大友 正雄 (北九州市立黒崎中学校)
2023年11月08日
ICT機器、私はこんな場面で使っています
コロナ禍で、授業が制限された一方オンライン授業の開始などICT機器の活用は広がりました。私も、2021年に本格的にICT機器を授業で使用するようになり、失敗を繰り返しながらもICT機器の効果が存分に発揮できる場面に幾度となく出会いました。ただし、毎回の授業で、必ずICT機器を活用することを勧めているのではありません。従来通りに紙のノートに手書きで文章を書いたり、紙の辞書や本で調べたりするよさは、ICT機器に置き換えられるものではありません。しかし、一方で「ICT機器にしかできない」「ICT機器だからこそ、絶大な効果を発揮する」という場面もあります。今回は、こんな場面でICT機器を用いると効果的だったという実践を紹介します。
ICT機器の効果的な活用① 情報収集(調べ学習)は、「書籍→インターネット」という順で
情報収集の手段の一つとして、インターネット検索を利用することは一般的になっています。そして生徒の多くは、インターネット検索は「簡単に情報収集ができて、便利」というイメージをもっています。しかし、報量が膨大で、生徒が欲しい情報にたどり着けないというケースをしばしば見かけます。また、玉石混交なインターネット上の情報について、どの情報が正しいのか見極める必要もあります。
そこで、私は学校図書館にタブレットを持ち込み、まずは紙の本で調べるよう指示します。紙の本には内容を信頼できるものも多いこと、また、紙面に限りがあるので情報がコンパクトにまとめられていたり、一覧性があったりすることなど、紙の本の利点を生徒と共有します。一方で、紙面には限りがあるため、さらに詳しく調べたいときにインターネット検索を活用するように指示します。知りたい情報をある程度絞った後に検索をすると効果的です。
ICT機器の効果的な活用② 情報の整理・比較
情報や生徒の考えを比較したり、共有したりすることもICT機器の得意とするところです。役に立つ様々なアプリケーションがありますが、私は「ミライシード」(ベネッセコーポレーション)の「ムーブノート」を使用しています。説明的文章の授業で、自分の考えを共有するときには、掲示板のように活用すると効果的です。例えば、教科書から読み取った事実から、生徒自身が仮説を立て、具体的に仮説を検証するための方法を考えます。それらをクラス内で共有し、筆者の検証方法と比較するという学習です。
ICT機器の効果的な活用③ 考えの発信・伝達の練習に
自分の考えを相手に伝える時には、やはり対面で伝えるのが一番です。伝える場の広さや状況に応じた声量、相手の反応に応じて伝え方を臨機応変に変えるなど高度なコミュニケーションスキルは、伝える相手と直接対面した状況で養うことができるからです。しかし、ICT機器を使えば、対面して伝える前に、効果的な練習ができます。
私が特に効果を実感したのが「Flip(旧Flipgrid)」(マイクロソフト)です。ビブリオバトルやプレゼンテーションの練習、討論で相手の意見に対して発言するための練習など、本番に向けた練習が効果的にできます。また、アプリケーションを通じて録画した自分の話す姿を見返し、練習を繰り返し行うことで、飛躍的に伝える力が向上します。
ICT機器の効果的な活用④ ノートに書く前に
授業では、「まとめ」や「振り返り」を書く機会はもちろん、教科書で学んだことを自分の表現活動に活かす場面が多くあると思います。私も、文学的文章の教材に登場する人物になりきって手紙を書くという活動や、説明的文章の教材の構成を参考にして意見文を書くという活動を行ってきました。国語辞典を活用し、書くことが苦手な生徒にはヒントカードなどの学習支援を行います。それと並行してWordなどのワープロソフトで文章を作成するように促すこともあります。するとタイピングを繰り返しながら文章を推敲し、ある程度のまとまった文章を書き上げることができる生徒もいます。ワープロソフトで作成した文章は下書きという位置づけで、その後ノートに書き写して提出するように指示を出します。
大友 正雄 おおとも・まさお (北九州市立黒崎中学校教諭)
令和3年度 第44回九州地区中学校国語教育研究大会で、ICT機器を活用した「話すこと・聞くこと」の授業実践を行う。また令和4年度 第51回全日本中学校国語教育研究協議会において研究発表を行う。ICT機器の効果的な活用を念頭に置き、日々の授業実践に努めている。
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