村上 渉 (福岡市立千代中学校)
2022年02月24日
1.はじめに
中学生が学習する文法事項の中でも、混同しがちな「文の成分」と「品詞の分類」。「言葉のきまり」は、目に見えにくいものであるが故に、生徒も具体的なイメージを持ちづらく、指導法に苦慮されている先生方も少なくないのではないでしょうか。ここでは、そうした文法事項の学習内容を視覚的にわかりやすく、また、ゲーム感覚で学ばせるためのICTを活用した実践例を紹介します。
2.ICTを活用した文法学習「いつどこゲーム」
生徒たちに、より適切な言葉を考える力をつけさせることを目的として、生徒たちが忌避しがちな文法の学習を楽しみながら行えるように、ICTを活用したゲーム形式の学習「いつどこゲーム」を考えました。「いつどこゲーム」とは、「いつ・どこで・だれが・何をして・どうなった」という指示項目に従い、言葉を当てはめ、ひとつの文を完成させるという遊びです。この遊びをGoogleアプリケーションの「スプレッドシート」を使用して学習教材にアレンジ。(表1)
この表1の「主語」や「述語」といった文の成分は入力した状態で開始します。これらが「指示項目」の役割を果たします。生徒はその左の枠に、指示項目に従った言葉を考えて入力していきます。入力する言葉は、表の右側の文の成分に合うように、尚且つ、前後の言葉と合わせて文が成立するように選ばなければなりません。 |
3.実践-応用と単元にあわせた難易度の工夫
この学習教材は授業における「説明」に変わるものではなく、あくまで学習定着を図るための活動として、中学一年生が学習する「文の成分」から「品詞の分類」の間に取り入れ、まとめにも使用します。以下はシートの使い方の詳細です。
【授業形態】班学習(4人~6人を想定)
【必要な教材】指導者用パソコン、生徒用パソコン(1人1台)、国語辞典、教科書等
【シートの説明】
①班の中で入力する順番を決定する。
②班員は配布されたシートを開く。(表参照)
(シートのコピーを作っておくと互いの班の解答確認もできます。)
③①で決定した順に、指示項目に合う言葉を考え入力していく。(表2)
④班の全員が入力し、文が完成したら挙手をして授業者に知らせる。授業者はその場で正誤判定を入力する。
⑤正誤判定で「×」があった班は話し合い,間違っている箇所を訂正し,判定が全て「〇」になった班は次の問題に移る。(表3)
このシートは以下のように応用させることができます。
また,単調な課題にならないように以下の工夫をすると効果的です。
①同じ言葉を使わない。
②話し合いを行わない。
③入力する順番を変える。
さらに,支援の方法として以下のような手立てが考えられます。
①言葉を辞書で調べる。
②言葉が埋まらない生徒の順番を最後にする。
③他の班のシートを参考にする。
4. 実践報告と生徒の感想
課題に取り組む時間は,文の成分を学習したばかりの生徒(1年生)が4人で班を作った場合であれば1問あたり3分程度,難易度を上げ,連体修飾語や連用修飾語を取り入れると,5分程度の時間がかかりました。1枚のシートに6問用意したところ,早い班が終わった段階で,最も遅い班と3問の差が出ました。
基本問題として主語・述語・修飾語のみの問題に取り組ませたところ,修飾語の箇所に主語を書き入れ,連文節を作った班がありました。そういった解答は保存して,連文節の授業に例として提示してみることにしました。
【生徒の感想】
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授業後に生徒に感想を書かせたところ,多くの生徒が「楽しく取り組めた」「またやってみたい」と答え,「楽しみながら学習する」という目的は達成できたように思いました。また,同じ言葉を使わないという制限を設けることで,より適切な言葉がないか考え,生徒自ら辞書を引く姿が見受けられました。
村上 渉 むらかみ・わたる (福岡市立千代中学校)
福岡市立千代中学校教諭。大学ではゆとり教育と新学習指導要領について研究。「対話で育む国語力」をテーマに,ICTを活用しながら言語活動の充実を図る。生徒が「もう一度受けたい」と思う授業作りを目指す。趣味は「おしゃべり」。
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