平成30年度版)─主体的で対話的な深い読みをすすめる「コミュニケーション英語Ⅱ」授業実践
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橋詰 龍

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