ICT 実践事例紹介

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身の回りの「間」を探そう〜「間の文化」を深める〜

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中学校国語

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佐薙 昌大 (高松中央高等学校)

2023年03月30日

◼️ ICTにできること

 国語においてICTにできることは何だろうか。2023年の夏、愛媛県四国中央市から公立の小中学校の先生に向けた研修講師の依頼をいただいて改めて考えた。ICTを活用した授業については、GIGAスクール構想が始まって以来多くの議論が交わされ、多くの実践が行われてきた。いまも現場では多くの先生が待ったなしの状況下で試行錯誤を繰り返されている。ICTによって生徒の学びをどのようにデザインするか。国語に関していえば、生徒一人ひとりが楽しんで学習に取り組み、本文に向き合える授業づくりを目指すことがICT活用の本来の目的であろう。本稿は四国中央市での講演のレポートである。ICTを通じて「間の文化」をどのように学び、どのように深めるのか。読んでくださる先生方のヒントとなれば幸いである。

 

 本題に入る前に、本授業を実践するにあたってのICT環境に触れておきたい。端末については生徒1人1台端末の環境を想定した。端末の種類は問わないが、今回の活動の特性上、端末にカメラが付いていることが望ましい。学習アプリは「ロイロノートスクール」(以下、ロイロ)用いた。もちろんGoogle WorkspaceやMicrosoftの各アプリなどでも活動は可能である。

 

◼️ 「めあて」を見失いたくない

 ICTを活用した授業において、活用することに気を取られすぎて学習活動の「めあて」を見失うことが少なくない。授業の基本に立ち返って「めあて」を生徒と共有しておくといい。本授業の「めあて」は〈身の回りの「間」を探そう〉とした。

 

 説明的文章において筆者の主張を読み取ることは最も重要な目的のひとつである。しかし、机上の学習を超えて学びを深化しようとしたとき重要となってくるのが〈内容を自分ごととして理解すること〉である。「めあて」の基盤となる学習の狙いをこのように定め、筆者の視点に倣って考えていくことを指導の目標とした。

 

◼️ 「間の文化」における実践

 それでは授業実践である。ここでは第一段落で示される「空間的な間」の理解をICT活用によって深めていきたい。筆者は「空間的な間」を「基本的には「物と物との間の何もない空間」のことだ」と述べる。生徒にはここを確実に理解してもらいたい。「空間的な間」が生徒一人ひとりの暮らす空間であることに気付くことが深い学びにつながる。

 

 そのために生徒の端末で身近な空間を撮影する活動を取り入れる。身の回りから「空間的な間」を探すのだ。最も身近な「空間的な間」は教室である。しかし、ひとつ目線を外に向ければ扉一枚隔てた先の廊下も、その向こうの部屋もトイレもすべてが「空間的な間」であることに気付く。写真は気が付くかぎり何枚撮影しても構わない。写真が多い方が後の活動が充実する。活動を授業時間内で完結させるのであれば、校内をフィールドワーク的に散策しながら撮影するのが楽しい。撮影を家庭学習と結びつけるのであれば、自宅の部屋などを撮影してきてもらえる。撮影はプライバシーへの配慮などいくつかの約束が必要になるが、それもICT活用によって得られる重要な学びである。活動の範囲を学外に開けば、それだけ学びの可能性は開かれる。きっと、生徒はどのような「空間的な間」を撮ろうかと主体的に考える。生徒によっては趣味のジオラマやドールハウスなどの空間を撮影してくるかもしれない。どんな写真が集まるか、また生徒がどんな視点を持っているのか、考えるだけでもワクワクしないだろうか。

 

 

 撮影した写真はロイロに取り込み、シンキングツールのダイヤモンドランキングを用いて西洋と日本に分類する。分類の基準は筆者の記述に準じて行う。本文が的確に読み取れているかが問われるポイントである。分類は西洋と日本を二分化するのではなく、なだらかなグラデーションで相対的に行う。作業のようにどちらかに振り分けていくのではなく、ひとつの空間がどのあたりに位置するのかを考えることが大切なのである。活動の形態はグループ、個人を問わない。ただし本文から離れた活動になってしまわないよう机間巡視でサポートしたい。

 

 

 おそらく生徒たちが暮らす空間の多くは西洋を基調としたものであろう。分類後は自分たちの暮らしから、逆説的に日本の「空間的な間」とは何かを考える活動につなげていく。生徒は日本の「空間的な間」の要素や気付きをロイロのカードに箇条書きして、ロイロ上で提出する。提出結果はその場で共有する。生徒は手元の端末でクラス全員の回答を閲覧できる。他人の回答を参照することは、自分ひとりでは到達できなかった気付きにつながる。最後に一連の活動を踏まえて日本の「空間的な間」を文章にまとめる。そうすることで、活動前の自分と活動後の自分の変化を振り返り、認知することができる。またこの思考活動は、本文の最後の「和」について考えることへの土台であり伏線の役割を果たす。

 

◼️ おわりに

 四国中央市での講演は、自分自身がICT活用に改めて向き合う機会にもなった。ICTが導入されたことによって学校教育は〈教える場〉から〈学ぶ場〉へと変化を余儀なくされている。国語的にいえば、主語が変わったのである。もちろん魅力的な授業も重要であるが、生徒自身に「頭使ったなぁ」という実感をもたらすことも求められている。教室にいながら主体的な学びの可能性を広げるにはICTはうってつけのツールである。「めあて」を見失わず、国語においてICTにできることを今後も模索し続けていきたい。

 

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プロフィール

佐薙 昌大    さなぎ・まさひろ (高松中央高等学校)

高松中央高等学校教諭。近畿大学大学院修士課程を修了。専門は梶井基次郎。ロイロ認定ティーチャー、授業デザイントレーナー。文学を通じて生徒の非認知スキルを伸ばす授業を模索している。国語ラジオ『佐薙ナギの変態国語B』をRadiotalk、Spotifyなど各Podcastで配信中。

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