森田 直実 (板橋区立赤塚第二中学校)
2022年04月28日
1.はじめに
板橋区ではchromebookを使用し、授業を行っている。昨年度から一部の教科で、生徒用デジタル教科書の実証実験がはじまり、本校は国語で実施することができた。本校はもともと区からICT活用実証実験校やJAETの先進校として表彰されている学校であり、一人一台端末の使用については活用が進んでいたと感じる。今回の生徒用デジタル教科書の使用で一人一台端末の活用がさらに深まったので、実践記録とする。
2.実践事例
(1)単元名 「批判的に読むこと」「間の文化」
(2)単元の目標 文章の構成や論理の展開の仕方を捉え、評価する
(3)使用したデジタル教科書の機能 デジタル教科書本文・書き込み機能
(4)授業の内容
『間の文化』では文章の構成や論理の展開の仕方を捉え、評価するという目標で授業を行った。前時に『批判的に読むこと』で3つのポイント(①はたらきかけながら読む②推し測って読む③考えをつくるために読む)を学習し、一文一文を吟味しながら読む練習を行った。『間の文化』でも同様に一文一文を吟味して、文章の展開や筆者の意見に関して、生徒が評価する授業を行った。今までにも文章を読み、教科書に自分の意見を書き込みながら読み進める授業を行ってきたが、線を引く作業は直接教科書へとなると躊躇する生徒も多い。間違ったら嫌だ、汚くなってわかりにくくなりそうだという心情でなかなか線が引けない生徒も多くいるのである。今回はデジタル教科書に線を引かせるという試みをはじめて行った。
【実際に線を引いた様子】
前時に学習した『「批判的に読む」とは』に引かれている3つのポイントに、それぞれ色の指定をし、デジタル教科書に線を引いた。デジタル教科書を使って線を引く作業は初めてではあったが、書き込みボタンから色の指定ができることや線の細さを設定できることを伝えると生徒達は黙々とPC画面に向かい、線を引き始めた。間違っても簡単に消せるという意識があるからか、教科書に直接引くよりもハードルが下がり、引けていたように感じる。また、批判的に読むことの練習で行った教科書の前ページ『「批判的に読む」とは』の部分を紙の教科書で見ながら、デジタル教科書に線を引く姿が多く見られ、紙の教科書を参考書として使いながら、デジタル教科書で作業ができるという副次的な効果も得ることができた。生徒それぞれが、文章の内容について吟味することができ、線を引き考えられた結果、筆者の意見を鵜呑みにすることなく、文章の中から疑問や筆者の意見に納得できない部分を視覚化でき、自分の意見の根拠とすることができた。
3.成果と課題
授業の最後には「日本の文化について自分の意見をもつ」というテーマで意見文を書いたが、『間の文化』の筆者の意見を評価した部分を根拠としながら意見文を書き進めた。筆者の意見に同意し意見文を進める生徒や、筆者の意見を引用し反駁する材料としている生徒が多くいた。生徒はポイント「①はたらきかけながら読む」や「③自分の考えをつくるために読む」の線をもう一度読み直し、特に「③自分の考えをつくるために読む」の部分を意識して再度読み、評価をしながら書き進めることができた。
また、文章を書くことが苦手な生徒も、線を引いたところを示し、「ポイント③の部分については賛成か反対か。それはなぜか」という支援を行うことができた。文章が苦手な生徒でも線が引いてあれば、教師側も支援がしやすく、全員が意見文を完成させることができた。
4.結びに
今回、生徒用デジタル教科書を使用して、授業を進める上で特につまずきのある生徒にとって補助になることがわかった。また、生徒用デジタル教科書はWEBにつなげる環境であれば自宅のPCからでも読むことができる。個別の学びにとってこれから必要なものになるだろうと感じた。また、教師用デジタル教科書に搭載されている音読機能等が生徒用にも搭載されれば予習等にも使用できると考えている。デジタル教科書で生徒の個別最適な学びを支えていけるのではないだろうか。
森田 直実 (板橋区立赤塚第二中学校主幹教諭)
<研究歴>
平成27年度 東京教師道場部員 平成29年度東京教師道場リーダーを務める
平成31年度 東京都教育開発研究委員会 (中学校 国語)
令和2年度 東京都新しい指導と評価研究委員会 (中学校 国語)
また、平成30年度より東京都中学校国語教育研究会第二分科会に所属している
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