川崎 綾乃 (国際基督教大学・新渡戸文化高等学校)
2023年06月11日
反転授業とは?
反転授業とは従来の「教師の講義→宿題」という授業観を180度覆す授業法です。生徒は、授業前に自宅で動画を視聴し、授業で使う知識を事前に身に付けます。授業時は身に付けた知識をもとに生徒主体のアウトプット活動に取り組みます。
反転授業の利点
反転授業の利点は多数ありますが、主な利点を3つ挙げます。
①教師による「講義」時間が必要ないため、授業時間における生徒主体の活動を最大化することができる。
②生徒一人一人が個々のペースで学習できる(上級レベルの生徒は全て動画を視聴する必要はなく「苦手な箇所」に絞って視聴し、効率的 に学習を進めることができます。一方で、苦手意識がある生徒は動画を一時停止、繰り返し視聴することで、理解できるまで、焦らずじっくりと学習に取り組みことが可能です)。
③知識を「教わる」のではなく、生徒自身が「考え」&「使う」から、学習内容の定着が期待できる。
反転授業実践!隙間ができた授業時間は何をする?
アイディア1)インタビュー活動
本時の文法を使ってクラスメートにインタビューをする活動です。以下の3ステップで行います。
Step 1: Prepare Your Answer(インタビュー事前準備)
Step 2: Interview Your Classmates(クラスメートにインタビュー)
Step 3: Report Your Interview(インタビュー結果報告)
上級レベルの生徒であれば、Step 1は飛ばしてStep 2から始めても良いです(その場合は、アドリブでインタビューに答える形式となります)が、インタビューされた際に、咄嗟に何と答えれば良いかわからず沈黙してしまう生徒がいることも想定されます。誰一人取り残さない、という観点からも、Step 1から入り、インタビューされた際の回答を準備する時間を設けることがお勧めです。
Step 1では、以下のようなワークシートを使って、あらかじめ質問に対する自分の答えを用意します。Step 2では、ワークシート裏面を使って、クラスメートにインタビューし、回答をメモします。聞き取れて欲しいポイント(=本時の文法項目)を明確にし、その部分だけをメモできるよう、一目でわかるようなワークシートを作ります。
Step 3では、以下のフレームに従い、インタビュー結果をクラス全体に報告します。一人が報告し終えた後は、連鎖式になるように、報告された人を報告する側に指名します。例えば、教師がStudent Aを指名→Student AがStudent Bについて報告→Student BがStudent Cついて報告…という流れです。このように「他者のことをクラスに報告する」という任務を与えることで、インタビュー活動時、より熱心に話を聞こうという姿勢が生まれます。
アイディア2)スピーチ活動
例えば、本時の文法が【現在形】の場合、以下のようなスピーチのお題を出します。
上級レベルの生徒であれば授業中に即興でスピーチを作らせても良いですが、初級レベルの生徒にとってはハードルが高いため、宿題として事前に準備させておくと良いです(これが反転授業の強みでもあります!)。ポイントは、生徒の日常に密接に関わるお題、できれば、ワクワクするようなお題にすることです。
授業時は、以下のフレームをもとにペアでスピーチを行います。Hello, ___にはパートナーの名前、I’m___には自分の名前、I’m going to talk about _______にはその日のお題を組み込みます。Homeworkの箇所には生徒がそれぞれ準備した3文が入ります。
生徒は1回の授業につき、最低3回、ペアを変えながらスピーチをします。1〜2回目は、原稿を見ながらスピーチOK、3度目には作ってきた原稿を見ずに(チラ見はOK!)、相手の目を見ながら!と指示します。このように、繰り返しスピーチをすることで、で徐々にFluency(流暢さ)が身についていきます。
以上のように、反転授業は教師の解説が不要のため、授業時間にかなりの余白が生まれ、活用の仕方は無限大です。
「反転授業、面白そうだけれど動画を作成するのは大変そう…」と思われている先生方!心配ご無用です!動画は ZOOM の『画面共有』機能を用いて簡単に作成可能です。実際の反転授業がどのように展開されるのか、もし興味を持って頂けましたら、是非授業見学にいらしてください。
以下の授業動画(15分)も是非ご覧ください。
川崎 綾乃 かわさき・あやの (国際基督教大学・新渡戸文化高等学校)
都立進学校教員として経験を積んだ後、フルブライト奨学生としてコロンビア大学教育大学院にてTESOL(英語教授法)修士号を取得。全米最大級のTESOL学会であるTESOL InternationalやAmerican Association for Applied Linguisticsにおいて、英語教授法の発信に努めている。現在は高校・大学の二刀流英語教師として、反転授業の効果を探るべくクラスルームリサーチに取り組んでいる。
連絡先:engl_apricot(A)yahoo.co.jp
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