川原 正敏 (灘中学校・高等学校)
2021年05月14日
現在担当している中学3年生が1年生の頃から『クラウン チャンクで英単語 Basic』を使わせてもらいました。元々本校では検定教科書の『NEW CROWN』3学年分を中学2の夏~秋ぐらいまでに終え、中学2年で「コミュニケーション英語I」、中学3年で「コミュニケーション英語Ⅱ」に入るというのが一般的なスピードです。その基本ラインに合わせていかに語彙力をつけさせるかについて考えた結果、①基本は教科書に出てきている語彙をしつこく粘っこく使い回す、②それを補足的に補う形でチャンクを使う、という形に到達しました。具体的に意識したことを4点お伝えします。
1.単語テストは行わない!
単語テストは行いませんでした。本当は行いたかったのですが、教科書のレッスンごとの小テストと、文法の単元ごとの小テストを行っていたので、これに単語テストも入れたらテスト漬けになってしまいます。その代わりに定期考査では範囲を決めて必ず出題しました。形式は単純に日本語を英語に直す問題、3択問題、穴埋め問題、英作文など毎回同じ形式で、生徒が勉強しやすいように工夫しました。結局チャンクは2年間で2周しましたが、定期考査に出題する数も1週目よりは2週目のほうが多くなるように設定しました。
2.隙間時間を使って音読トレーニング!
やはり教科書を進め、文法もやっていかなければならないので、単語の練習ばかりに時間を割くわけにはいきません。といっても「家でやっとけよ!」だけではやらない生徒のほうが大半になるでしょう。ですから、生徒には毎時間チャンクを持ってきておくように指示し、授業が5分余った時などに次の定期考査の範囲の音読練習をできるだけ頻繁に行うようにしました。といっても持ってくるのを忘れる生徒もいるので、「こちらが日本語→英語の順番で言うから、チャンクを持ってこなかった残念な人は、聞いて繰り返すことに集中しよう」と言って危機感をあおりつつ、少しでも練習して語彙力増強につながるように工夫しました。
3.音声を活用するように促す!
家庭での練習ではできるだけ音声を活用するように指示しました。特に三省堂さんの場合は「ことまなS」という秀逸なアプリが無料でダウンロードできるので、生徒たちには積極的に使わせたいところです。また、一斉休校期間などにはYou Tubeに宿題考査の範囲の音声を説明付きで吹き込んだりもしました。もしよかったら「You Tube川原正敏」で検索してみてください。それと音声という点では、今まで通り発音記号、アクセントは意識して音読練習をしました。大学入試共通テストから出題されなくなろうとも、リスニング力を上げていくためには必須だと思うからです。いくつかのアクセントの法則も何度もしつこく言及して頭に残るように努めました。
4.他教材とオーバーラップするように工夫する!
チャンクで出てきた語彙が教科書で出てきたら何らかの形でもう一度言及する,またその逆もしかりです。例えば、教科書用のオリジナル語彙プリントにはチャンクで既出のものも意識的に何度も載せるようにしました。あるいは、チャンクの音読練習をしているときに「この単語『NEW CROWN』のLesson 〇でやったん覚えてるか?」とつぶやいたりもしました。記憶の片隅にでもいいので、「あっ、そういえばこの単語習ったやん!」と思い出せればしめたものです。そのようにして、複数の教材で習った語彙をオーバーラップできるように、言い換えれば形を変えて脳に何度も同じ語彙を上塗りしていくようなイメージです。
以上4点を意識して、この2年間チャンクを使った語彙力増強に努めてまいりました。ご参考にしていただければ幸甚の至りです。
川原 正敏 かわはら・まさとし (灘中学校・高等学校)
灘中学校・高等学校教諭。2020年度NHKラジオ英会話で「英語教師が考える英語学習のエッセンス」を連載。Stay healthy, aim high, and just keep trying! をモットーに、生徒たちと高みを目指し日々奮闘中。共著に「竹岡の英検マスターシリーズ」(教学社)、「大学入学共通テスト対策リーチシリーズ」(美誠社)。
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