ICT 実践事例紹介

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「ICT(ことまな辞書)実践事例」~「ことまな」で語彙を増やそう~

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高等学校国語

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  2. 学習者用デジタル教材

霜田 英明 (埼玉県立越ヶ谷高等学校)

2023年12月05日

1、はじめに

 本校生徒の課題は語彙力にあると考え、論理国語の授業で「ことまな辞書」を使用する際、単なる辞書調べにならないように活用した実践例をご報告します。

 なお、この実践のヒントになったのは、報告者が紙の辞書を引く際、知りたい単語以外の言葉についつい魅かれ、その時間に多くを費やしてしまった経験によるものです。

 

2、目的

 実施の目的は「調べること」ではなく、「語彙を増やすこと」です。本校生徒は 「調べること」が目的になるとiPad で検索し、機械的にすぐ答えを見つけ出す才能があります。そのため「調べること」に満足させるのではなく、「調べたもの」に興味を持たせて、語彙力を増やせる機会をつくることを目的としました 。なお、対象は2年次の生徒になります。

 

3、実施内容

① 授業の単元で扱う言葉の中から、単語は異なるが、よみが同じものを取り上げる。

② その言葉の意味を選ばせる選択の問を作成。

③「ことまな辞書」を使用し、該当の単語を調べさせる。

④ ③で調べた言葉以外の意味が、どのような言葉か確認させる。

⑤「単語ストッカー」を利用し、覚えた言葉を可視化させる。

 

4、具体的内容

① 単元中 に登場した「規制」という言葉 について、下のような問を作成する。

問「規制」の意味として正しいものを選びなさい。

ア 前もって作ってあること。レディーメード。 ↔ オーダーメード( )

イ ある生物が他の生物に付き、そこから栄養をとって生活すること。多く宿主が害を受ける場合に言う。( )

ウ 不都合な点を正しい方へ直すこと。( )

エ 予測される好ましくない事態に備えて、何かに制限を設けること。また、その制限。( )

オ 規律を立てて整えること。正しく整えること。( )

 

 

②「ことまな辞書」の新明解国語辞典で生徒に「きせい」とひらがなで入力させ、検索ボタンを押させる。

 

③ひらがなで入力して画面にあらわれた14種類の「きせい」の中のから「きせい【規制】」を探し出し、その意味に合うもの(ここではエ)を確認させる。

 

④残りの選択肢アイウオが、「きせい【規制】」」以外の13種類の「きせい」の意味であることを告げる。

 

⑤13種類の「きせい」をタップしてそれぞれの意味を確認しながら、アイウオの意味に該当する「きせい」を探し出し、その漢字を選択肢の後ろにある( )に記入させる。

 

⑥2分後、周囲の生徒同士で確認させ、その後、黒板のスクリーンに「気勢、希世(稀世)、奇声、祈誓、帰省、既成、既製、寄生、規正、規整」を示し、そのどの意味が選択肢アイウオに該当するか答え合わせをしていく。

 

⑦アイウエオの選択肢の意味を持つ言葉の確認ができたら、「ことまな辞書」の右下にある「単語ストッカー」ボタンをタップさせる。次に「調べた」ところに書かれている「きせい」の中から、自身が覚えたものを長押しして「覚えた」ところへ移動させ、「覚えてない」の中から、自身が覚えたものを長押しして「覚えた」ところへ移動させ、「覚えてない」には、覚えていない「きせい」を移動させる。

 

➇約1週間後、以下の小テストを実施する。

問ア~オはそれぞれ「きせい」という言葉の意味である。それぞれの「きせい」を漢字で表記しなさい。

ア 前もって作ってあること。レディーメード。 ↔ オーダーメード( )

イ ある生物が他の生物に付き、そこから栄養をとって生活すること。多く宿主が害を受ける場合に言う。( )

ウ 不都合な点を正しい方へ直すこと。( )

エ 予測される好ましくない事態に備えて、何かに制限を設けること。また、その制限。( )

オ 規律を立てて整えること。正しく整えること。( )

 

 

⑨小テスト実施後、再び「ことまな辞書」の「単語ストッカー」をタップさせ、「覚えた」と「覚えてない」に振り分けるように指示をする。

 

5、実施後の生徒の感想徒の感想

・いろいろな「きせい」を意味から理解して、覚えることができた。

(ウ 正しい→規正、エ 制限→規制、オ 整える→規整→規正、という発想で)。

・漢字にも意味が込められているなと思った。

・他の同じ読みのものも合わせて覚えようと思った。

・自分が思っていたよりもちゃんと覚えていて驚いた。

・語彙って、あったほうが有利なのかもと思った。        

・記憶に残った。

・規正、規制、規整のちがいを調べて初めて知った。単語ストッカーから覚えた・覚えていないに分けられるのが便利だと思った。意外と覚えられていたので嬉しかった。

・似た言葉だったり同じ発音だったりすると正しい意味の違いまで分からなかったけれど、これをきっかけに覚えられると思う。

・漢字と熟語の意味には通ずるものがあるのだなと感じた。

・言葉の意味をくみとって、そこから推測して考えることができた。

 

 また、中には「ハカル」「ホショウ」についても自分で調べ、意味を理解して書けるようになったと述べていた生徒もいました。

 

6、まとめ

 実施の目的が「語彙を増やす」ことにあったため、生徒たちの感想から、概ね達成できたのではないか思われます。

 今回の実践で生徒たちが「知りたい」という知的好奇心に満ち溢れていることを再確認すると同時に、教材は使い方次第であらゆる可能性を持つものだということも再確認できました。生徒の想いに応えるため、そして作品に込められた筆者の想いを知るために、あらゆる教材を最大限活用できるような授業を目指していきます。

 

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プロフィール

霜田 英明    しもだ・ひであき (埼玉県立越ヶ谷高等学校国語科教諭)

公私立高校勤務を経て現職。三省堂高校国語教科書の編集協力委員及び、採用教材一日一講シリーズの編集協力の一員も務める。現任校では昨年度より教員及び生徒1人1台のiPad導入でICT活用を推進。その中にあって、生徒を原点とし、生徒の実態に応じた、「想い」を重視した授業を展開。 

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