ICT 実践事例紹介

ICT 実践事例紹介

『クジラの飲み水』×『GIGA』 〜反転授業による自立型学習〜

  1. 印刷する

中学校国語

  1. 学習者用デジタル教科書

山科 祐一 (親和中学校・親和女子高等学校)

2021年08月31日

1.自分で考え学ぶ生徒を育てるために

 GIGAスクール構想で本校中学生に1人1台タブレット端末が配備され、学習者用デジタル教科書と授業支援アプリ『ロイロノート・スクール(株式会社LoiLo)』(以下、ロイロノート)がインストールされた。新学習指導要領を見据え、「教師がどう教えるか」から「生徒がどう学ぶか」に視点を移したときに、teachの工夫よりもcoachの工夫をしていく必要があると考えるに至った。

 

 説明文の基本構造を学ぶ『ペンギンの防寒着』(上田一生 著)。それを踏まえて「段落と段落の関係に着目しながら、文章の展開を捉え、内容を読み取る。」ことを目標に掲げる『クジラの飲み水』(大隅清治 著)を、生徒がどのように学んでいくのが良いのかという授業手法を考えたときに「反転授業」にしようと思い、以下報告する。

2.授業デザイン

① 事前準備

 

 スマホのビデオ機能を用いて、授業動画(約40分)を作成。カメラの前で一切の板書も本文提示もなく、ひたすら解説し続ける。収録後、編集せずにそのまま動画をYouTubeに限定公開でアップロードし、URLを生徒に配布する。

 


事前視聴動画(画像のため、クリックしても再生されません)

 

② 自宅で事前学習(知識・技能、書くこと、読むこと)

 

 生徒は各自でYouTube動画を視聴し、必要に応じて、教科書に書き込み、自分だけの参考書を作り上げていく。その上で、各自がテスト問題を自作し、問題、解答、解説をロイロノート上で作成し、提出箱に送信。

 

作問の提出一覧

 

③ 授業展開1コマ目(知識・技能、読むこと)

 

 教室の電子黒板に生徒の自作問題を表示し、教師が問題について講評する。これを通して生徒たちは自分の作った問題を相対化し、次回作成の参考にできる。また、教材理解についての補足説明も加えることができる。10人程度講評し授業終了。

 

生徒の作問例

 

④ 授業展開2コマ目(話すこと・聞くこと、書くこと、読むこと)

 

 提出箱の「共有」を許可する設定に変え、生徒たちが全員の作成した問題を見ることができる状態にし、50分間、ひたすら友だちの問題を解き続ける。この際、デジタルか紙のノートを用意させ、きちんと書いて解くように指示する。また、よく分からない場合は、作成者に直接質問しにいくことも許可している。

3.授業を終えてみて

 4月に入学してきて、GW明けすぐの授業展開であったため、反転授業の形態としては、とてもシンプルな展開に抑えてみた。すると、生徒たちはしっかりと問題作成に取り組んでくれ、提出しない生徒も、1コマ目の授業を経て、2コマ目までには提出することができ、全員参加型になれた。以下、何点か気づきを報告しておく。

 

① 学習者用デジタル教科書

 

 線を引いたり、消したり、スクリーンショットを撮って切り取ったり、一部を隠して空欄補充問題を作ったり、とても便利なものとして生徒たちは使っていた。紙の教科書をPDFにした仕様ではあるが、紙でもデジタルでも好きな方を使っていいよと言うと、実に7割以上の生徒たちがデジタルを選択していた。教師が使い方を考えるよりも生徒の自主性に任せてみると、とても活きるコンテンツだと感じた。

 

② 授業動画

 

 191名の生徒に対して、再生回数が475回。対面での一斉授業で説明をし尽くしたとしても、生徒たちは実は理解できていないことに気付かされる。また、わかりたいと思い繰り返し一斉授業動画を見る「主体性」も評価したい。

 

③ 問題作成

 作問を通して、自身の読解を深めていくこととなる。また、友だちの問題を解くことで、自分も作ったからこその、驚きや発見などがある。そして、何人もの問題を解くことを通し、自分のミスに気づいたり、教材そのものの理解を自然と深めていたりしたようだ。教材の目標である「段落と段落の関係に着目しながら、文章の展開を捉え、内容を読み取る。」は、問題作成と解答を繰り返すことで達成できたと考えられる。

 

④ 「生徒がどう学ぶか」という視点

 

 生徒がこちらの想定する深度まで学べているのかどうかは気になるところであった。1学期中間考査において、いわゆる板書型一斉授業を行った『竜』との得点率を比較してみると、『竜』の得点率が50%程度だったのに対して『クジラの飲み水』は80%を超える結果となった。一つ一つの教材を、教科書の目標に沿ってどのような授業手法で達成していくかというのは今後の大きなテーマだと感じている。

印刷する

プロフィール

山科 祐一    やましな・ゆういち (親和中学校・親和女子高等学校)

親和中学校・親和女子高等学校教諭。ロイロ認定ティーチャー・シンキングツールアドバイザー。全国の先生方との交流の中で「生徒がワクワクする授業」を模索している。関西英語授業研究会Harvestや三省堂国語教育オンラインセミナーなど登壇多数。共著に『大学入学共通テスト実践演習 論理・文学編』(数研出版)など。

バックナンバー

    

『クジラの飲み水』×『GIGA』 〜反転授業による自立型学習〜

2021年08月31日
山科 祐一

詳細はこちら

    

ページトップ

閉じる

先生向け会員サイト「三省堂プラス」の
リニューアルのお知らせと会員再登録のお願い

平素より「三省堂 教科書・教材サイト」をご利用いただき、誠にありがとうございます。
サービス向上のため、2018年10月24日にサイトリニューアルいたしました。
教科書サポートのほか、各種機関誌(教育情報)の最新号から過去の号のものを掲載いたしました。
ぜひご利用ください。

はじめての方へ 三省堂プラスとは?
「三省堂プラス」は、教科書を使った指導などをサポートするための会員サイトです。
全国の小学校、中学校、高等学校(高等専門学校を含む)、特別支援学校の先生方、
教育委員会関係の方にお使いいただけます。ご登録・ご利用は無料です。
これまで会員登録されていた方へ
サイトリニューアルに伴い、会員システムが新しくなりました。
大変お手数ではございますが、会員の再登録をお願い申し上げます。