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継続したReading Writing指導
~読んだ内容について、感想や意見文を書く~

  1. 印刷する

中学校英語

堀米 美恵子 (箕面市立第六中学校)

2024年04月10日

1.はじめに

 作文指導の難しさとして、英語で作文を書くということは自分の意見を英語で伝えることであり、自分の意見を持つことが求められますが、中学校段階でそのような「考える力」をつけさせるのが難しいこと(川名, 2014)が挙げられます。教科書本文を読んだ後その内容をもとに書かせる活動(Post-Reading活動)を行い、「考える力」、つまり、どうやって自分の考えをまとめていくのかを考える力を鍛えた実践を報告します。

 

2.指導内容

(1) Post-Reading活動その1

 各単元で読んだ内容について、問いづくり、Summarizing、Story Retellingを行い、「読んだ英文をもとに書く」ことを繰り返しました。Summarizingにおいては、生徒の発言をつなげながら英文を板書する、ある生徒の英文を紹介しそのあとに続く文を考えさせることで、生徒に「これならできそう」と思わせ、生徒の書こうとする気持ちを後押ししました。

 

 

(2) Post-Reading活動その2:定型文をもとに意見・感想を書く

 Summarizing に慣れてきたら、その最後に、自分の感想を1文書き足すことを促しました。自分の感想を書くときによく使う表現を、参考に、次の5文を示しました。

 

 ・I think ~.「~だと思う」
 ・I’m sorry that ~.「~を残念に思う」
 ・I didn’t know that ~.「~を私は知らなかった」
 ・I was surprised that ~.「~に私は驚いた」
 ・It makes me feel ~. 「そのことは私を~な気持ちにさせた」

 

 教科書の読み物教材や、感想を書かせるのに適した単元において、この表現を使った活動ができます。この5文に、教科書の本文や、自分の使いたい形容詞を、~の部分に当てはめて書くという方法は、いたってシンプルで、未習文法であっても、生徒は上手に使うことができます。また、この5文を使って感想を書かせる場合、文の順番を変えて書くだけで文章の印象が変わります。第1文目にどの表現を使うのかを生徒に吟味させることが、生徒自身の考えをまとめさせる良い練習になります。

 生徒がストーリーをよく知っている教材「ごんぎつね」を使って、ごんへの手紙を書く活動を行いました。「このお話の中でどの部分に驚いた?」「どの部分が悲しかった?」「ごんはどんな気持ちだったと思う?」と教師の質問に対する自分の答えを定型文にあてはめて書くことができます。5つの定型表現の組み合わせの順番を自分で考えることで、生徒の個性のあらわれる温かい手紙ができました。

 

 

(3) Post-Reading活動その3:パラグラフの型をもとに意見文を書く

 意見文のパラグラフのうち、IntroductionとConclusionの部分は教師が示したうえで、Bodyの部分を考えさせました。Bodyの部分においては、つなぎ言葉(first, second, third)を使って自分の意見と、その根拠を具体的にかつ明確に書くことを指示し、その意見と根拠につながりがあるのか意識させました。

 

 ① 教科書の本文から、「いいな」と思った個所を3つ選び、下線を引く。
 ② その部分に対し自分の意見または感じたことを書く。
 ③ 自分がそう思う理由と根拠を述べる文をさらに1~2文程度付け加える。

 

 ①②の手立てとして「どの部分がいいと思った?」「その部分に対してどう思った?」とペアで意見をシェアさせました。その生徒の意見を拾い、クラスで共有しました。「教科書のどの部分に線を引いた?」「それに対してあなたはどう思った?」と生徒Aに質問した後、生徒Bに、「Aさんはこの部分についてこう感じたけれど、あなたはどう思う?」と質問し、Aとは異なる意見を引き出しました。同じ文を読んでも感じ方が違う点に気づかせたあと、「さらに詳しく説明すれば、AさんとBさんの感じ方の違いが、読み手に伝わるよね。あなたの考えが伝わるように、もう1文書こう」と、③につなげました。

 

3.考察

 Post-Reading活動を3年継続した結果、生徒は本文のどの部分を抜き出すのか考えるため、本文を繰り返し読み、それが語彙の定着につながりました。また、文と文のつながりを考えることで、代名詞や冠詞の使い方に意識が向けられるようになりました。
指導において、「相手に伝わる」英文を書くこと、自分で考えた後にほかの生徒の作文を読み、自分とは違った考え方に気づくことを大切にしました。この繰り返しが、どうやって自分の考えをまとめていくのかを考える力を育むと感じています。

 

4.おわりに

 2021年度入学の中学1年生への書く指導は、「読める単語、話せる英文を中心に書く」指導からゆるやかに始め、「読んで理解した英文を使って書く」実践を3年間、継続して行いました。上記の「指導内容」も①から②、②から③へと緩やかに進めました。教師が生徒の自由な発想を楽しむことで、生徒の発想力も鍛えられ、作文指導も楽しいものになると期待しています。

 

参考文献

川名隆行. (2014). 【中学校の現場から】「書くことの指導」をめぐる課題.英語教育, 62, 27.

細川昌弘. (2011). 研修成果報告書 平成23年度英語海外派遣研修 研修成果報告書, 205-210.

堀米美恵子. (2014). 中学校におけるWhy/Becauseを意識させるライティング指導. 英語授業研究学会紀要 –Journal of Teaching English-, 23, 44-59.

堀米美恵子. (2015). 文と文のつながりを意識させる英作文指導―Language Artsの問いかけを援用して―. 英語授業研究学会紀要 –Journal of Teaching English-, 24, 86-98.

村野井仁. (2006). 第二言語習得研究から見た効果的な英語学習法・指導法. 大修館書店.

大井恭子. (2008). パラグラフ・ライティング指導入門–中高での効果的なライティング指導のために–. 東京:大修館書店.

三森ゆりか.(2003). 外国語を身につけるための日本語レッスン. 白水社.

 

注:

「英語の先生応援セミナー」での講演 (2018年3月) 山本崇雄 「Question Making(問い作り)の授業デザイン」

 

 

【生徒作品】ごんへの手紙・兵十への手紙

 

 

【生徒作品】アンネフランクについての意見文

There are many great things about Anne Frank. First, she began to write a diary from her thirteenth birthday. I think to write a diary is very easy, but it’s difficult to write what is happening around you. Next, she always had her own mind. She didn’t understand why she couldn’t live in peace and kept writing the diary. I can’t believe that she was the same age as us! Then, she had a positive heart. She never despaired for her life. I think if I was Anne, I would despair and couldn’t do anything at all. So there are many great things about Anne Frank.

 

【生徒の内省記述】普通の女の子だったら考えないようなことをアンネはいろいろ考えて生きてきたので、できるだけ自分と比べて書くように気をつけました。アンネの考えや行った出来事を最初に挙げて、自分がすごいと思うことを書きました。いろいろな表現でアンネがすごいということを書くのが難しかったです。

 

 

【生徒作品】国際貢献に必要なこと

 

 

 

【ワークシート】

 

 

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プロフィール

堀米 美恵子    ほりごめ・みえこ (箕面市立第六中学校)

大阪府箕面市立第六中学校勤務。2023年度まで2年間、箕面市英語コーディネーターを務め校内の教員とよりよい英語指導を目指し研究を行う。2016年3月関西大学大学院外国語教育学研究科博士課程前期課程修了。

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