大友 正雄 (北九州市立黒崎中学校)
2023年11月08日
まずは国語の授業でお気軽に・・・
私がICT機器を授業で導入したのは、2021年のコロナ禍がきっかけでした>。感染予防のため、私が勤める中学校では、対面での話し合い活動が一時禁止されました。対話的な学びの機会を確保したいと思い、コミュニケーションツールである、Microsoft Teams により、ヘッドセットを併用したウェブ会議である「ブレークアウトルーム機能」を用いたり、テキスト入力による「チャット機能」を用いたりしました。同時期にオンライン授業も始まり、ICT機器を使う場面が格段に増えました。手探り状態で、失敗もありましたが、「やってみようかな」という気軽な気持ちでICT機器を取り入れた結果、「ここは、ICT機器にしかできないよね」や、「この場面はノートやワークシートなどの紙面の方がいいよね」などと改めて気づくきっかけになりました。
何より、教師が授業改善のために新しいものを取り入れようとする姿は、生徒たちに必ず伝わるものです。「生徒がタブレットで遊ぶのではないだろうか」「準備や操作が難しそう」と感じる先生方もいらっしゃると思いますが、まずは使ってみましょう。そのうえで、先生方のスムーズな授業展開の一助になればと思い、私の授業での気づきをお伝えいたします。
ICT機器(タブレット)を使う前に① 約束事や指示の確認
「タブレットを使って授業中に別のことをしたり、遊んだりするのではないか」という心配は、教師の誰もがもっていることと思います。そこで、「学習に関係のないことをしていた場合は、クラス全体で使用をやめます」と最初に伝えます。
また、本時のねらいを明確にし、生徒自身が「今からタブレットを使って、この学習をする」と学習活動が分かるように教師がはたらきかければ、遊びだす生徒もいなくなるでしょう。また、話し合い活動と同様に、タブレットを使っている最中は、教師の指示が通りづらくなる場合もあります。指示や説明はシンプルに、タブレットを生徒が使う前に行いましょう。
さらに、「今から10分間で、自分の考えを(ネット上の)カードに書き込みましょう」というように時間を具体的に設定します。よく「まだできていない人が多いようなので、10分延長します」という声かけをしてしまいがちですが、それを繰り返すと生徒は暗に「最初の時間は守らなくてよい」というメッセージ(ヒドゥン・カリキュラム)を受け取ってしまいます。そこで、時間は決して延長せず、「今できているところまでで一度確認(評価)します。タブレットを片付けましょう」という指示を出します。それを習慣づけることで生徒は時間を意識しながらタブレットを使用できるようになります。
また、ICT機器の利点の一つは、成果物をクラス全体で簡単に共有できるということです。そのため、授業中に即時的に評価を行い、生徒のよい例をクラスに広げることもできます。授業中でなくても、なるべくその日のうちに評価を行い、次回の授業でよい生徒の姿や成果物を他の生徒に伝えることが大切です。これはICT機器の使用だけに限らず、どの授業の場面でも生徒の意欲の喚起につながります。
○ ICT機器を使う前に、生徒とルールを共有する。
○ 具体的な使用時間を設定する。
○ 即時的に評価し、よいものは他の生徒に広げる。
以上の三つのポイントを意識すると、メリハリのある授業が展開できるでしょう。
ICT機器(タブレット)を使う前に② ICT機器の準備
本市では、タブレット保管庫に充電ケーブルが設置され、決められた時間になると充電が開始されるようになっています。基本的には、1日の始まりにタブレットが充電されていますが、保管庫に収納するときに充電ケーブルを差し込み忘れ、充電できていないという場合もあります。延長コードと予備の充電ケーブルを準備しておき、タブレットの充電切れに対応しましょう。しかし、授業の前に教師一人で準備するのは大変です。ですので、授業の開始前に大型テレビや充電ケーブルなど教科の係など生徒にセッティングしてもらい、それを習慣づけるとよいでしょう。
ICT機器(タブレット)を使う前に③ 机上の整理
ICT機器の破損も、教師の悩みの種の一つだと思います。それを避けるために、タブレットなどを使用するときには、机上を整理するように指示をします。教科書やワークなど一時的にしようしないのであれば、タブレットを机の真ん中に置き、他の物は重ねて机の端に置くように習慣づけましょう。また、タブレットを机上に置いたまま、話し合い活動のために机を動かすと落下の原因になります。最初に机を移動させた状態で、タブレットを設置するようにしましょう。また、タブレットを使用する際には図書室や視聴覚室など机の広い場所で授業を行うこともよいでしょう。
また、教科書や紙のファイルの間にタブレットを挟み、移動する生徒もいます。紙でタブレットを挟むと滑りやすく、落下してしまいます。
最初に破損しないための留意点を伝えることで、破損してしまった後の生徒への指導もしやすくなります。
大友 正雄 おおとも・まさお (北九州市立黒崎中学校教諭)
令和3年度 第44回九州地区中学校国語教育研究大会で、ICT機器を活用した「話すこと・聞くこと」の授業実践を行う。また令和4年度 第51回全日本中学校国語教育研究協議会において研究発表を行う。ICT機器の効果的な活用を念頭に置き、日々の授業実践に努めている。
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