
豊水 可織 (愛媛県立宇和島東高等学校)
2026年08月27日
1 はじめに
新学習指導要領が施行されて今年で五年目を迎えた。新学習指導要領に基づいた授業実践を行うにあたり、これまでの自分自身の取組を振り返るとともにどのような授業を行うべきかと悩みながら実践を続けてきた。それは、急速に変化する現代社会において、他者と協働しながら積極的に課題解決に挑戦しようとする生徒を育成するために国語科が果たす役割が大きいとの考えがあるからである。
本校では新指導要領に基づいた授業改善を積極的に推進している。SSH指定校として理科や課題研究における取組を中心としつつ、先進的な授業実践を多く行っており、全科目、そして学校の教育活動全体を通じて「教科等の枠にとらわれず、総合的に学ぶ」STEAM教育を推進していくため、全教職員で様々な活動に挑戦し、取り組んでいるところである。そこで、私も国語科として新学習指導要領に基づき「主体的・対話的で深い学び」を実践していくにはどうすればよいかを考えることにした。特に、高校三年間を通じて段階的に「思考・判断・表現」の領域における創造的・論理的思考の力を育成することを目標としたいと考えた。
2 授業の流れ①
2-1 学習目標
(1)評論文の読解を通して、論理の組み立てと文章構成の関係性を理解し、思考を整理する方法を学ぶ。
(2)論理的に考える力や豊かに想像する力を養い、自分の思いや考えを表現することができるようにする。
(3)国語科だけの枠にとらわれず、様々な情報を活用しながら課題発見や解決を図る資質や能力を育成する。
2 授業の流れ②
2-2 実践の方法
(1)「論理的な説明」の最適解を探る
対象 普通科二年文系・理数科二年
科目 論理国語・理数特論
教材 「論理力と思考力」野矢茂樹、「情報の『メタ』化」外山滋比古、「中身当てクイズ」佐藤雅彦(精選論理国語(三省堂、論国703))
(ア)目標
情報を具体から抽象へ深化させることで、体系化・論理化することを経験させ、多角的なものの見方を養わせる。
(イ)内容
思考力と論理力についての論理的文章を学習した後、情報を深化させることについての文章を学習した。思考を整理し論理的に説明する方法についてさらに考えを深めさせるため、「中身当てクイズ」の説明をさせた。論理的な説明は数学においても証明の際に重要とのことで、数学的なものの見方と合わせて考えさせることにした。
普通科文系のクラスと理数科のクラスでそれぞれ最適だと思われる説明を考えさせ、互いに発表し、班に分かれて論理的な説明とは何かについて議論させた。
(ウ)分析
理系と文系では最適と考えられる説明文に違いが出たため、互いに共通点や相違点、相手方の説明の優れているところを見つけ合うことができ、学びが深まった。一つの課題を最適解へ導く方法は一つではないことや、国語と数学といった教科に分かれてはいるものの、学問は根底でつながっていることを少しだけ理解させることができた。しかし、より高次の思考へと高めるには不足があり、あくまでクイズを説明するにはどうすればよいかという視点に留まっていた生徒が多かった。
(エ)生徒の感想
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・説明の仕方に、想像以上に違いがあって驚いた。 ・自分の思考を言葉にすることも難しいことだが、思考によって導き出した結論をほかの人が納得できるような形で整理することがより難しいと実感した。 ・同じ題材で議論することによって、文系と理系の思考の違いを視覚化することができて面白かった。 ・状況に合わせて最適な説明方法をとらなければならないと思った。(理系は図を使うことが多いので、紙面での説明には向いているが、口頭説明は分かりづらい。) ・抽象化しすぎると理解が困難になり、具体化しすぎると大事な部分が見えなくなることが分かった。 ・解き方や説明の仕方について、これしかないと狭い視野で見ず、多角的に考えたいと思った。 ・今回に限らず、いろいろな場面で論理的に伝えるための工夫が必要になると思う。 ・文理で同じ問題を説明しようとすると、最終的な答えは同じになるが、それにたどり着くまでの考え方の表現の方法が異なることが分かった。 ・違う視点で考えていても、文章・図のどちらをメインで説明していても、同じことを説明できていることから、物事はいろいろな考え方ができるということと、新しい考え方に触れることで自分の考え方を広げることができるということを学んだ。 |
2 授業の流れ③
(2)生命科学の可能性を考える
対象 普通科二年文系・商業科二年Ⅱ型
科目 論理国語
教材 「動的平衡」福岡伸一、「ゲノム編集とiPS細胞」山中伸弥(精選論理国語(三省堂、論国703))
(ア)目標
生命科学の可能性や課題について理解し、様々な観点から生命について調べ、整理することを通して自分の考えを深化させる。
(イ)内容
教材の内容が「生命倫理」に関することだったため、他の分野の評論文を読解する際よりも抽象的な概念を理解する必要があった。そこで、生徒に「動的平衡」という考え方を具体的に捉え直すことで抽象的な概念を身近に感じさせ、理解を深めさせようとした。「バイオテクノロジーの現在」というテーマで電子・機械、環境・エネルギー、農業・食品、健康・医療、情報、化学・発酵の六分野に分かれ、調べ学習を行い、スライドにまとめて発表させる活動を行った。
(ウ)分析
科学分野の難解さや、文系生徒にとっては興味を持ちにくいテーマであったこともあってか、調べていく中でなかなか資料をまとめることができず、苦手意識を持ってしまった生徒が多かった。しかし、教科書本文で学んだデカルト論・シェーンハイマー論を手がかりにして生命倫理への理解を深めることができていた。また、他の班の発表を聞いたことでバイオテクノロジーの汎用性や実用性、身近なところに応用されていることなどにも気づくことができた。
3 おわりに
「論理国語」の学習を通して、生徒に評論文の構成について理解する力や筆者の主張を正確に読み取る力を身に付けさせたい。そのためには、必修科目である「現代の国語」での学びを深化させ、より多面的・多角的に物事を捉え、自らの考えを論理的に表現する活動にまでつなげていく必要がある。そこで、教科書にある同じテーマの評論文を読んで考えを深めさせたり、関連性のある言語活動を行ったりすることは有効な方法であると考える。
三省堂の教科書「精選論理国語」は、テーマごとに数種類の文章が選定されており、コラムや言語活動案を豊富に用意してくれている。現場の教員にとって、教科書は一番の相棒であり、このように多彩な材料や提案をしていただけることはありがたい。今回の実践も、教科書からヒントを得て考案し、行ったものである。今後も、教科書を最大限に活用した授業を考案・実践しつつ、自らの立場や考えを明確にしたうえで根拠を持って論述させる「書くこと」の活動を取り入れることにも挑戦してみたい。
豊水 可織 とよみず・かおり (愛媛県立宇和島東高等学校)
愛媛県立高等学校教諭。初任以来、南予地区の高等学校で国語を担当しており、現在(令和8年度)は県立宇和島東高等学校に勤務している。生徒が主体的に取り組み、思考力を高められる授業実践を目指し、日々授業研究に努めている。

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