三省堂のWebコラム

工藤洋路&津久井貴之のEnglish Coffee Break

第21回:ディベート・ディスカッションは,言語活動の「集大成」

工藤洋路,津久井貴之

2019年11月06日

工藤

さて,冬も近づき,だんだん寒くなってきました。この時期は,どうしたって忙しくなりがちですが,体調に気を付けてがんばっていきましょう。

 

津久井

ですね。

 

工藤

先生方に時々ご相談をいただくことで,せっかく津久井先生と話すからと思って持ってきたテーマがあるのだけど。

 

津久井

なんだろう?

 

工藤

「学期の終わりや学年末にディベートやディスカッションに取り組んでも,なんだかうまくいきません」っていうご相談。

 

津久井

なるほど。自分も試行錯誤しているテーマだね。

ディベート・ディスカッションがうまくいかない!?

津久井

自分が中学校で教えていたときのことを思い出しても,「なんとか活動を成立させたい」っていう気持ちが先行して,入念な事前準備の結果,いざ活動をしてみると予定調和になっちゃったり…。

 

工藤

そうそう。あと,相手の発言に関連して質問したり,それに答えたりっていう,いわゆる即興的な部分がうまくいかないから,それぞれが用意した原稿をただ読むだけみたいになって,議論自体がかみ合ってないっていうのもありますよね。

 

津久井

本当は,うまくいかないときにこそ,活動の途中かもしれないけど,いったん止めて考えさせるとか,「どういうふうに話していいかわからなかったら,相手の言いたいことは何か考えてみよう」と声をかけるとか,そこで授業的な崩しができるかどうかが大切だと思うのだけど…。

 

工藤

特にディベートは型がきっちりある分,その型通りに進めれば活動が成立しそうな気がするし,それを崩してまで指導するっていうことに抵抗がある先生もいるのかもしれませんね。

 

津久井

ディスカッションでも,「1人2文ずつ意見を言いましょう」だけ生徒に指示をすると,本当に1人2文話して「はい,ディスカッション終わり!」みたいな感じになっちゃう。自分もいつもご質問いただいた際にお伝えしているのだけど,「いやいや,それは,1人ずつスピーチしただけでしょ」って。

日々の言語活動からスキルを積み上げよう

津久井

多くの先生方のご認識のように,ディベートやディスカッションが,言語活動の「集大成」っていうのは間違ってなくて,でも,1年間いろんなスキルを学びさえすれば自然にできるようになるかっていうと,そういうわけじゃないよね。ディベートを学年末にやるって決めたなら,そこから逆算してディベートに必要なスキルを鍛えておかないと,自然にはできるようにならないと思うよ。 ディベートやディスカッションが,「とっておきの活動」になりすぎているのかなぁ。

 

工藤

普段の帯活動でしている,生徒同士のペアでの対話活動だって工夫はできるよね。「朝ごはん何食べた?」じゃ日常のレポートで終わってしまうけど,例えば,一緒に食べるって前提を作って「夜ごはん何食べる?」なら,ディベートやディスカッションの練習になる

 

津久井

食べ物の好みもきっと違うはずだから,やり取りした結果,歩み寄ってどこかのレストランに行くってなるかもしれないし,あるいはやっぱり別々に行こうってなるかもしれない。

 

工藤

そう,ディベートやディスカッションで設定するテーマって生徒にとっては難しいと感じることも多いはずだから,身近なトピックから始めるのは大事。生徒は気づかないけど,日々のちょっとした対話がディベートやディスカッションの練習になっている,みたいに仕組んでおかないと,これまでの英語学習の集大成でディベートをやりますって言ってもできないと思う。

 

津久井

そう,そう,即興的なやり取りは普段からやらないと,できるようには絶対ならない。

あとさ,倫理的・道徳的にこっちだろうっていうものをテーマにしちゃうとやり取りに発展がなくなってしまうよね。

 

工藤

ああ,「SNSへの顔写真掲載について,どう思う?」ってテーマだと,「やめたほうがいい」で合意しちゃって,反論や別の意見があまり出てこないね。

 

津久井

そうそう,そうじゃなくて,相手の意見に「そうじゃない,こうだよね」って反論してもいいし,同意して「もう一つこういう理由もあるよね」って加えられるような展開になるといいよね。

 

工藤

あとは,ディベートがうまくかみ合わないのは,相手の意見に「関連して」話すっていうトレーニングができてないってことだから,ペア活動をする際に,あえて「相手の意見に関連して,自分の意見を言いましょう」って条件付けしてしまうのも手ですね。

 

津久井

そういうロールやタスクでの条件付けは大事だね。そうしないと,意見を出し合うような場面でも,相手が話している間に次に自分が話すことを考えちゃって,肝心な相手の発言をほぼ聞いてないということが起きてしまうから。

 

工藤

「自分の意見も言いなさい」くらいの条件付けだと,相手が何を言っていようが自分の意見を言えばいいや,みたいになっちゃうしね。これに特化した,「今から先生があるテーマについて意見を言うから,その意見に関連する質問やアイディアを出してみて。単に自分の意見を言うだけじゃだめだよ」というような活動も必要かもね。

 

津久井

これはペアでの対話活動じゃないけど…,この間授業でペアでのリテリング活動をしたのね。で,話す内容がお互い知っている教科書本文の内容だったから,ただリテリングするだけじゃつまらないと思って,「聞いている人は,途中でターンをとって,さも自分が言ったかのようにまとめを言ってみよう」ってしてみたのね。

これだと,相手が言っている内容を理解しなくちゃいけないし,ターンテイクするスキルも含めて,ディスカッションやディベートにもつながる練習になるかなって。

 

工藤

レベル高いなあ。そこまでするのは難しくても,I have the same experience. とか,I don’t think so.とか,そんな一言を相手の発話に対してリアクションするだけでも,立派な一つのトレーニングになるよね。ディベートやディスカッションを行うのに必要な下位スキルを取り上げて,ちょっとずつ練習するのが大事だね。

 

津久井

そうだね,ディベート・ディスカッションに必要な要素を普段の言語活動の中にちりばめていって,最後にそれらを統合した「集大成」として,大きな活動ができるといいね。

※この連載は,お二人のざっくばらんなおしゃべりを企画化したものであり,工藤先生・津久井先生の公式発表ではありません。

プロフィール

工藤洋路    くどう・ようじ
玉川大学,「NEW CROWN」編集委員

・1976年生まれ

・東京外国語大学外国語学部・同大学院博士課程前期・同大学院博士課程後期修了(学術博士)

・日本女子大学附属高等学校教諭等を経て,現在玉川大学文学部英語教育学科准教授

・高校教諭時代に担当した部活動は,陸上部

・カフェでよく注文するのは,カプチーノやフルーツジュース

プロフィール

津久井貴之    つくい・たかゆき
お茶の水女子大学附属高等学校

・1974年生まれ

・群馬大学教育学部・同大学院修了

・群馬県内の公立中高一貫校教諭等を経て,現在国立お茶の水女子大学附属高等学校教諭

・指導のモットーは,固定観念にとらわれずにチャレンジしていく

・カフェでよく注文するのは,ニューヨークチーズケーキとコーヒー

『NEW CROWN』の詳細はこちら

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