ICT 実践事例紹介

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「少年の日の思い出」✖️「Googleアプリ」―なぜチョウを潰したのか、「僕」の心の影に迫る―

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中学校国語

  1. その他

髙江洲 亮 (元沖縄市立山内中学校)

2023年04月19日

1.はじめに

 本校は沖縄県の中部に位置する中規模校です。生徒は明るく活発ですが、基礎基本の未定着や意欲の低さなど、学習面での課題は多い状況にあります。GIGAスクール2年目に入った今年度は、年間を通してロイロノートやGoogleアプリを用いたICT活用の授業づくりを行い、特に「思考過程の可視化と共有」に焦点を当てて、学習指導を進めてきました。今回はGoogleアプリを活用した「少年の日の思い出」の実践例をご紹介します。

 

2.単元計画と1時間の流れ

⑴単元計画

 単元の目標を「登場人物の心情の変化を、描写をもとに捉えるC 1イ」としました。第1時では、印象深いと感想に書いた生徒が多かった「チョウを潰す場面」を取り上げて、生徒とともに最終課題を下記のように設定し、最終時には自分の考えをグループ内で発表することを確認しました。そして、単元計画や最終課題、評価規準などを「Classroom」で展開し、各生徒が目標達成に向けて見通しを持って学習活動に取り組むことを促しました。­­

 

単元の最終課題:「なぜチョウを潰したのか、僕の心の影にせまる!」

第1時 本文を読んで学習課題を設定する。

第2時 各登場人物の関係や人物像を捉える

第3時 「僕」の心情変化を捉え、人物像を捉えなおす。

第4時 「エーミール」の人物像を捉えなおす

    ―エーミールは本当に良くないやつ?―

第5時 「僕」の心情を明らかにして、人物や物語の結末について自分の考えを持つ。

     ―なぜチョウを潰したのか、僕の心の影にせまる!―

 

 

⑵1時間の流れと活用したGoogleアプリ

 情報の収集(jamboard)→整理・分析(jamboard)→まとめ・表現(スライド)→ふり返り(スプレッドシート)
 学習活動に必要なGoogleアプリはClassroomで生徒に配布し(画像)、生徒はJamboardの内容をスクリーンショットでスライドに貼り付けて考えをまとめる流れで学習を行いました。また、生徒は授業の最初と最後で「個人めあて」や「ふり返り」をスプレッドシートに記入しました。(「3学習活動の様子」の画像参照)

01授業情報(Classroom)

 

 

⑶考えの共有や再構築を可能にするJamboard活用

 生徒はJamboordに本文から得た情報を付箋で記入して、それらを整理・分析しながら考えをまとめていきます。その際に、赤枠部分のように他の生徒のボードを見ることができるので、一見静かな教室に実は考えの交流が生まれていたり、他者の考えをもとにして自分の考えを再構築する様子が出てきたりします。そこで、離席を認めると生徒同士で「これどこに書かれてたの?」「この矢印→の意味を教えて。」など、質問や考えのアウトプットが活発に行われます。

02考えの交流(jamboard)

 

3.学習活動の様子

⑴第1時〜4時

 前述の通り、第1時は本文を読んだ生徒の感想をもとに単元の最終課題を設定しました。第2時以降は人物の心情や人物像を捉えることを「めあて」として、1時間の学習活動を行いました。また、各時間の「まとめ・表現(スライド)」には「チョウを潰した理由」を書く小さい欄を設けて、単元を通して最終課題を意識しながら学習を進めていけるように工夫しました。以下は第2時の生徒の学習活動の様子です。

 

03情報の収集(jamboard)

04整理・分析(jamboard)

05まとめ・表現(スライド)

06ふり返り(スプレッドシート)

 

⑵第5時/最終課題

 生徒たちは「チョウを潰した理由」を様々な描写に着目して考えていました。ある生徒が「償うことはできないと悟った」という描写に着目し、「それならチョウを潰した理由は『償うため』ではない」と意見を出すと、それがJamboard内で広がっていきました。提出されたスライドには、生徒それぞれの考えの広がりや深まりが表出していたと感じます。また、ふり返り(スプレッドシート)には単元を通してできたことやわかったことに加え、僕やエーミールの人物像や物語の結末について感じたことや考えたことを記入させました。

 

08最終課題②(スライド)

09第5時ふり返り

 

 

4.実践を終えて

 今回、1学年の国語授業において、複数のGoogleアプリを活用し、「情報の収集→整理・分析→まとめ・表現→ふり返り」の流れで学習活動行いました。この実践の特徴は、「①生徒の活動時間が十分に確保できること」、「②考えの交流が即座に行われること」、「③生徒、個々の力に応じて学習が進められること」「④教師が生徒状況をリアルタイムで把握でき、必要な支援を行いやすいこと」が挙げられます。③④については学びの個別最適化に向けて重要な要素だと感じます。また、生徒たちが教科書や端末を食い入るように見ながら、自分たちで学習を進める姿に、授業における教師の役割を見直していくことの必要性も感じました。今後も私たちが大切にしてきたこれまでの国語科の学習指導に、ICT活用を融合させた授業づくりに挑戦していきます。

 

 

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プロフィール

髙江洲 亮    たかえす・りょう (元沖縄市立山内中学校)

2021年のGIGAスクールスタートより、Googleアプリやロイロノート等を活用して、「ICT活用」と「見方・考え方を働かせて考えを深める言語活動」を軸に授業づくりを行なっている。

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