ICT 実践事例紹介

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デジタル教科書(教材)を活用した指導と家庭学習の取り組み

  1. 印刷する

小学校英語

  1. 学習者用デジタル教材

乗富 智子 (金沢大学附属小学校)

2021年08月31日

1.はじめに

 金沢大学附属小学校では、外国語の授業を45分授業と15分モジュール授業に分けて行っています。45分授業では、ALTと学級担任または英語担当で授業を行い、言語活動を中心に指導をしています。15分モジュール授業では、主にデジタル教科書(教材)を使い、聞くことを中心に、読むこと、書くことなどの指導を学級担任のみで行っています。本稿では、モジュール授業でのデジタル教科書を活用した指導及び家庭学習でのデジタル教科書の活用について報告します。

2.デジタル教科書を活用した指導

<Panorama>

 

 

 教師はスクリーンで指導者用デジタル教科書(教材)の画面を大きく映し出しながら、音声を聞かせます。児童たちは、端末で学習者用デジタル教科書(教材)のPanoramaのページを開き、聞こえてきた単語のイラストに印をつけながら聞きます。デジタル教科書への書き込みはいつでも消す(Reset)ことができるので、教科書が印だらけになってしまうことはありません。また、印をつけたページをスクリーンショットして教師の端末に送ることで、児童の理解を確かめながら指導することができます。

 

<Listen and Talk>

 

 教科書誌面では、初めから文字(文章)が出ている状態ですが、デジタル教科書を使うと文章の出し入れができます。初めから文字を見せるのではなく、まずは絵だけを見せてどんなことを言っているのか内容を予想させた上で音声を聞かせました。Spotlightの下にある活動では、音声を聞いてタブレット上で線を引いたり、丸で囲んだりしました。こちらもタブレットを使うと全てをResetすることができますので、復習の際には全ての書き込みを消してもう一度活動に取り組みました。

 

<Enjoy Reading>

 

 音声を聞かせる前に、テキストを消した状態で絵を見せ、内容を想像させます。また、絵についてWhat’s this? などと問い、より内容に児童の注意が向くように指導しました。

 

 音声を聞くときは、初めはテキストを見せず、音声のみで聞かせます。「どんな英語が聞こえた?」などとやり取りする中で、内容から英語表現へと気づきが広がるようにしました。

 

 児童たちは、デジタル教科書の本文に線を引きながら聞いたり、絵に印をつけながら聞いたりしていました。

 

<Write and Speak>

 

 

 書く活動は、音声を聞いたり、一緒に言ってみたりするなど、音声で十分に慣れ親しんだ後に段階的に取り組ませます。その際、初めは必ず紙面で書かせるようにしています。モジュール学習でもまずは教科書やワークシートに鉛筆で書かせました。教科書に書き込んだものをタブレットで撮影し、授業支援アプリ『ロイロノート・スクール(株式会社LoiLo)』(以下、ロイロノート)を使って教師の端末に提出します。教師は、送られてきた写真にタッチペンで書き込みをしたり丸をつけたりして児童に返却をします。児童は返却されたものを確認し、今度は家庭学習として、デジタル教科書のコンテンツを使い、タブレット上で同じものを書きました。

3.家庭学習での取り組み

 他教科と同じように、英語の学習も定期的に宿題として取り組んでいます。保護者の方は、とりわけ新しく始まった外国語の授業への関心が高いので、家庭で英語の学習に取り組ませることは非常に大切であると考えています。

 

<Spotlightを使った家庭学習>

 

 

 

 学習者用デジタル教科書(教材)では、Spotlightの音声を流すことができるので、モジュールや45分授業で学習した内容や表現を家で復習するのに活用しています。

 

   ① 音声を聞く

   ② 音声の後に繰り返して言う

   ③ 音声と一緒に言う

   ④ 音声を流さずに覚えて言う 

 

 この①〜④を複数回くり返して行います。

 

 課題に取り組んだ後、Google Classroom(Googleが提供する授業プラットフォーム)上で「やりました報告」をします。教師の投稿に対して、「3回やりました」「5回もやりました!」など自分の取り組みをコメントで答えるようにしました(国語科の音読カードと同じ発想です)。

 

<Write and Speakの家庭学習>

 

 

 モジュールや45分授業での書く活動の後、家庭学習でも同じ内容に取り組みます。ロイロノートを通じて返却された自分の写真を確認し、もう一度同じ課題をタブレット上でします。デジタル教科書のコンテンツは小さく、児童が使用しているタッチペン(100円ショップで購入したものです)で書くのには適していませんでした。そこで、デジタル教科書にあるコンテンツをスクリーンショットし、タッチペンでも書きやすいように大きく加工しました。加工したものをロイロノートで配布し、家庭学習で取り組み、提出させました。

4.おわりに

 デジタル教科書(教材)の大きなメリットは、くり返し何度もできることです。教科書に書き込んだものは、消しゴムできれいに消すことはできませんが、タブレット上では何度でもできます。くり返し取り組むことで、指導内容の確実な定着を図ることができます。

 

 一方でデメリットも感じています。タブレットを目の前にすると、児童はそれに没頭してしまいます。タッチペンで書き込んだり文字を打ったりしていると、友だちの話、教師の話が全く耳に入っていないことがあります。教師が話しているときは顔を上げる、作業をする時間と聞く時間をきっちり分けるなど、教師と児童との間で学習のきまりや約束を決めておくと良いでしょう。

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プロフィール

乗富 智子    のりとみ・さとこ

金沢大学人間社会学域学校教育学類附属小学校教諭。金沢市公立小学校勤務を経て現職。主な著書に「小学校での授業開き—先生や友達に新たに出会う工夫」『英語教育』2018年4月号, 22-23頁(単著、大修館書店)、「We Can!でつくる小学校英語授業」『英語教育』2019年4〜9月号, 52-53頁(共著、大修館書店)など。

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